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うつ治療記

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うつ治療記(10=最終):「資本主義(=)うつ」

うつ治療記(10=最終):「資本主義(=)うつ」

私は毎日お金のことを考えている。いや考えざるをえない。入ってくるバイトの給料だったり、大学の学費やローン、奨学金の増減。自立とは、私にとっては経済的な自立でしかない。親からのお金の支援がいらなくなれば、それは十分な「自立」といえる。そんななか、新型ウイルスの感染は拡大し、もはや地球上には一つの問いしか残っていなかった。その問いは、「命を優先するのか?それとも経済を優先するのか?」この訳のわからない

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うつ治療記(9):「うつの人って結局怠けてるだけなんだよなー」

うつ治療記(9):「うつの人って結局怠けてるだけなんだよなー」

私はこれでも大学では歴史を主に勉強しているので、うつの歴史にも興味を持ったというわけである。そんなことで、きのうの深夜、鬱特集の『ユリイカ』2004年5月号(!)に入っている、北中淳子の「『神経衰弱』盛衰史」(かっこ内は引用された箇所のページ数) を目を擦りながら読んだ。北中淳子といえば、『うつの医療人類学』を書いた慶應の人類学者。2004年ということでかなり古い論考なのだが、読む価値は十分にあっ

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うつ治療記(8):うつの美しさ

うつ治療記(8):うつの美しさ

きのうは「うつ治療記(8):うつと人新世」というタイトルで文章を書きたかったのだ。ちょうど人新世のレクチャーをみていて、それをなんとか自分の状況とつなげたかったのだが、うまくいかなかった。まあそういう日もあるだろうということで、とりあえずその文章は自分の文章「倉庫」に入れておくことにした。倉庫といっても、いつも文章を書くときに取り除いてしまう項目が入っているパソコン上のフォルダのことだ。のちのち何

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うつ治療記(7):うつと食べること

うつ治療記(7):うつと食べること

うつでも、うつでなくても、食べないと死んでしまう。だから、うつで食欲がなくても何かしらは口にしないといけない。食事には三つの関門がある。それは、1. 買い物、2. 料理、そして 3. 皿洗いである。もちろん食べることが辛いのだが、何が辛いかと言えばさっき言った三つの工程なのだ。だから、私にとって食欲がないということは、この三つの工程に対する欲がないということに等しい。

食:買い物→料理(途中に皿

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うつ治療記 (6):やる気のなさをどうするか

うつ治療記 (6):やる気のなさをどうするか

昨日はこの「うつ治療記」をお休みした。当初、土日はやらないつもりだったが、これを書かないと生活に張りが出ないと思った。昨日、そして今日はどうしてもぐうたらしてしまい、何事にもやる気が出なかった。まあやらなければいけないことはしたのだが、なんだか心残りがある。これは典型的な私のうつの症状だ。やる気のなさ。だから、そのやる気のなさをこの「うつ治療記」を書かなかったことにせいにしてみて、今日書いてみて、

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うつ治療記 (5):うつと言語

うつ治療記 (5):うつと言語

うつ明けから一週間が過ぎようとしている。そんな中、私は毎日何かしらのテーマを設けて、かなり短い文章を書いてきた。これまで取り上げたテーマは音楽、読書、睡眠の三つ。どれも私や私以外の人たちの生活にとって欠かせない存在だ。そして、今日のテーマは言語。言語もやはり人間にとって、そして私にとって欠かせないものだ。私は言語を使って、いまこれを読んでいるみなさんに自分の思っていることを、それが成功しているかは

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うつ治療記(4): うつと睡眠

うつ治療記(4): うつと睡眠

私がうつと呼んでいるものは、病名でいうと多分「適応障害」や「パニック障害」というくくりで扱われるのだろう。適応障害の症状として顕著なのは、睡眠の量と質の変化である。睡眠時間が突然増えたり減ったりしたら、それは何かしら精神がまいっているし、睡眠の質が悪くなれば、それは睡眠時間が長くてもあまり寝る意味がない。睡眠でいうと、私のうつで特徴的だったのは、「うつの第1波」のときは眠りにつく時間の変化、「うつ

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うつ治療記(3): うつと読書

うつ治療記(3): うつと読書

わたしのうつの症状の一つとして読書をしたくないことが挙げられる。普段から読書はするほうだ。出掛けるときもカバンには何かしら本やら雑誌やらが入っていて、時間があればスマホを見ずに読書したいという欲望がある。その欲望が実現するかはさておき、カバンに本を入れているという行為が大事だということを信じている。しかし、うつのときは本を読む欲望に全くと言っていいほど駆られない。絶対に読まなければならない課題のた

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うつ治療記(2):音楽について(後編)

うつ治療記(2):音楽について(後編)

きのうはクラシック音楽、とくにショパンのノクターンの、うつに対する効用について紹介した。「うつの第1波」では辻井伸行のノクターンやマーラーの交響曲第5番が良かったのだが、「うつの第2波」ではクラシック音楽はきっかり聴かなくなった。そのかわりに聴いたのが、蓮沼執太や蓮沼執太フィルの音楽だ。蓮沼執太という人を知らない人も多いのだろうが、私は彼がつくる音楽に興味があって、彼の音楽の批評まで書いた(「「洗

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うつ治療記(1):うつに効く音楽について

うつ治療記(1):うつに効く音楽について

「うつの第3波」がくるのを押さえつけるために、毎日、日記のように文章を書いていくことにする。読者は想定していないが、いつかどこかでだれかが少し気が楽になればいいなと思う。目標は2000-3000字。内省的な日記自体は高校時代の現代文の先生に薦められて、それから今でも書いているが、最近は「週記」、もはや「月記」と化している。noteというプラットフォームの良いところはパブリックの目線があるので、それ

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うつの第2波

私にも「うつの第2波」が押し寄せてきてしまった、という文章を書いている時点で、たぶんその波は通り過ぎたのだろう。この2週間くらいだろうか、なんだか精神的に辛い状態が続いていた。食欲はあり、肉体的に特に支障をきたすことはなかったのだが、心にきた。

私にとっての「うつの第1波」は今年の5月くらいにきた。ちょうどアメリカから帰国する頃だっただろう。アメリカでは自分の部屋でほとんどの時間を一人で過ごして

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