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キャリア発達プロセス「大きな変化をもたらす人生のトランジション(転機)」ライフキャリアと脳から見た心の世界


21世紀最大の特色は、
それが「科学時代」である
ということです。
科学は日に日に進歩を続け、
止まることを知りません。
ひと昔前の夢物語もどんどん
現実化しており、
今や生活のすべてが”科学”によって
ゆり動かされているといっても
過言ではないでしょう。


「科学」は一般的には、
自然科学のみを指すことが
多いですが、
社会科学(法律学、政治学、
経済学など)や人文科学
(哲学、宗教学、考古学、歴史学、
地理学、文学、心理学など)の中で
科学的手法を使っている分野を含めて、
法則性や原理を追求する学問分野全般を
「科学」と表現する場合もあります。


science
「サイエンス」の和訳としての
科学の「科」とは「 science」が
さまざまな「科」に分かれている
ことに由来するようですが、
「サイエンス」の語源は、
ラテン語の
「scientia(スキエンティア)」
英語の「science」と同義です。


ラテン語の「scientia」は、
「知識」や「知識を持つこと」を意味し、
古代ギリシャ語の
「επιστήμη(episteme)」
に由来します。
これらの言葉は、知識や理解を
追求する行為を指し示すものであり、
現代の科学の基礎となっています。
(辞書より出典)


つまり、
「science」を直訳すれば
「知ること」であり、
「知識」とか「学問」という
意味が近いと思いますが、
「科学」という語のせいで、
本来の「science」の意味が
日本人に伝わりづらくなったと
いわれています。


そのような背景を考えれば、
単に原理や法則の解説に
終始するのではなく、
政治や経済など、社会科学や
人文科学にも関連させて
広い視野から問題を追求して
いく時代、みんなが科学を
知っていく必要があるのでは
ないかと思っていますが、


私たちの脳はまず生き残り、
そして、子孫を残すために
記憶という能力を発展させました。
記憶には「記銘」「保持(貯蔵)」
「想起」という3つのプロセスがあります。
「記銘」とは「覚える」こと、
脳に情報をインプットすることです。
「保持」とは、脳がその情報を
維持し続けることであり、
そして「想起」とは、
脳の中にある情報を引き出す
「思い出す」ことです。


”ここで重要なのは、記憶には、
「覚える」プロセスと
「思い出す」プロセスとがある
ということです”


学習と記憶は人間の経験を
支える基礎ですが、
私たちの経験が自分の脳を
修正するからこそ、
私たちは世界についての
新しい知識を獲得できると
考えられますし、
そして、いったん学習すると
新しい知識を記憶の中に
長期間にわたり保つことが
できるのは、修正された状況が
私たちの脳の中に保持される
ためです。


その後、新しいやり方で振る舞い、
考えながら、記憶された知識に
基づいて行動できるようになります。
記憶とは、学んだことが
「時間を超えて持続する過程」です。
こうした意味で、学習と記憶は
しっかりと結びついていると
思います。


世界について
私たちが知ることの大半は、
出生時に脳内に組み込まれて
いたものではなく、
経験を通して獲得され、
記憶を通して保持されます。


たとえば、それらは、
友人や最愛の人々の名前や顔、
地理や政治、スポーツ、
あるいは、モーツァルトや
ベートーヴェンの音楽と
いったものです。
その結果、私たちが
私たちであるのは私たちが学び、
記憶することが”何であるか”に
よって決まるということです。


しかし、記憶はたんなる
個人的経験の記録だけではなく、
それは教育を受けることも可能にし、
社会の進歩にとって大きな力と
なりますし、
人間は学習したことを他者に伝える
ユニークな能力を持っており、
そうすることで世代から世代へ
継承される文化を創り出します。


この何千年もの間、
文化の変化と進歩を決定して
きたものは、
脳の大きさの増加ではなく、
脳の構造の変化でもない、
むしろ、私たちが話したり
書いたりすることで
学習したことを保存して
それを他者に伝えるという、
「人間の脳に内在する能力」の
なせる業にあります。


