夕木春央『方舟』装画考察

地下施設に閉じ込められた10人のうち、
1人が死ねば助かる状況で殺人が起き、
犯人を生贄にするため犯人探しが始まる。

そんな、面白そうすぎる紹介に惹かれて
手に取った夕木春央さんの『方舟』。
あまりにも面白くて2日で一気に読みました。

ちなみに、知ったきっかけはYouTubeチャンネル『ほんタメ』です。
たくみさんの紹介が非常に巧みで(ギャグではない)
なにそれ、絶対面白いじゃん……!となり、
すぐさま図書館で予約しました。
私の拙い説明では面白さを伝えきれないので、
ぜひこの動画を観てほしい。



さて、ここからが本題。
読み終わったあと、熱が冷めやらぬまま
講談社の読者専用ネタバレ解説も大変面白く拝読しました。

有栖川有栖さんの愛に溢れた
読み応えたっぷりな解説が素晴らしいのはもちろん、
影山徹さんによる装画裏話を読んで、
カバーを改めて眺めながら
背筋がゾゾゾ〜〜〜〜ッとする感覚を味わいました。
そして同時に、装画の奥深さ、プロの仕事に感激しました。

この「ゾゾゾ」について友達に話す機会があり(薦めたらすぐに読んでくれた)
自分が装画裏話を読んでから
装画を見返して納得した解釈について
合っているか自信がないので検索してみたのですが
他に書いている人が見つかりませんでした。

なので、考察というほどのものではありませんが
私の個人的な解釈をここに文章として書き記しておこうと思います。

完全にネタバレします。
未読の方は絶対に読まないで!















●大岩が青い理由
映画やドラマで、
爆弾処理をするため、二本のコードのうち
どちらを切るか選ばなくてはいけない「赤か?青か?」
というお決まりの展開があります。
(古畑任三郎でもありました。キムタクの演技、最高だった)

この二択(「ワイヤージレンマ」というらしい)の起源とされている映画、
リチャード・レスター監督『ジャガーノート』では
自供を迫られた犯人は「青を切るように」と言いますが
実際には赤を切るのが正解(生存ルート)でした。

『方舟』の世界の中で、犯人以外の全員が
大岩を落とすことが生存の道だと信じています。
大岩=青=実際には生存ルートではない、
ということを表現していると解釈しました。

【追記】
しっかり検索したら「青は水没のメタファー」という考察が出てきました。
めっちゃそれっぽい。それだ。
長々持論を展開していた自分が恥ずかしい……
でも、考察は自由だよね。ってことで、
生存ルートじゃないことの隠喩説も消さずに残しておきます。


●岩の中に見え隠れする三層の空間の一部が赤く、
 最下層が真っ暗な理由
真っ赤なのは殺人が起こる地下2階の部屋、
真っ暗なのは水没している地下3階。

思春期に西尾維新を読んでいた身としては、
こういう
「読んだ後にだけ気づける、
 がっつりネタバレしてる表紙」
が大好きです。


数百人待ちだったにも関わらず、
思いのほか早いスピードで順番が回ってきたことを
不思議に思っていたけど
読んでみて理由がわかりました。
きっとみんな、一気読みしてるんだろうな。

手元に置いておきたいから購入を検討中ですが
装画を眺めるとやっぱり「ゾゾゾ」と怖くなってしまう、
そんなジレンマを感じています。

あ〜、面白かった!

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