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読む版「板倉文を聴く会」

※これは2021年5月14日 20:00-22:00にツイキャス上で放送された「板倉文を聴く会」の読む版です。

幼稚園くらいのとき、うちのCD棚にあった小川美潮の『4to3』(1991年)をよく聴いた。当時からとにかく細野さんが好きだったので、これも細野さんのプロデュースだろうと勝手に思っていた。大学の頃になって、改めて小川美潮を全部聴き直そうと思い、そのときはじめて自分が勝手に細野さんだと思っていた板倉文を知ったのである。そこから自分の音楽的な二代巨塔は、細野晴臣と板倉文になった。しかし、もっとも好きな細野さんを差し置いて、レコード・コレクターズの自分のインタビューには「板倉文」という文字列が大きく載ってしまった

板倉文と一緒にサウナに行く夢も見た。板倉文もこういうことをやっていたから自分もこういうことをやりたいと考える一つの基準にすらなった。僕はもう板倉文の人になったのである。細野さんに会わす顔がない。とはいえ、板倉文にもどういう顔をして会ったらいいかわからない。そういうわけでずっとずっとやりたいと思っていた板倉文を聴く会をツイキャス上でやることとなった。このnoteはその内容をまとめたものになるが、ほとんどが「感想」である。勝手に「楽曲編」や「ギター編」、「アレンジ編」と分けてまとめているので、板倉文を聴く皆さんのひとつのガイドになれば十分だと考えている。

※一応YouTubeのリンクも貼ってますが、リンク切れごめんなさい。

楽曲編

小川美潮 - TALL NOSER (from 檸檬の月, 1993)
トールノーザーってどういう意味なのかずっと考えている。歌詞もよくわからないし、小川美潮も板倉文も鼻は高くない。

仙波清彦 - 夏河 (from BUSON仙波, 1988)
かなりジャパニーズテイストでメロディアスな曲。板倉文らしくはないが、コードの感じはっぽさもあったりする。初夏に聴きたい。

チャクラ - 島の娘 (from チャクラ, 1980)
板倉文は一時期沖縄への系統もあったが、そのうちの一つ。きちんとポップスに落とし込んでいるところが憎い。

喜納友子 - タイ・アイランド (結びの島) (from 楽しき朝, 1991)
これも沖縄板倉の一つ。展開がサイケデリックなのも板倉文っぽい。

小野リサ - O Amor, O Céu E O Mar (Catupiry, 1989)
クレジットを見るまで板倉文とわからなかったが本当に、本当に、素晴らしい曲。板倉文の書いたボサノバの中では傑作(これは小野リサと共作だが)。小野リサと板倉文は断片的にいくつか仕事をしているが、どういう関係からの繋がりかは不明。おそらくミディ関係?

太田裕美 - ルナチコ (from 別天地, 1986)
板倉文の音楽にはもともと南米的な要素があるものの、一時期ボサノバやサルサにかなり傾倒していた時期があった。それも純粋なサルサではなく、ジョアンドナートが書くようなブラジルのサルサポップス。この曲はそれが顕著に現れている。

板倉文 - 日没 (from 会社物語 OST, 1988)
クレイジーキャッツが出ていた映画「会社物語」のサントラから。Killing Timeの他の何枚かのアルバムにも収録されていて、そちらの方はより雅楽的なアレンジになっている。サビ?の下がっていくコード進行はブラジルっぽいが、和のメロディがまだ勝っている。ふと口ずさんでしまうほど板倉文のインストでもっとも好きな曲。泣ける。

小川美潮 - 走れ自転車 (from ウレシイノモト, 1992)
おそらくもっとも親しみやすく、おそらくもっとも有名な板倉文の楽曲。老人Zのサントラバージョンだとアレンジがロック寄りになっている。以前小川美潮のライブを見た際に、アウトロのリズムのとり方が難しいと言っていた。ちなみにウレシイノモトで楽曲面ではこの一曲しか参加していないが、アレンジの再編成をやり切ったのでそれだけでよしと思いたいところ。