記憶が人間にとって
もっとも重要である一方、
多くの心理的、感情的な事柄も
記憶にコード(符号化)された
経験から生じることも真実です。


学習がどのように生じ、
記憶がどのように保存されるのかを
分析することは3つの学問分野、
哲学、心理学、そして生物学の
中心課題ですが、
心理学も生物学も単独では
これらの問題に答えることはできず、
心理学と生物学の共同作業によって
学習、記憶についての新しい
知的統合が生まれてきました。


記憶は”分子”から”心”へ、
つまり、分子から細胞、
脳のシステム、行動を結びつける
言葉で理解することのできる
精神のはたらき(能力)の
最初の例になるであろうと
いわれています。


分子生物学と認知神経科学の
統合によって、記憶の二つの側面、
脳の「記憶システム」と
「記憶保存のメカニズム」が
解明されつつあるということです。


その記憶とは人の「存在、個性」
(その人が誰であるか)を
決定する基本的な整理機能であり、
すべての知的活動にとって
中心的なものです。
記憶を生物学的に解明することは
いろいろな商業的価値も期待でき、
(脳は)既存のコンピューター技術では
予測もつかない戦略を用いて
運動、形、パターンを認識することが
示されていますから、
脳の仕組みを知ることは
マーケティング成功の近道となる
ことも考えられます。


しかしながら、
人生におけるこの二つの領域が
どのような形で人をトランジション
(転機)に引き入れるのか、
またトランジションを迎えることで
仕事や人間関係にどのような影響が
及ぶのか、
変化とトランジションの区別が
明確に区別できず、私たちの社会は
この二つを日常的に混同しています。
トランジションは変化の同意語である
と思われているかもしれませんが、


実際はそうではなく、
変化とは「外的変化」であり、

「関係の喪失」
「家庭生活での変化」
「個人的な変化」
「仕事や経済上の変化」など

たとえば、
子どもの自立、結婚、出産、離婚、
配偶者の退職、家族の病気と回復、
入学や卒業、抑うつ、新築や改築、
家庭生活の質の変化、ペットの死、
友人との疎遠、外見上の大きな変化、
ライフスタイル、解雇、転職、
組織内での配置転換、収入の増減、
何かとのつながりが失われる、
過去の人生で誰かとの関係が切れる、
引越しなど。


一方、
トランジション(転機)とは
「内的変化」であり、

スピリチュアルな覚醒、
社会的、政治的自覚の深まり、
心理的洞察、自己イメージや
価値観の変化、
新たな夢の発見や古い夢の放棄、
古いものからの離脱、
古いものと新しいものの間の
どこでもない場所の通過、
あるいは”私は変わりつつある”
という感じなど。


つまり、「変化」とは
状況が変わること、
「トランジション」とは
心理的に変わることであり、
外的な出来事ではなく、
人生のそうした変化に
対処するために必要な、
内面の再方向づけや自分自身の
再定義をすることです。
新しい始まり、
新しいアイデンティティの形成
などが進んでいきます。


アメリカの
心理学者、人材コンサルタント
「ウィリアム・ブリッジズ」氏の
トランジション理論では
私たちの人生を左右するのは
変化ではなくトランジションであり、
「変化」と「転機(トランジション)」
はまったく別物だということを
定義しています。
そのトランジション・モデルには
3つの段階(ステージ)があります。

第1段階  終わり
第2段階    ニュートラルゾーン
第3段階  新しい始まり

「トランジション」は、
私たちが古い状態から離れて、
新しい状態に飛び込むプロセスです。
そのため、トランジションは
古い状態を終わらせることから
始まります。
キャリア発達のプロセスにおいて
大きな変化をもたらし、
人生の中で転換点となります。


第1段階(終わり、喪失、手放す)

古いやり方やアイデンティティを
手放す。
トランジションの第1段階は
「終わり」の時期であり、
この段階にある人に対しては、
喪失に向き合えるようサポート
すべきである。

◎離脱

 それまで慣れ親しんできた場所や
 人から引き離されることから
 生じる感覚。

◎アイデンティティの喪失

 過去の世界とのつながりを
 断ち切ることで、
 自己定義の手段を失ってしまい、
 自分は何者であるかということが
 分からなくなる感覚。

◎覚醒

 自分がこれまで属していた世界に
 抱いていた楽観的な見方は
 幻にすぎないと気付く感覚。
(会社や他者に裏切られた場合に
 より強く感じるもの)

