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詩人の肉声:LUNCH POEM@DOKKYO-獨協大学 原成吉ゼミからの贈り物

日本に帰国する楽しみのひとつが、尊敬する英文学者たちとの一夕だ。常任教授メンバーは獨協大学の原成吉さん、上智大学の飯野友幸さん、そして早稲田大学の栩木伸明だ。といっても僕にとって、原さんはなによりもゲーリー・スナイダーの翻訳者であり、飯野さんはかつては大岡信との共訳による名著、思潮社のアメリカ現代詩共訳詩シリーズ『ジョン・アッシュベリー詩集』の訳者であり、もっと後ではホイットマンの『おれにはアメリカの歌声が聴こえる 草の葉』(光文社古典新訳文庫)や僕の大好きな詩人フランク・オハラの紹介者、そして大学一年生のときから四十年来の付き合いになる栩木はアイルランド文学の古典から現代にいたるまでの導き手だ。

この錚々たるメンバーと、おいしい料理と酒を味わいながらすごすひとときは、世界一贅沢な詩の授業とも言うべきものだ。ちなみに今回の「授業」では、Kay Ryan, Robert Pinskey, Louise Gluck, Jane Hashfieldなどが「課題図書」として提示された。といっても今僕の手元にあるのはワインの染みのついた紙切れがあるだけで、それらの詩人にまつわるありがたい講義は陶然たる酔いのかなたに消えてしまったのだけれど。

ところで今回は原教授から耳寄りなお話を伺ったのでここに紹介しておきたい。獨協大学英語学科の原成吉ゼミでは、定期的に現代詩人を招いて朗読会を開いているのだそうだ。これまでの参加詩人は、

1.岡本啓
2.大崎清夏
3.田野倉康一
4.石田瑞穂(彼はこのプログラムのディレクターを務めてもいる)
5.暁方ミセイ

みんな僕の興味のある詩人たちばかりだ。次回は5月18日(木)佐峰存さんの予定。どのセッションも録画されて You tubeにアップされている。これが続いてゆけば貴重な朗読ビデオアーカイブとなることだろう。ちなみにプログラム名の Lunch Poemはフランク・オハラの代表的な詩集のタイトルだ。

それにしても日本の近・現代詩の歩みのなかで、外国文学研究者が果たしてきた役割はとてつもなく大きい。そしてそこには大きく仏文系と英米文学系のふたつの流れがあるようだ。それぞれの系譜を遡っていけば明治の新体詩にまで至るだろうが、現代詩に限っていえば、金関寿夫先生の存在がひときわ大きい。関東ポエトリセミナーを舞台として、金関先生を中心とした詩的ネットワークは、大岡信、谷川俊太郎、ゲーリー・スナイダー、ジョン・アッシュベリーから若き日の伊藤比呂美まで多岐に渡っていて、その網の目を追いかけてゆくだけで、日本の現代詩のある特徴的な側面が浮かび上がるに違いない。

獨協原ゼミのLunch Poemプログラムは、その伝統の21世紀における新しい展開を予感させる。日本に住んでいたら毎回足を運ぶのに、悔しいことだ。皆さんはぜひお見逃しなく。

詳しい情報はこちらから、
https://hara-zemi.jimdo.com/lunch-poems-dokkyo/

You tubeの画像は、
https://www.youtube.com/watch?v=9w7CDaj13Hk

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