令和5年度会計士試験-社会人合格体験記①学習時間の予実管理



自己紹介

初めまして。この度令和5年度の会計士試験に合格した”いよ”と申します。
新卒で事業会社の財務本部に配属となり、3年強、単体・連結の予実管理業務に従事しておりました。社会人歴を重ねる中で、自分の知識不足に危機感を覚え、会計士の学習を開始しました。
その後、短答合格者採用をいただき、論文期は監査法人にて業務しながら勉強し、この度、論文式試験に合格することができました。
【学習期間】
22/1     CPA会計学院入塾
22/5     短答70.2%❌
22/12   短答76.6%⭕️
23/8  論文⭕️

はじめに

勉強時間は多い方がいいのか?少ない方がいいのか?

会計士試験界隈では、SNSを通じてその日の勉強時間を発信している受験生がたくさんいらっしゃいます。そして予備校の先生も毎日のように勉強時間を増やすように発信されており、合格者も体験記などで合格までにかかった時間を割と書いてくれます。個人の肌感覚ですが、受験生は勉強時間が多いほど、合格者は少ないほど偉いとされている傾向があります。

事業会社で予算管理の仕事をしていた私からすると、このように、勉強時間にフォーカスした発信がなされているのはやや違和感のある光景でした。
なぜならば、リソース投下の結果よりもリソース投下それ自体にあまりにも関心が寄せられているように感じたからです。

勉強時間との正しい付き合い方

私は勉強時間は企業活動における費用や投資に近しいと考えています。言い換えれば、受験生が投下するリソースです。

予実管理の文脈で言えば、投下されるリソースは予算に対して多すぎても少なすぎても望ましくありません。
その理由は、(会計士受験生の方ならば資金ショートを起こしたり現金に機会費用が発生したりという答えが出てくるかもしれませんが、)経営者が意思決定をする上で確度の高い予算は欠かせないものだからです。もちろん、サプライズな環境要因で予測が外れることは日常茶飯事です。しかし確度の高い予算がベンチマークとして機能していて初めて、初めて分析ができ「見通しを立てる」ことができます。
また、どうしても対外的な影響を受けやすい売上と異なり、リソースはある程度能動的に管理ができます。言い換えれば、タイミング、金額、抑制や追加といったところまで、経営の意思決定が関与できます。
「狙った結果を狙っただけの投下で得ることを目指す。差異が出れば分析して適切な手を打ち、改めて狙った結果を目指す」ような意思決定を促すことが予実管理に求められることであり、これによって経営者は見通しのたたない未来への不安を軽減し、適切な判断を下すことができるのだと考えています。
狙った結果への議論をすることなしに、リソースの投下が多かったり少なかったりすることを評価することは片手落ちだと思うのです。

もちろん、勉強時間は必要ですし、投下すればするだけ合格を確実なものとできることに異論はありません。不特定多数に発信する責任が伴う講師の方々が勉強時間を増やすようにと発信されることは正しいことと思います。
そして、合格者にとっても、超短期合格者など、投下リソースが少ないということが当人の優秀さを示すことも理解しますし、誰かに読んでほしいと思って発信する以上、必要な情報だとも思います。
また、そもそも個別・科目別などの学習タスクなどは多様すぎてSNSでの発信に適さない、というのもあるでしょう。誰しもが大切と捉え、多ければ多いほど良い。まるでお金のような共通尺度として、勉強時間を基準として発信を行うのは非常に便利だと私も思います。

しかし、このような情報が溢れる状況下で、一部の受験生は勉強時間を投入することそれ自体が目的化していないでしょうか。
結果として、真面目な受験生ほど常に何かに追われているような受験生活を送っていて自分で自分を追い込んでしまってはいないでしょうか。また、社会人など、色々な事情で勉強時間を確保できていない人たちは孤独な戦いの中で常に罪悪感や焦りを感じてしまっていないでしょうか。
こうした方の助けに少しでもなれば、と思いnoteを書くことにいたしました。

勉強時間の予実管理の方法

実際の予実管理ファイルのイメージ

私は勉強時間について予算を立てて、実績を記録するエクセルファイルを作成して日々の勉強進めていました。実際の作業ファイルの抜粋がこちらです。
下図まとめの4月は、監査法人は超繁忙期でした。定時までの勤務とはいえ基本は全出社で、勉強時間自体は満足に取れず、専念受験生ではないことを後悔したタイミングもありました。。
それでも下図を見れば客観的に自分のリソース投下状況を判断することができ、過度に不安になったり無茶に睡眠時間を減らしたりすることを避けることができます。

例)4月の勉強の振り返り
4月は対予算+15hでの着地だった。投下可能時間を保守的に見積ったからだと思うが、目標を達成できたことは素直にポジティブ。
しかし、内訳としては租税が+11h,管理会計が+8hに対して財務▲3h、企業▲1hと科目間の入繰が若干大きい。
特に構造計算(▲2h)は点数を稼ぎたいところなので、タスクの進捗を確認しつつ、遅れがあれば次月に積極的に充てる。
また、租税、管理の対予算超過はタスクに対する予算の見立てが甘かったせいかもしれないので次月の予算に反映する。
4月はほぼ答練受けられていないけど、これは講師相談のとおりだからOK。そもそも予算にも入れていないから予実差もないね。