◎方向感覚の喪失

 今後どの方向に進むべきか、
 そのために何をするべきかといった
 目標や計画が失われる感覚。
(解雇など強制的な終わりによって
 もたらされやすいもの)
 何かの終わりに伴う上記のような
 感覚からは逃げることなく、
 次のニュートラルゾーンにおいて、
 とことん味わいつくすことが重要。

第2段階(ニュートラルゾーン)

過去を手放したものの完全には
新しい状態に対応しきれていない、
そんな中間の時期がニュートラルゾーン
(どちらでもない時期)である。
この段階では意識の転換と再構成が
起きる。

◎始まりとの間にある
 空白の期間であり、
 進むべき方向が分からず、
 ただ立ち止まって逡巡している
 だけに思えるが、決して
 後ろめたく感じる必要はない。

 空虚感は、終わりまでの
 プロセスの自然な結果であり、
 新しい人生のための下地が
 準備される時期だからこそ、
 こうした空虚感から逃れようとせず、
 その感覚に素直に降伏するといい。

 もちろん、
 これはとてもつらいことだが、
 新たな「再生」のための「死」
 (過去の自分との決別)を
 象徴しているのがこうした
 空虚感である。
 この空虚感の中からこそ、
 新しい自分が再び誕生するのだ
 と考える。


第3段階(新しい始まり)

トランジションから抜け出し、
「新たな始まり」を迎える。
この時期に新しいアイデンティティ
が確立し、新たな意欲や
目的意識が生まれ、変化が
本当の意味で影響力を発揮し始める。

◎ 新たにやりたいことは、
 必ずしも明確な意思や計画を
 前提としない。
 偶然の出会いや出来事が、
 何かの始まりにつながることの方が
 多い。
 

 抽象的なイメージや印象の中に、
 始まりのヒントが隠されている。
 他者との対話を通じて、
 そのイメージや印象がより具体的な
「やりたいこと」として
 浮かび上がってくることもあるかも
 しれない。
 確信を持てなくても、 
 また準備不足でもいいので、
 気になっていることを始めてみる。

 新たな始まりには、
 内的、外的な抵抗が生じやすい
 ことをあらかじめ理解しておき、
 適切に対応することが求められる。

 また、新たな始まりは、
 すぐには結果に結び付かないもの、
 目標達成のために必要な日々の地道な
 積み重ねをおろそかにしないこと。
 結果を出すことに目を奪われすぎない
 ようにする。

変化を求める一方で、
変化を恐れる気持ちもあり、
「変わりたい」「変わりたくない」
という両極端の感情の間で
揺れ動くわけですが、
「トランジション(転機)」を
伴わない「変化」は
部屋の模様替えにすぎず、
「トランジション」が
起こらなければ、
「変化」は受けとれないので
機能しないと
ブリッジス氏はいいます。


従来は、仕事を通して得られた
経験の積み上げを、
狭い意味での仕事( Job)
「ワークキャリア(厚生労働省)」
として捉えていましたが、
最近では、仕事だけでなく、
ボランティア活動、スポーツ活動、
社会活動、文化活動、職業以外の
個人的、組織的活動などを含むなど
広い意味での仕事(Work)
「ライフキャリア(文部科学省)」
として捉えることが多くなっています。


自分で自分自身のために
もはやふさわしいとは
いえなくなったことが
「何であるのか」をしっかりと
捉える必要があると思いますが、


予測不可能な現代社会においては、
子どもも大人もさまざまな
ストレスにさらされているといえ、
このストレスにうまく対処できず、
それが長期にわたると
さまざまな精神疾患に至ることが
あります。


多くの心理的な問題は誰にでも
起こりうることだからこそ、
これらの問題に対しては
その問題のメカニズムや
解決方法について
あらかじめ一定の知識を
備えていると、自分自身、
あるいは家族、友人などの
身近な他者に対して、
気づく可能性があります。


キャリア発達理論においては、
ある年齢段階において人々が
共通に遭遇する出来事や課題があり、
そういったライフ・イベントや
課題を乗り越えながら
人は次の発達段階(ステージ)に
移行していくと考えると
スムーズに自分をアップデート
(キャリア形成)できるのでは
ないかと思います。


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