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【#9】“英語好き”を育てる教師のMindset❷ 〜「個」が輝くOutputの仕掛け〜

こんにちは!
Sakaue Wataru | English Teacherです。

自分が「英語教師」と言う仕事を選んだ理由は色々ありますが、「英語を好きになってほしい」 という想いが強いです。
そんな自分の「信条」(自分軸)を磨きたい想いから、英語好きを育てるために英語教師が意識できる「考え方や視点」(マインドセット)について言語化しています。

今回は、子どもたちの「個」が輝くOutput活動について考察してみたいと思います。と言うのも、ある生徒とのやり取りから色々と考えさせられる出来事があったからです。

1.ある生徒の発言から


その日は、体調不良でしばらく学校を休んでいた生徒に、授業の補充学習をしていました。各教科の先生が入れ替わり立ち替わり、その子に休んでいた分の学習内容を教えていました。

その生徒は、とてもおとなしい子で、授業中に発言することが苦手です。人前で発表することにも抵抗感があります。しかし、補充授業の時はとても生き生きしていたのです。その日の放課後、下校まで少し時間があったので雑談をしていると、とても柔らかな表情でこう語ってくれました。

「先生、今日の補充すごく楽しかったです。私、授業中に発言したり、質問したりしたいって思う時もあるんですけど、みんなの前で話すのは苦手で、どうしても一歩が踏み出せないんです。でも、先生と一対一で話したり、グループで考えを伝え合ったりするのは好きだなーって思いました。今日は、先生に色々と質問できて、なんだか楽しかったです」

嬉しい気持ちになった反面、とても考えさせられました。
英語の授業だけでなく、最近はOutputを重視する授業が増えてきています。もちろん、それは悪いことではないのですが、その方法や手段によって、悩みを抱えている生徒もいるということを突きつけられました。

人前で堂々と発表できる力はとても大切です。ですが、毎回同じように、みんなの前で発表したり、挙手を求めて発言させたりする授業ばかりでは、すべての生徒にとって「学びがい」のある授業というのは実現できないのではないのかもしれません。

2. すべての生徒が「学びがい」を感じられる授業のために


授業になかなか積極的に参加できない生徒でも輝けるような授業を作るために、私たち教師はどのような働きかけができるでしょうか。
一つの解決策に「ICTの利活用」が挙げられると思っています。

⑴ Padletを活用した意見交流


Padletは、教師と生徒で共有できる「デジタル掲示板」です。
ビデオ、画像、ウェブサイト、テキストなど、あらゆる種類のコンテンツを投稿、保存することができます。

英語の記事を読んだ後、What did you think after reading this article? What can we learn from this story? などと投げかけると、様々な反応や意見が返ってきますが、すべての生徒の意見を吸い上げることは困難です。

そこで、padlet(デジタル掲示板)を使って意見交流をします。
先月は、平和学習に関わる題材を扱う単元で、考えを伝え合う活動を用意しました。

【写真1】Padletで交流した生徒(中2)の英作文

Padletのいいところは、互いのテキストにコメント「いいね❤️ができるところです。共感できた作品や自分にはなかった意見を評価し合うことで、互いの意見を尊重し合う学級風土を作ることにつながります。

また、積極的に意見は言えなくても、じっくりと深く考えることができる生徒に焦点を当てることができます。この交流の後に、教師の方から「〜さんの視点、すごくいいよね。〜くんの考えも面白い。みんなはどの意見に共感できた?」と、やり取りしながら「平和」に対する考えを深化させていきます。

この単元の最後にはRetellingを行いましたが、最後に上記の感想(自分の考え)を入れて発表するようにしました。単元の最後に「Retelling+自分の考えを伝える」という活動を仕組むより、このように学習を分割して統合したり、発展させたりしていくことで、スローラーナーでも無理なく取り組むことができます。

