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「また行きたい。」と言えれば満点だった。

箱根に行く。
旅行はあまり好きではない。この時期は特に何処へ行くにも人が多くてうんざりする。人がそれほど多くない場所を狙っていけばいいんだろうけど、存外どんな場所にでも人がいる。それに、そこまでリサーチするほど旅行に対して気力がない。
修学旅行で積み重ねられた"つまらない旅行"がこの気力のなさを作ってるんだろうな。修学旅行廃止にしねえか?

そんな人間が箱根に行く。
"星の王子さまミュージアム"という今年3/31で閉館してしまう施設のために。



珍しく早起きをして、新幹線までJRと私鉄を乗り継いで行く。
新幹線は決まりの悪そうな目をしたサラリーマンに挟まれて窮屈だった。なりたくない職業が1つ増えたなぁ。出張のある仕事。

箱根湯本に着いた。
ここからバスに乗り継いで星の王子さまミュージアムへ行く。
晴天とまではいかないが、翳っていた太陽も折々とこちらを覗きはじめていて好日。

バスで20分ほどの予定だったのが渋滞で軽く50分はかかった。
それに坂道だからとても揺れる。手摺にしがみついていないと吹っ飛びそうだった。

なんとか星の王子さまミュージアムまで着いた。
閉館前だからだろうか。想像していたよりずっと賑わっている。ちょうど強くなってきた太陽光も相俟って、そこが近々閉館する場所だなんてとても思えなかった。
フランス調の建物、庭、石畳が美しく際立っていて、別の小さな星に訪れたような感覚だった。

以外にも一人で来ているのは僕くらいだった。
家族連れやカップルで来ていて、 星の王子さまの人気を侮ってたなと思った。

従業員の人と色々話した。
普段からこんなに人がいるのか、閉館の経緯について聞いたり、軽い案内をしてもらったりした。
話を聞いていると、どうにもここはデートスポットとして活用されているらしい。「あの教会なんて、プロポーズの場所としても活躍しているくらいですよ。」と教えてくれた。箱根という旅行地にあるだけあって、星の王子さまを知らない人も訪れるらしい。僕が侮っていたのは箱根という観光地のほうだった。

ミュージアム内は、物語の追体験ができるような構造にもなっていて、6つの星の住人と会ったり、地球でバラを目撃したりできる。
一つ一つの小物の作りも丁寧で、世界観に取り込まれる。
箱根にある地続きの施設といった認識は早くも消え去った。"星の王子さまミュージアム"という小さい星。ここはそういう場所だ。

夕刻を回り空が色づいてきた。
44回沈む夕日を見てしまいたいけど、人が多いし迷惑なので1回だけ見ることにした。
あまりにも綺麗な夕日だった、悲しい時は夕日が好きになるものだというのは本当らしい。

いい場所だったと思う。世界観の作り込みが本当によかった。
こんな良い施設が3/31を以て閉館する。
「また行きたい。」そう言えたなら悔いは残らない1日だった。


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