明智山秀

自己紹介ではありませんが……2023/07/19の午後8時頃、「スキ」及び「フォロー」…

明智山秀

自己紹介ではありませんが……2023/07/19の午後8時頃、「スキ」及び「フォロー」してくださった方へのリアクションを目一杯設定しました。一部、変な物言いになっているのは、頭文字に縛りを課した(“あ行か行”と“あ段”)ためで他意はありません。m(__)m

最近の記事

短編小説『白の奇跡よ、黒く染まれ』(3/3)

「――」  田町の顔色が変わる。血の気が引いたよう。学内探偵は言葉で詰め寄った。 「ぜひとも合理的な説明を聞きたい。田町さんにはアリバイがあるのだから、犯人とは思っていないよ。とにかく僕は、状況を正しく認識したいんだ」 「待てよ、石動探偵さん」  見かねた名和が、挑発気味の言葉を投げる。 「何かな」 「女性を相手にするときは、もう少し優しく接したら? 君みたいな急襲は、怯えさせるだけ」 「しかし、僕の疑問も尤もだろ?」 「田町さんの髪の毛があったからって、本人がその場にいたと

    • 短編小説『白の奇跡よ、黒く染まれ』(2/3)

      「そうだろう? 僕が掴んだ情報では、亡くなった桜井茂を巡って、四人の女子が争っていた。内一人が、第一発見者でもある田町さん。その田町さんに恋心を抱いていたのが君だ」 「そ、そんなこと、誰が言ったんだ」  動揺を隠しきれず、名和は目元を赤くした。 「全ては小さな出来事の積み重ねだよ。僕はこの情報に信を置いているが、今の名和君の反応を見ると、念のために確認しないといけないな。この情報が偽りであるのなら、申し立てを聞こう」 「……嘘じゃない。合っている。過去のことだけど」 「過去だ

      • 短編小説『白の奇跡よ、黒く染まれ』(1/3)

                あらすじ 三月十四日の朝、ホワイトデーの名にふさわしく、雪が積もった。  田町由香莉は想いを寄せる桜井茂から、バレンタインでの告白に対する返事を聞くために、通っている高校の第二理科準備室で早朝から落ち合う約束をしていた。  今の時季、当地では珍しい積雪という奇跡に後押しされて期待を膨らませる彼女だったが、準備室に入ってみて驚愕することになる。桜井が死んでいたのだ。  警察の捜査が始まる中、一男子生徒の名和は、幼馴染みの田町が犯人にされてしまうのではないかと心配

        • プロレスに詳しい人の意見を聞きたい、昭和プロレスの「ん?」その4

                   4『ジャパンプロレスはマッチメイクの面で、全日本プロレスに対してどの程度もの申せたのか』  昭和のプロレスで忘れてはいけない団体の一つが、ジャパンプロレスでしょう。主催興行のみならず、曲がりなりにもシリーズを開催しているのですから、れっきとした団体として認めなくては。何よりも、その活動期間の短さに反して、当時の存在感はかなり大きかったと言えるのではないでしょうか。  シリーズ開催は、もちろん全日本プロレスの協力があってこそだったとは思いますが、その割にマッ

        短編小説『白の奇跡よ、黒く染まれ』(3/3)

          プロレスに詳しい人の意見を聞きたい、昭和プロレスの「ん?」その3

                   3『昭和53年9月マスカラスの国際プロレス参戦が実現していたら&昭和55年1月ダイナマイト・キッドの国際プロレス日本陣営加入が実現していたら、それぞれどんなカードを組んでいたか』  昭和プロレスと銘打って全日本、新日本と書いて来たからには、三番目は国際プロレスを取り上げようとするも、よいネタがない(汗)。  最初、『ラッシャー木村は犬を何頭飼ったのか。熱狂的な猪木ファンの投石等により、愛犬が死去したのはいつのことで、何頭亡くなったのか』を考えるつもりでした

          プロレスに詳しい人の意見を聞きたい、昭和プロレスの「ん?」その3

          プロレスに詳しい人の意見を聞きたい、昭和プロレスの「ん?」その2

                   2『カール・ゴッチは本当にギャラで揉めて、スケジュールをキャンセルしたのか』  一つ目のテーマを映画で決めたので、二つ目も倣うとしましょう。ということで――動画配信サイトを通じて、映画「アントニオ猪木をさがして」を観ました。映画の感想を事細かに述べるのは本題から外れるのでよしますが、もっとよい物が作れたはずなのにという残念さはあったかなぁ。  さて、猪木が興した新日本プロレスは、昭和47年3月に旗揚げオープニングシリーズを行いました。同シリーズにカール・

          プロレスに詳しい人の意見を聞きたい、昭和プロレスの「ん?」その2

          プロレスに詳しい人の意見を聞きたい、昭和プロレスの「ん?」その1

                   序文 本稿は、いわゆる昭和プロレスについて、個人的に「ん?」と引っ掛かりを覚えたり、疑問に感じたりしたことを取り上げ、膨らませた想像・妄想を綴っていこうというものになります。  とは言え、筆者自身がプロレスを観始めたのは初代タイガーマスクのデビューの約一年と三ヶ月前であり、“新日本プロレスブーム前夜”と呼べる頃。それ以前の昭和プロレスに関しては、後に専門誌やビデオソフト、インターネットなどで接するレベルにとどまります。  リアルタイムで経験していない時代の某

