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Dear slave 親愛なる奴隷様 Loveですぅ! 第27話 和菓子でハロウィン?

 教習所ではそれほど問題もなく無事に免許を取得した。季節はそれを待っていたように寒くなってくる。

 商店街の飾り付けはハロウィンで秋の色になっている。家に帰ると琴音さんが待っていた。

「星七、免許取得おめでとう!今夜はそのお祝いも兼ねてハロウインパーティよ」テーブルへ案内される。

 宅配ビザが届いていて飲み物やカボチャのプリンなどが並べられている。

「ハロウィンですか?」言葉に困りたたずむ。

「悪魔のコスプレとかしてみようかと思ったんだけど、星七が私の美しさにドン引きしてしまうかもって思ってさ」笑っている。

「えっ………」さらに言葉を無くす。

 日頃からパンツとブラの悪魔、ランデビ琴音を嫌というほど見ているが、思わずランデビ琴音さんにコウモリの羽がついてる画像が脳の中をスキップしている。もしかしてリビングは年中ハロウィンなのかと思ってしまう。

 ハロウィンバーティは厳かに?始まった。

 そういえばそいとげから頼まれていた雑誌へのサインをほったらかしにしていた事を思い出す、たまにしか会えないからと嘘をついていたのだ。仕方なく頼んでみることにした。

「あのう………琴音さん、いやミコトさん、友達から雑誌にサインしてほしいと頼まれてるんですけど………」

「いいわよ、お友達はなんて名前?」

「そいとげです」僕は雑誌を持ってきて手渡した。

「えっ、そいとげ?ニックネームなの?」

 不思議そうに聞いたが、サラサラっと慣れた手つきてサインしてくれている、随分慣れてるんだなあと思った。よく見ると『愛するそいとげくんへ』とオマケまでついている。そいとげの嬉しそうな顔が浮かんできた、僕はそれをフッっと吹き飛ばした。

「そう言えばモデルって芸能人何ですか?」茉白ちゃんの疑問をぶつけてみる。

「えっ、芸能人?」パッっと瞳が大きくなった。

「私、芸能人じゃないよ、テレビの出演以来もきたけど断ってるし」笑っている。

「そうなんですか?ずっと勝ち続けて有名人になるのかと思ってました」

「そんなの興味ないわ、私はイベントで他の人に勝ったらそれでよかったのよ、もう完全勝利だわ」思いっきり口角を上げた。

「そうですか………」僕は琴音さんの価値観を図りかねる。

 翌日図書館で茉白ちゃんと作業をしていた。単純な作業は好きではないが、茉白ちゃんと一緒なら話しながらできるので楽しい。僕の幸せな時間がゆっくりと過ぎていくのが嬉しいと感じている。

「ヤホー、遊木さん、差し入れ持ってきたぜ〜」そいとげがニヤニヤと歩いてくる。
 
 また面倒なやつがきたな………僕は眉を寄せる。

「こんにちはそいとげくん」茉白ちゃんはにこやかに答えた。

「これハロウィンの和菓子」そう言ってカボチャの和菓子を出してきた。

「えっ、和菓子でハロウィン?」僕は目が点になる。

「何だよ、和菓子でハロウィンやっちゃいけないのかよ」不満そうだ。

「これそいとげくんが作ったの、凄い!」茉白ちゃんは驚いている。

「はい、自信作なんです」そいとげが可愛くない笑顔を見せる。

「ハロウィンを和菓子でね〜」僕はイマイチしっくりこない。

「なんか問題でも?」

「もしかしてお店に並べたりした?」

「ああ、並べたけど売れなかった」ガックリと肩を落とす。

「やっぱりね」僕は繁々と和菓子を見つめる。

「美味しそうだよ」茉白ちゃんが優しくフォローしている。

「茉白ちゃん、こいつにフォローなんていらないよ」

「そうなの?だって星七くんの親友でしょう?」

 そいとげは笑っている。

「ヤホーなんてどうでもいいよ、どうぞ遊木さん」茉白ちゃんへ和菓子を差し出す。

 別に食べたいわけじゃないけど、少しイラッとする。僕はふと思い出して、ミコトさんがサインしてくれた雑誌を鞄から引っ張り出す。

「そいとげ、この雑誌にサインをもらったけど、捨てようかな?」薄笑いを浮かべる。

「えっ、ミコトちゃんのサイン、もらえたの?」子供のような笑顔になった。

「さて、ここに何と書いてあるでしょう?」僕は雑誌のサインの横を指差す。

「ゲッ、愛するそいとげくんへと書いてありますう〜!」足をバタバタして喜んだ。

「ヤホー、やっぱりお前は親友だよ、いや大親友だよ、和菓子食べてくれよ」そう言ってすり寄ってくる。

「キモッ!」僕は冷たくあしらって茉白ちゃんんと和菓子の試食を始めた。

「あれ、結構美味しいじゃん?」

「そうね、とっても美味しいわ」茉白ちゃんも大きく瞬きしている。

「だろう?」そいとげは腰に手を当てて自慢げに頷いた。

「でもハロウィンだろう?」僕はどうしても違和感が消せない。

「いいじゃん、和菓子でハロウィンやクリスマスをやっても、そこに心がこもってれば!」

「そうだな、心がこもってればいいかも」僕は納得することにした。

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