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育児の「孤独」から「ママコミュニティ」へ。私がコミュニティマーケティングをはじめたワケ。


はじまりはマンションの「コミュニティルーム」。

私はもともと人の中にいるのが好きで、飲み会でも自然に幹事をやっているような、そんな性格です。

ですが、10年前、はじめての育児が始まってみると、突然子供と2人きりの世界。

それに加えて、東日本大震災も経験し、自宅のマンションでこもって生活する中、想像を絶する孤独を感じました。

そんな時、「同じマンションの中にも、同じ環境のママがいるのではないか」「みんなで集まればお互いの孤独や不安を共有できるのではないか」と感じました。マンションにはコミュニティールームがあるので、遠出しなくても、すぐ集まることができます。

さっそく、ママのサークルを始めることにしました。
まずはマンションの掲示板に募集のチラシを貼り、毎週水曜日に開催を呼びかけました。

とはいえ、集まって特別なことをするわけではありません。
日々育児に家事に忙しいママの負担にならないよう「楽して贅沢しよう」をテーマに、出前をとってみんなで食べたり、時にはネットのランキング1位のお菓子をお取り寄せしたり、そんな風に楽しみました。

次第にママたちの要望をもとに、ヨガの先生を呼んだりもしました。

そんな活動を約1年続け、のべ100人のママたちが交流する場となりました。
嬉しいことに、私が復帰する時にはこの活動を引き継ぎたい、と申し出てくれるママまでいたのです。

仕事と育児、不完全燃焼の中で決めた「独立」

私は産前、マーケティングリサーチの会社で働いていました。

簡単に言うと、消費者の意見を文字化、数値化し、次はどんな風に動くと顧客のニーズを満たせるのか、企業に提案するお仕事です。

ですが、産後、仕事と子育ての両立は想像以上に大変で、不完全燃焼の日々でした。
そして復帰後4ヶ月で、退職と独立を決断したのです。

独立はしたものの、業界も仕事も大好きだった私は、どうにかこのマーケティングの仕事を続けられないかと考えました。

ママコミュニティという「ニッチな世界」が自分の強みに

自分の属していた上場企業では大きなスキームで物事を進めることができていた一方、自分一人では当然そんな規模の仕事はできません。

ですが、逆にいえば、数百人の小さい規模のデータなら作れますし、ニッチな世界を的確に把握することはできるかもしれないと気づきました。

「ニッチな世界」といえば、まさに私が育休中に作ったママサークルのような世界です。

自分が当事者として、日々子育ての悩みを感じる中で、この「ママ」という切り口は強みになると感じたのです。

ママにとっては日々の悩みを解決でき、企業にとっては商品の課題解決につながる、これはビジネスにできるのではないかと思い、育児中のママをターゲットにしたマーケティングの会社の立ち上げを決めたのです。

最初は、自分の住んでいる地域を中心にしたWEBサイトを作ることからのスタートでした。

つくばエクスプレス沿線を主軸にしたサイトを作り、チャイルドチェアのあるレストランなど、1000件ほどの沿線情報を集めて検索できるサイトになりました。

ここまでの情報を集めた類似サイトもなく、数百のユーザーが集まってくれました。せっかく確保できたこのユーザーをどう活かすことができるのか、出口を考えていた時に、最初に声がかかったのは意外にも不動産の会社でした。

不動産の会社が「ママの生声」を必要とする理由


なぜ、不動産の会社がこのサイトに問い合わせをするのか、それは24時間、この街で暮らすママたちが最も集まるサイトだったからです。

この街で子育てをするママは、子供の遊び場、おしゃれなカフェ、教育機関に病院まで、街のあらゆることを知り尽くし、街に対して一番の愛情と想いを持っています。

だからこそ、この沿線で物件を建設する際には、そのマンションに住む可能性の高いターゲット、つまりママたちの「生きた声」を不動産の会社は欲していたのです。

例えば、大型のマンションの販売には「周辺マップ」と呼ばれる、実際に住んだ際にどんな周辺環境が整備されているかを確認するマップが必要です。

学校や病院、公園など、ありとあらゆる情報が載っていることで、顧客はその街に住むイメージが湧き、実際に物件購入を検討し始めます。

こういった情報は通常、営業マンが街歩きから作成することが多いですが、当然その質は実際に住んでいる人の声には敵いません。

そこで、WEBサイトで集まった沿線周辺に住むママたちを集めて、リアルな声を反映しながら周辺マップを作る取り組みなどをはじめたのです。

その後、土日以外は閑散とするモデルハウスの集客のため、平日の日中にモデルハウスでママをターゲットにしたイベント開催など、彼らが持ち合わせていなかった「ママ」というリソースを私たちが提供することで、たくさんのお仕事が生まれていきました。

「この街に住むママ」というニッチなターゲットは、「この街で物件を売りたい不動産屋」にとってまさに、一番欲していたターゲットになり得たのです。

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