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映画の始まりと思えば思えなくもない

リスボンから隣町に引越しました。

隣町といってもテージョ川を渡らないといけないし観光名所もないので観光客はいない。住民も原住民(現地人ていうのかな、ポルトガル人の意)かアフリカ系らしい移民の人が多くて、外国人ているのかという感じだ。キラキラと観光地感にあふれる外国人ばかりのリスボンと違い地味な地元感が漂う。毎日ここからリスボンに働きに出る人が多いからか街はなんだか閑散としている気もするが、リスボンが異常なんであってこれが普通な気もする。こんな地味な街に日本のカンレキ過ぎたおばさんが犬を連れて一人でやってきていきなり暮らし始めるなんて、映画の始まりみたいと思えば思えなくもなく、小林聡美かもたいまさこにでもなった気分になってみるか。

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身の回りの物を入れたスーツケースを引っ張ってリスボンのアパートから2日間で5往復し、5往復目にトフをつれて入居した。2往復した後に近所のMEOショップでネット契約をしたので入居した時にはネットが使えるようになった。4往復した後に近所のモールのフードコートでランチを食べて、ついでに商店街のベッド屋さんによってマットレスを購入し即日配達してもらったので入居の初日からベッドに寝られた。入居した日にはネットとベッドとトフという最低限必要なものが整ったことはなかなかいい。

なにもないリビングにころがるWifiルーターとトフのおもちゃ


なにもないけどトフとベッドとネットはある

アパートは築100年近いボロい4階建の建物の2階で、隣はアフリカ系移民の家族のようだ。赤ちゃんの泣き声がしている。赤ちゃんはよく大声で泣いているので、たまにするトフの吠え声どころではないだろうと思うと気が楽だ。赤ちゃんには5歳ぐらいのお兄ちゃんと3歳ぐらいのお姉ちゃんがいて、踊り場でトフを見かけて抱っこしたがったのでさせていたら母親が様子を見に出てきた。挨拶した。無愛想でした。

下のアパートにはポルトガル人のおじいさんが住んでいる。アメリカ映画かドラマでよくみるウォルターマッソー系の俳優の誰かに似てるのだが思い出せない。彼は隣の建物の1階にあるカフェ&バー(カフェバーというようなおしゃれなものではなくコーヒーも飲めるし夜は酒も飲める街の一角という意味)のオーナーだ。そこにはいつも現地の人がたむろし繁盛しているけどおじいさん一人で切り盛りしている。上のアパートはポルトガル人の唖のお婆さんが犬だか猫だか4匹と暮らしていると身振り手振りで教えてくれた。隣のアフリカ移民(と私が勝手におもってる)家族のことは嫌いらしい。

リスボンのアパートにはノマド的な外国人の若者ばかり住んでいたが、たった20分のフェリーでたどりついた先のアパートは地元感がたっぷりだ。それは望んだところだけれど、そのせいで東アジア人の他所者が街をあるくと浮いてしまう。ここに数年間は住むつもりなので早く溶け込みたい。

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部屋は気に入っている。建物はボロいが部屋は数年前に改装したらしい。芸術家の兄弟が住んでいたというだけあって建物の地のレンガを生かしたオシャレな内装だ。チョークで落書きができる壁もある。リビングの窓は四方を建物で囲まれた中庭的な空間に面していて、隣の建物に住むおばさんの庶民的な可愛いらしい”庭”がみえる。庭の世話をしているおばさんを見かけたので、窓越しに「新しい住人です」と頑張ってポルトガル語で呼びかけたら「困ったことがあったらいつでもいって」と英語でいわれた。


近所のおばさんの庶民的屋上ガーデンがみえるリビング


トフと初散歩した。今朝は曇っていて前夜に雨がふったのか石畳はすこし濡れてた。

あっちがリスボン

何かの理由で今日の午後はフェリーの運行が止まるらしい。観光客のいないPastelariaで朝ごはんでも食べてから、テーブルと椅子を買いに行かないといけない。

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