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お茶代ジユー課題2『卒業する、ということ』

 春らしく穏やかな気候に心和む季節となるこの佳き日に、多数の読者の皆様をお迎えしてお茶代「卒業する、ということ」について投稿できることは野晒髑髏にとっても大きな喜びでございます。進学される皆様、社会に出てゆく皆様、卒業まことにおめでとうございます。野晒髑髏心からお祝いの言葉をお送りいたします。
 さて今年3月16日、北陸新幹線金沢-敦賀間延伸、3月23日北大阪急行電鉄千里中央-箕面萱野間延伸。高速道路も各地で開通、拡幅し、都市のフィジカルな環境は急速に変化し、それに伴い人々の生活パターンを変わっていきます。小中学校を卒業する皆さんは今までは学区、校区がありましたが、これからは生活範囲が大きく広がります。旅行で遠くへ行くということとはまた違い、友達と会う、塾へ通う、学校へ行くという普段の生活が遠方と交通機関で繋がるのです。
 そんな中で卒業することについて考えてみましょう。まず卒業される皆さんに大切にしていただきたいことが2つあります。それは地縁と社縁です。地縁とは地元との絆です。自分達が育った土地には、常に変わらぬ愛を注いで励ましてこられた家族の方々や一緒に切磋琢磨に勉強し、時に喧嘩もし、楽しく遊んだご友人、そして登下校を見守ってくれた地域の方々との縁が刻まれています。ご近所の人に挨拶した事や公園で遊んだ事、盆踊りに行ったことは、例えば通学路の金木犀が咲いていたり郵便ポスト、公園の遊具などの場所と一緒に記憶されます。だから地縁は皆さんの帰ってくる場所となるのです。
 つづいて社縁とは社会との縁、会社や駅との縁です。先ほど申しましたように、交通機関により生活範囲が広がります。そして地縁とは別のネットワークが形成されます。会社や同好会、クラブといった、住むところは違いますが一定時間を共有する時間コミュニティは移動と異動によりもたらされます。ふるさととは別に精神的な無数の原点として広場やカフェ、喫煙所や駅に情報センターとして新しく成立します。
 これらの縁は今やその間に介入するサービスによって切られやすくなっています。しかし学校で背の順や席、班での活動で培ってきた隣へ隣へと対個人のあたたかな関係づくりは縁を作ることに役立つでしょう。
 ではなぜ地縁と社縁が発生するかというと卒業すると学縁といいますか、学校のネットワークが解体され新たなネットワークが構成されるためです。学縁とは学び舎を中心とする学区として、時間割として、有限の広がりです。卒業写真に映り込んだ学び舎の時計は、その時の時間と幼年期の時間の両方を指します。卒業により学校の時間と場所は凍てつき、思い出として凝固します。もはや帰ることは許されず、賑やかな話し声と共に卒業写真に綴じられます。社縁から帰る場所は地縁なのです。そして学縁はそこで何が行われているのか、出来事を予想できる未然の劇場として後輩たちへ、子供たちへ、そのネットワークをゆずります。OBOGとしてまた遊びに行ってみてください。自分達が地域の人間として、地域の施設のひとつとしての学校に来て子供たちへアドバイスしていることに気づくでしょう。これが学縁が解体して再構成された地縁です。
 卒業とは場所に基づいたネットワークの解体及び再構成に他ならないのです。新たに構築する縁を大切にして力強く動くことを心から期待をして私からの式辞に代えたいと思います。卒業まことにおめでとうございます。

                  野晒髑髏


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