          プロレスに詳しい人の意見を聞きたい、昭和プロレスの「ん?」その1

          掌編小説『バレンタインチョコの賞味期限』

                  あらすじ 小五の弟が亡くなって約一ヶ月。弟の部屋を整理していると、チョコレートが出て来た。  “絶対に! 食べるな!”のメモを挟んで大事に仕舞ってあったそれは、明らかにバレンタインのプレゼント。どんな子に告白されたのか。告白した子は今、どんな気持ちでいるのか。          本文 弟が遺した物を整理していると、手のひらサイズの四角い箱が出て来た。青みがかった白い用紙できれいに包装されている。  右肩部分に赤いリボンが掛かり、そこに挟み込まれた学習帳の切れ

          掌編小説『バレンタインチョコの賞味期限』

          短編:色んな意味で言いたくない初恋話

                 あらすじ小比類巻諭は罰ゲームとして、恥ずかしい話を一つすることになった。彼が選んだのは、小学校時代の思い出。誰にも言いたくない、初恋にまつわるものと聞いて、みんな関心を持ったのだけれども、いざ始まると自慢話めいたエピソード語りが延々と続き……。         本文 罰ゲームねえ。自分で決めていいのなら、誰にも言えない、というか誰にも言いたくない初恋の話をしようと思うんだけど、どうかな。罰ゲームとしては我ながら結構きついと思うよ、これ。  ――認めてくれてあり

          短編:色んな意味で言いたくない初恋話

          掌編小説『塵が積もれば何になる?』

                   本文 世の中、許せない奴が多すぎる。  ランチのために一人で店に向かう道すがら、他愛もないことを考えたのは、前日、先輩から上司に対する愚痴を聞かされたせいかもしれない。あいつだけは許せないって。  小さな保険会社に就職して間がなく、学生気分が完全には抜けていない私ではあるが、先輩のコメントには異論がある。  許せない人間が大勢いるのは、ネットをちょっと覗けば明らかだ。  私にとって許せないなと思った最初の人物は、芸能人だった。浮気しておきながら、自らを正当

          掌編小説『塵が積もれば何になる?』

          掌編小説『せんとう×たいせい』

                  内容紹介あの“赤い洗面器”に新たな解釈を? ちょっぴりシュールな一幕劇。          本文「赤い洗面器の男ってあるじゃない。落ちが語られない笑い話」 「え? もっと大きな声で言って。ここ、響いて聞こえにくいんだから」 「赤い洗面器の男の話! 知ってる?」 「あれのこと? 赤い洗面器を頭にのっけた男が洗面器の水をこぼさないよう、ゆっくり歩いて来る。それを見て『どうしてそんなことしてるのですか』って尋ねたら、男が『それは君の……』と答えるとこで尻切れとんぼ

          掌編小説『せんとう×たいせい』

          掌編小説『時を重ねて』

                  あらすじ空き巣に入った先で、思いも寄らず人を殺してしまい、さらにひょんなことからタイムマシンを手に入れた“俺”。当然、この夢の乗り物を世間に公表することなく、使い倒す。飽きるほど時間旅行を重ねる“俺”は、自らの寿命と死因を把握し、もっと長生きをしてやろうと考える。          本文 刹那的に生きてきて、無茶をした回数も覚えきれないほどある。が、殺人をしでかしたのは今が初めてだ。  腕のいい弁護士が付けば、傷害致死になるかもしれない。事実、殺すつもりなん

          掌編小説『時を重ねて』

          掌編小説『赤洗面器男の冒険』

                  あらすじ謎解きが大好きな面々が属するクラブの例会で、あのリドルストーリーが取り上げられた。倒叙推理ドラマ「古畑任三郎」などでおなじみのあれだ。オチの隠されたリドルストーリーにオチを付けようという一種の大喜利大会。これぞ決定版というオチは果たして出るのか。          本文A「今日のお題は『赤い洗面器の男』です」 B「『赤い洗面器の男』ってあの?」 A「はい。倒叙ミステリのドラマとしては『刑事コロンボ』シリーズと並ぶ超有名作品――ただし日本国内に限るかも

          掌編小説『赤洗面器男の冒険』

          掌編小説『へんなおんなとつくり話』

                   本文 嫌う理由を教えてくれ、ですって?  私は好きだよ。  嘘つけ? そんな、嘘なんかじゃないわ。私は好き。  え? あなたのことが好きなのかって? 違うわ。何を聞いてたのよ。  私は好きとしか言ってないでしょ。  そう、あなたは好きじゃないもの。男のあなたは好きとは違うわ。  昔は好きだったんじゃないかって? 私は昔から好きだったけど、あなたは昔から好きじゃなかったわ。  ええ、そうね。五年前、あなたはお立ち台の横にいる私に声を掛けてくれた。あのときから

          掌編小説『へんなおんなとつくり話』

          掌編小説『雨は病んだ』

                  あらすじある日ある時を境に、世界中のありとあらゆる場所で雨が降り止まなくなった。原因究明を期して雨水を徹底的に調査した結果、水そのものに異変が生じていると判明。その水を飲むと死ぬのだ。突然の水不足に陥った人類は懸命かつ冷静に知恵を絞り、いくつかの取り決めを作った……。          本文 小学六年生になる原田仁一郎は、カーテンを開け放つなりため息をついた。 「今日も雨か」  つぶやいたそのとき部屋のドアがノックされた。母親が起こしに来た。おはようの言葉を

          掌編小説『雨は病んだ』

          掌編小説『カードにはウラがある』

                  あらすじ著名なマジシャンがマジシャンになると決意することになった、ある大道芸人のネタとは。 ※小さな子供だった頃、実際に見たことを元に、短い話にしています。恐らく定番の手口だと思います。          本文 マスター・トジックは著名な奇術師である。彼に奇術師になる決心をさせたのは、若い頃のとある大道芸人との出会いであった。 「さあさ、よってらっしゃい、見てらっしゃい!」  時は夕刻、威勢のよい声が、トジック(もちろんその頃は芸名なんぞなかったが、分かり

          掌編小説『カードにはウラがある』