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「労働は苦役なり」に抗う。ナレッジワーク 執行役員VP of HR 徳田 悠輔 氏の大義とは。

「できる喜びが巡る日々を届ける」をミッションに掲げる株式会社ナレッジワーク(以下、ナレッジワーク)。同社の執行役員VP of HRとして活躍する徳田 悠輔(Yusuke Tokuda)氏のキャリア形成、企業選択の軸に迫ります。

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“ニューエリートをスタートアップへ誘うメディア” EVANGEをご覧の皆さん、こんにちは。for Startups, Inc. の橘と申します。私たちが所属するfor Startups, Inc.では累計650名以上のCXO・経営幹部層のご支援を始めとして、多種多様なエリートをスタートアップへご支援した実績がございます。EVANGEは、私たちがご支援させていただき、スタートアップで大活躍されている方に取材し、仕事の根源(軸と呼びます)をインタビューによって明らかにしていくメディアです。


徳田 悠輔 (Yusuke Tokuda)
2014年、東京大学文学部卒業。 株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)入社。セールス職、人事職に従事。子会社管理部長、 HRBP等を務める。2022年、ナレッジワーク入社。HRマネージャーを務める。2023年8月、執行役員VP of HRに就任。

順風満帆ではなかったHRの道

-- 新卒でDeNAに入社され、ナレッジワークでは執行役員VP of HRへ就任とご活躍されていますが、徳田さんとしてはこれまでのご自身のキャリアをどう捉えていますか?

一見すると順調に見えるかもしれませんが、これまでうまくいかないことの方が多かったです。特に私は元々セールスからキャリアをスタートしたところから人事へシフトしたのですが、人事にシフトした当初はセールスとのあり方の違いに苦しみ、休職も経験しています。
ただ、一筋縄ではいかなかった原体験があるからこそ、ナレッジワークの「”労働は苦役なり”という人類数千年の固定観念を打破する」という想いや、働く人の成果創出や能力向上を支援する「イネーブルメント」という考え方に共感してここにいるのだと思います。

セールスから人事への転換に至った原体験

-- 新卒入社されたDeNAでは元々セールスからキャリアをスタートされたとのことですが、人事へシフトするに至ったきっかけを教えてください。

元々人事キャリアを考えていたわけではありませんでしたが、2つの出来事が私を変えました。

1つは新卒入社して半年後に、同期の新卒メンバー全体の営業成績が、先輩方の営業成績を上回ってしまったことです。

能力や経験的には先輩方のほうが素晴らしいものを持っているはずなのに、チーム内のちょっとした掛け違いが原因でパフォーマンスが発揮されていないように感じました。その際に「もったいない。組織を変えれば絶対によくなるはずなのに」と感じたことを覚えています。

-- もう1つはなんだったのでしょうか?

自分が所属していたチームが解散し、後に事業そのものも売却されたことです。経営判断としては理解できるのですが、それまでそこで頑張ってきたことが無駄になってしまったり、人生が大きく変わってしまう人もいるように感じられました。

「事業の展望を見据えて正しく組織を運営する」という俯瞰視点で手を打つことが必要だと感じたことが人事という仕事に興味を持ち始めたきっかけです。

-- そこからどのように人事にシフトされたのでしょうか。

実は転職して人や組織に関わる事業を営む会社で働くことも考えました。そこで当時のHR執行役員の方に相談したところ、「DNA of DeNAを知らずに辞めるのはもったいない」「DeNAのど真ん中で組織作りを経験してみろ」と言ってもらい、DeNAでHRになることに決めたんです。DeNAのような素晴らしい能力密度の組織作りを経験して、目の前の同僚達に尽くせるならそれ以上に魅力的な経験は無いと感じました。

人事での挫折

-- セールスから人事へシフトされ、実際いかがでしたか?

意気込みをもってスタートしたものの、非常に苦しみました。セールスが目の前の具体的な成果を追いかけるのに対して、人事は「5年後、10年後の会社の未来」という抽象的な課題に取り組まなければいけず仕事の性質が大きく異なって感じられました。

例えば新卒育成方針を策定する際ですが、経営メンバーやマネージャーそれぞれに人や組織への哲学があり、方針を擦り合わせていくことが本当に大変でした。セールスとは違った仕事の進め方に苦しみました。

抽象的な意見を取りまとめるために自分自身がリーダーシップを発揮して仕事を進めなければいけなかったのですが、その姿勢も力も及ばず、今思えば誰かの鶴の一言で物事が決まることを受け身で待ってしまっていたように思います。

そのような自分の無様さを自分自身が受け留められず、一度仕事から離れることにもなりました。

人と組織が変われば事業が変わる

-- ここまでの話を伺うと人事として非常に苦戦されたご様子ですが、DeNAでの人事としての転換点についてお伺いしたいです。

250名規模の子会社へ出向した経験が転換点の1つだったと思います。人事のチーム状態がとても荒んでしまっており、その立て直しのために出向しました。率直に言って、人事組織がボトルネックになって経営・事業推進に支障がある状況でした。採用マネージャーとして入ったのですが、私が入るチームは組織サーベイの点数が突き抜けて低く、エクセルの中でそのチームだけ最低スコア水準を示す真っ赤に染まったシートを今でも覚えています。

-- そこで徳田さんはどのようなことをされたのでしょうか?

