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【読書日記】 「わたしが障害者じゃなくなる日」を読む


著者の海老原宏美さん。NHKの番組でお話しされている姿がカッコイイなと思っていたのですが、最近お亡くなりになられたとのこと。ぜひ読んでみたいと思いました。

第一刷:2019年6月10日
発行元:株式会社旬報社
著者:海老原 宏美
内容:わたしに障害があるのは、あなたのせいです。そう言ったら、おどろきますか?難病をかかえ、人工呼吸器とともに生きる著者からのメッセージ。みんなの思いが重なって、社会が変われば、障害なんてなくなるんだよ。(amazonより)

「わたしに障害があるのは、あなたのせいなのです。」

前書きにこのような衝撃的なことばがあります。
しかし、非常に納得がいくことばでもあります。
「わたしが病気であることと、『障害がある』ことは、別のこと。わたしの生きづらさをつくりだしているのは、この世の中、この社会なのです。」という力強いことばが続きます。

これは、障害の社会モデルをわかりやすく表していますね。

病気があっても、周囲の環境によっては「障害」になったりならなかったりします。だから、非常に重い難病があっても、「障害者じゃなくなる日」は来るのです。
著者の海老原さんの生い立ちがそのことを示しています。

それぞれの子どもに応じた関わり方を。


私は障害のある子どもたちの教育に長年携わっています。
若い頃は、「子どもたちの障害をなんとかしたい」「できないことをできるようにしてあげたい」という気持ちで仕事をしていたように思います。

今は、「しんどいよね。だから、しんどくない方法を考えてみよう」とか、「わかりにくいよね。じゃあ、これを使ってコミュニケーションしてみよう」と、私自身の関わり方を変えるようにしています。
「障害」をそのまま「障害」としてしまうのではなく、私たちの関わり方によって「障害」とならずに済むことが多いはずです。
そんなことを考えながら、この本に非常に共感しました。


平等ってなんだろう

「平等」について考えるために、一つのエピソードが書かれていました。
ホールケーキを複数の人で食べる時のこと。

10人で食べる時、どのように切り分けますか?


海老原さんは、人の数だけ均等に切り分けるのではなく、「どれくらい食べる?」と一人一人に聞いて切り分けるという体験をされました。
一人一人、食べたい量は異なる。全員が同じ分量を食べないといけないということはない。その通りですね。
「こんなに食べたくないのに、切り分けられたからがまんして食べよう」と渋々食べる人がいます。それなら、もっと食べたい人が多くもらって食べた方が、お互いが満足できます。

海老原さんはこんなふうにも書かれています。

自分が必要としている分がちゃんと来るのが平等だと言われて、私は衝撃を受けました。大人になるまであたりまえだと思っていたことに、「そのあたりまえを、もっとよく考えようよ」と言われている気がしました。

101ページ

特別支援教育を語る上で、よく出てくるイラストがあります。(下図)
私は、この絵よりも、海老原さんのケーキのエピソードが心にグッときています。

合理的配慮と平等を考えるイラスト

「必要としている分がちゃんと来る」・・・・これは、何も食べ物に限ったことではありません。

上のイラストのように、塀が邪魔になって見えない場合に、それぞれの人に合った台を用意することでみんなが同じように観戦し楽しむことができます。

視力が悪い場合に、それぞれの人の見え方(視力、視野など)に応じてメガネを用意します。

聴力が悪い場合に、それぞれの人の聞こえ方(聴力レベル、タイプ)に応じて補聴器を用意します。

知的障害がある場合に、それぞれの人の理解に応じて、伝え方を工夫します。ことばなら一語文がよいのか、二語文がよいのか。視覚的な手がかりなら、写真がよいのか、イラストがよいのか、それともシンボルがよいのか。

自閉症がある場合に、それぞれの人の理解に応じて、環境を整備します。することと場所を対応づけする、することをカードで示すなどです。

社会が障害を作っているんですね

「必要としている分がちゃんと来る」・・・これって、非常に重要なことです。障害のある子どもたちの教育をする私たちは、常にこのことを考えながら関わらなければなりません。
そんなことを改めて考えさせてくれた、この本に感謝します。


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