①勉強時間まとめシート
②勉強時間入力シート
③予算策定シート
④教材別WBSシート

予算の立て方

前節で勉強時間の予実管理についてイメージは湧きましたら幸いです。
次に、予算の立て方について説明をしたいと思います。
はじめに、で記載したことの繰り返しになりますが、「狙った結果を狙っただけの投下で得ることを目指す。差異が出れば分析して適切な手を打ち、改めて狙った結果を目指す」ような意思決定を促すことがリソースの予実管理に求められることです。
しかし、狙った結果を合格とすると、あまりに壮大すぎて予算がたちません。。。「一般的な合格者は3,000h勉強しています」のような超アバウトな標語は現実を反映していないとよく叩かれてますよね。模試は回数が少なすぎて、逆に答練は多すぎて立てにくいです。
そこで、タスクにたいして予算を立てることにしました。
【予算の立て方】
①目標日まで(公開模試など)に達成したい教材を科目別に設定する。
② ①の各教材の問題数を数え、回転数を決める。
③ ②について1hあたりの消化量を設定する。
④問題数✖️回転数/1hあたり消化量が各科目にいて目標日までに割かなくてはいけない時間数になる。
⑤各科目の時間数を日毎に割り振っていく。(下図では⚪︎1つが予算に1h割り振ったことを表している。)

※①を設定するために予算設定のタイミング(できれば毎月初)までに講師相談するようにしていました。前回相談からの進捗についてフィードバックを受けるために相談する講師は固定できるといいと思います。
※割り振り時は日毎のバランスにも注意する。下図では4/1(土)は7h、4/2(日)は6h予算を立てていることを示しています。
※最終的に私は乱数を用いて⚪︎を振ってました。人間の手で割り振っていた時は月曜日は財務、火曜日は管理など、どうしても規則的に予算を立ててしまいがちなのですが、飛ばした時に罪悪感が湧いてしまって予算を見るのも嫌になってしまって何回か挫折していました。乱数なら、もともと規則性ないので飛ばしちゃったタスクを翌日以降にずらすのも罪悪感ゼロです。
※予算を立てる時は教材の粒度まで立ち入らず、勉強時間まとめシートの粒度までで立ててました。(例: ×コントレ構造①、②、③  ⚪︎財務会計-構造計算)
教材単位で予算を立てて管理するのが結構煩雑だったためです。

(再掲)③予算策定シート

実績入力の仕方

※常にエクセルを開いた状態で勉強するというのは現実的ではないので、普段はStudy Plusにて記録し、2~3日にいっぺん転記するという形をとっていました。
※タスクを実行したら、上図②の予算策定シートの⚪︎が入ったセルに着色し、進捗を管理するようにしていました。時間の記録ができない時でも、セルの着色は優先的に行なっていました。(未了タスクを明確にするため)貼付している図は実行後のものなので着色されておりますが、予算策定時は無地のセルです。
教材別記録が④の教材別WBSシートに飛ぶようになっています。

(再掲)②勉強時間入力シート
(再掲)④教材別WBSシート

予実管理の方法

前節・前々節のステップより勉強時間まとめシートが組み上がります。
前述のように予算は日毎に作成しているのですが、まとめシートでは7日ごとに月別累計予算を更新するようにしました。
色々突発でできないことはあるだろうけど、一週間で帳尻を合わせよう、という思想です。(ちなみに7日✖️4週間からはみ出してしまった数日を"5Q"というとても気持ちの悪い表現しか思いつかず心残りがあります。何かいい表し方があれば教えてください…)
1ヶ月が終わったタイミングで勉強時間まとめと模試・答練の結果を持って講師相談に行き、次月の予算を組みます。

以上が勉強時間を投下リソースと見立てた予実管理の方法です。

(再掲)①勉強時間まとめシート


4月予算を1Q累計にした場合。毎週打ち変える。

まとめ

長々と書き連ねてしまいました。ここまで読んでくださった方はありがとうございます。
成績開示もまだ来ないタイミングで書こうと思ったのは、
勉強時間の予実管理は、科目ごとに異なる個別の勉強法の話ではなく、
それぞれ別個に語られてきた(もしくは努力最大限の勉強時間の投下は所与とされてきた)「タスクの計画→勉強時間の割当→タスクの実行→当月進捗・成績の確認→次月タスクの計画」のプロセスについての思考の過程を残しておこうと思ったからです。
スクリーンショットのエクセルはあくまでイメージの補助に過ぎず、読んでいただいた方それぞれのやりやすい方法で計画や実行管理をされると良いと思います。
これを読んでくださった方の気持ちが少しでも前向きになり、望んだ結果を得られることを心よりお祈り申し上げます。


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