⑵ ロイロノートを活用した動画発表会


Retellingやスピーチ、プレゼンなど、英語の授業では「話す活動」が多くなります。自己表現が得意な子はキラキラ輝けますが、そうでない子もいます。そこで、全てを人前での発表にするのではなく、グループ発表や動画交流会など、負荷の少ない活動も採用するようにします。

今年最も活用したのは、ロイロノートを使った「動画発表会」でした。

【写真2】「ロイロノート」を使った動画発表会(英語暗唱)

人前での発表が苦手な生徒でも、動画だったら落ち着いて発表できる場合があります。また、何度も録画し直すことができるので、「一発勝負」の発表よりもその子の持っている力を評価しやすいという利点があると考えています。

人前で話すときにとても緊張してしまう生徒が、この動画発表会(150語程度の英語暗唱)に向けて、家でも何度もして、見事に言い切ることができました。1年前は、30語くらいしか暗唱できなかった生徒です。「何度も練習したくなる」ーそれこそ、この動画発表会の一番の魅力かもしれません。

⑶ アンケート機能を活用したPeer feedback


ICTは、Information and Communication Technologyの略称です。
教育現場でICTを活用する際は、特に”C”(Communication)の要素を大事にすべきだと考えています。つまり、ICTを活用してコミュニケーション能力の育成を図るということです。

ロイロノートやMicrosoft formsのアンケート機能を活用すれば、子どもたち同士のやり取りを充実させることができます。例えば、発表のPeer Feedbackで活用するのがオススメです。2学期には、8年生(中2)が、英語版『ごんぎつね』を4年生に向けて発表(紙芝居+演技)するという課題を設定しました。4年生は、国語で勉強した『ごんぎつね』を朗読しました。4年生の担任の先生と相談して、下記のように目標を設定しました。

●4年生の目標:
8年生をあっと言わせるような朗読をグループで協力して作り上げることができる。
●8年生の目標:
4年生にも伝わるように英語版ごんぎつねを演じることができる。

発表に向けて、どちらの学年も夢中になって取り組んでいました。
「相手意識」の大切さを痛感します。
発表の質を高めるために、単元の中盤で「中間発表」の機会を取りました。

【写真3】「ロイロノート」を使った中間発表(中2、Gon, the Little Fox)

8年生は4人グループで役割分担を決め、演出を工夫して発表しました。「完成度は7割くらいを目指そう」と伝えておきます。

発表を見て、「よかったところ」「もっと良くなるところ」「総合評価(3段階)」をアンケートに書き込みます。

【写真4】「ロイロノート」を使った中間発表のコメント①
【写真5】「ロイロノート」を使った中間発表のコメント②
【写真6】「ロイロノート」を使った中間発表のコメント③

発表の後に全員からFeedbackをもらう場合、かなり時間がかかります。
しかし、この方法なら1分で30人からコメントをもらうことも可能です。
さらに、実施してみるとわかるのですが、口頭で交流するよりも落ち着いて考えられるためか、コメントの質が高くなる傾向にあることがわかっています。

「中間発表」相互評価(Peer Feedback)を取り入れることで、「修正したい!」「もっとよいものにしたい!」という子どもたちの向上心を刺激することができます。何より、互いの発表の良いところを認め合い、学び合うことを通して、主体的に学習に取り組む態度を育てることができます。

3. さいごに


教室を見渡すと、色んな個性を持った子どもたちが共存しています。
それぞれ、得意なこともあれば、苦手なこともあると思いますが、どの子にも必ず輝ける場面があります。その場を用意するのが、教師の役目だと思っています。

簡単ではありませんが、ICTだけでなくあらゆる手段を使って、すべての子どもたちが学びがいを感じられる授業、すべての子どもたちが輝き、「主人公」になれる授業を実現したいと思っています。

それが、現時点での教師人生のゴールです😊

"When one door is closed, many more is open."
- Bob Marley(ボブ・マーリー)
「一つのドアが閉まっている時、もっとたくさんのドアが開いているんだよ」

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