チャクラ - BAVANCO (1982) (from LIVE & UNRELEASED ARCHIVE RECORDINGS 1981-1983, 2020)
走れ自転車の元になった曲?タイトルもそうだし、南米のサウンドのニュアンスが感じられる。

板倉文 - 愛の桟橋 (from randez-vous OST, 1998)
TBSのドラマ「ランデブー」のサントラから。老人Zのサントラには「夢の桟橋」という曲が収録されていて、勝手に兄弟曲だと思っている。「愛」なのでこっちはヨーロッパっぽいのか。

板倉文 - Running (from うる星やつら 4 ラム・ザ・フォーエバー OST, 1986)
映画「うる星やつら4」のサントラから。コード展開の感じにめちゃくちゃ板倉文が出ている。

Killing Time - Ebrio (from Filling Time With Killing Time, 1989)
ジャズだが、これも南米のニュアンスがある。Ebrioとはスペイン語で酔っぱらいのことらしい。酔っているときの精神状態が表現されているように思う。


ギター編

北川晴美 - hello again (Love & Flowers, 1991)
ギターでの参加。バチーダを刻んでいる。作曲自体はホッピー神山によるもの。ギターソロのアレンジがO Amor, O Céu E O Marっぽい。

坂本龍一 - Futique (from Beauty, 1989)
正直あんまりよくないというか意味不明な楽曲。なぜ板倉文にこんなギターを弾かせたんだろうと思っていたが、リリパのトークによると教授の謎の性格的理由など、かなり裏事情がある模様。

ウヨンタナ - 虹を求めて (from ホルチン, 1998)
坂本龍一文脈のつながりでやったとしか思えないワークス。こちらはスチールギターがめちゃくちゃ良い。

BANANA - GAM (お茶の間 OST, 1993)
テレビドラマ「お茶の間」のサントラから。アレンジやエディットはめちゃくちゃバナナっぽい曲。板倉文のエフェクトのかかったギターがめちゃくちゃかっこいい。

板倉文 - Lotus (from Drive To Heaven, Welcome To Chaos, 1989)
玖保キリコがコンパイルしたコンピの最後を締めくくる一曲。8:13の超大作で、ほとんどKilling Timeといっても差し支えない楽曲。ドラムは青山純に手伝ってもらったのだろうか。

矢野誠 - 河 (from 百和香)
曲自体は中島みゆきの曲かなと思ってしまうが、リアピックアップで拾っているギターソロが一際光っている。

仙波清彦とはにわオールスターズ - 水 (from イン・コンサート, 1991)
小川美潮作曲だが、おそらく仙波アンサンブルの集積によって完成した楽曲。個人的には板倉文ギターのベストアクト。ライブDVDをぜひ御覧ください。


アレンジ編

GONTITI - Watchdog In The Afternoon (from マダムQの遺産, 1987)
初期のゴンチチは松浦雅也と板倉文がアレンジを担当しているが、板倉文の方が比較的アレンジはシンプルになっている。この曲はゴンチチのベスト盤にも収録されている。

糸川玲子 - Surf Board (from Contrario, 1992)
ジョビン曲のアレンジ。これもボサノバ系統の仕事。

藤井宏一 - Rain Rain (from YOUR SONG, 1989)
板倉文的な要素は皆無。これもなぜやったんだろうと思えてしまうアレンジの仕事。違う側面から聴けば良く聴こえるのだろうか?僕はあまり気に入らなかった。

原マスミ - 夢ならば簡単 (夜の幸, 1989)
これもペルーとかそのあたりの南米のニュアンスのある曲。板倉文は南米のパーカッションやギターを担当している。


ぜひ次は「鈴木さえ子を聴く会」、「成田忍を聴く会」、「Ma*Toを聴く会」もやりたいなと思います。

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