とても慎重な姿勢で組織に入っていったのですが、チームメンバーひとりひとりと話すとみんな人柄が良く、組織コンディションが悪いことがとても意外に感じられました。

ただ、各々が仕事で大事にしている基準やスタンスがバラバラで、一緒に働くとお互いに高いストレスが生じ、それに伴う不安や不満が裏で蔓延するような状況でした。

そのため、とにかく仕事の基準とスタンスを示し続けました。

物事を曖昧にせずにYes・Noをはっきりしていったので、1on1では泣かれてしまったり、裏で陰口を言われていることも耳にしました。

私自身それほど心が頑丈な性質ではないので、異動を後悔したり思い悩むこともあったのですが、せめて私がいなかった世界といた世界が少しは違っていて、より良くなったと思ってもらえるようにと努力しました。

しばらくするうちにチーム状態も良くなって組織サーベイスコアも社内トップにまで向上しましたし、バラバラだったバックオフィス機能を統合してコーポレート部を新設してバックオフィス全てのマネジメントを担うようになりました。

人事を含むコーポレートアクションが整合するようになって、全社の戦略策定・実行のPDCAサイクルを定めてディレクションするなど、ようやく事業運営や経営に対しても足を引っ張るのではなくて寄与していけるようになっていきました。代表と二人三脚で、本当に大小様々な課題にひたむきに取り組んでいたことが鮮明に思い出されます。

-- 人事という立場だからこそできたことですね。

そうですね。コーポレート部門が事業を強力に支えられるようになったのも、元を辿れば数人のチームの変化がきっかけでしたし、そのチームの変化は一人ひとりのメンバーとの刺し違えるほどの覚悟での対話から生まれたものでした。「人と組織が変われば事業が変わる」ということをリアリティをもって知ることができた経験でした。

DeNAからナレッジワークへ。スタートアップへの転職を検討するようになったきっかけ

-- DeNAからスタートアップへの転職を検討するようになったきっかけについてお伺いしたいです。

子会社への出向を終えて、DeNAに戻ったタイミングで転職を検討するようになりました。

DeNAで様々な事業に関わることができたことは楽しかったのですが、一方で複数事業がある分、様々な思惑を考慮して調整するような玄人が好むような仕事も多く感じられました。

ですが、私のそのときのキャリアのフェーズにおいては、「ワンミッション、ワンチーム」というシンプルな構造のところで思いっきりコミットしたい思いが強くなってきており、スタートアップでのチャレンジを志すようになりました。

-- その中でナレッジワークを選ばれた背景をお伺いしたいです。

ナレッジワークの「”労働は苦役なり”という人類数千年の固定観念を打破する」という想い、「できる喜びが巡る日々を届ける」というミッションへの共感に尽きます。

私は「苦しさを乗り越えた先にだけ成功がある」という価値観を是としたくないんです。私自身もそうですし、多くの仲間が苦しさに耐えられずに辛い思いをしている場面も数多く見てきました。

仕事は人の生死にさえも関わるものだと思っているので、みんなが失敗せずに、あるいは失敗さえも楽しんで幸せに仕事をしている状態が一番いい。だからこそ、先人が培ったメソッドや学びを基に、今できないことを明日はできるようにしていく「イネーブルメント」という言葉がとても好きです。「昨日できなかったことが今日できた喜び」や「今日できなかったことが明日できるかもしれない期待感」によって働く体験が満たされればと心から願っています。

ナレッジワークというスタートアップとDeNAというメガベンチャーの違い

-- DeNAというメガベンチャーからナレッジワークというスタートアップへ転職されてみて感じた違いを教えていただきたいです。

一番違いを感じるのは「意思決定のスピード」です。大きな組織では例えば社長、部長、リーダーといったようにレポートラインにグラデーションが存在します。しかし、スタートアップは極論、CEOも含めて一堂に介してその場であらゆる意思決定が目まぐるしくなされています。DeNAも極めてスピード感がある会社組織でしたが、組織構造上、ナレッジワークでは次元の違うスピードで物事が判断・推進されていると感じます。

-- ナレッジワークならではの具体的な事例ベースでお伺いしたいです。

人事の例でいうと、アジャイルな人事制度設計とそのスピードはナレッジワークの人事の特徴の1つかもしれません。ナレッジワークでは1人の素晴らしいタレントを採用するために、その方のためだけに特別なカスタマイズをするのではなく、会社全体の制度をSaaSのようにアジャイルに全体最適した制度に変えていく、ということがあります。

ただ、スピードが異次元です。採用オファーで希望の人材を獲得できないとなったら、多方面への影響も考慮して全社合意をきちんと踏みながら、1週間で制度を変更・新設してからその方にオファーすることもあります。本当に毎月、人事制度をアップデートしているような時期もありました。

ナレッジワークは「組織はみんなで作る作品である」という考えの元で民主的な意思決定フローやガバナンスにも極めて強いこだわりがあるため、大きな企業同等に精緻な設計や合意形成をしながら物事を進めているにも関わらず、強く速い意思決定がなされています。

-- 意思決定スピードに戸惑う場面もあるのではないでしょうか?

入社初日に麻野に「仕事が遅すぎる」と怒られました(笑)。前職までとは筋肉の使い方が違うため、大変だと感じる場面もありますがその分楽しさも感じます。なによりスピード感が変わったことにより、元々ナレッジワークに入社する前にHRとして自分自身が「40代なら到達できるかもしれない」とイメージしていた領域に既に手をかけているような感覚があります。

スタートアップの経営層を目指していく方へのメッセージ

-- 最後に改めて、徳田さんがナレッジワークを選ばれた軸を教えていただきたいです。

フォースタートアップスのヒューマンキャピタリストからナレッジワークに決める前に「何が意思決定の決め手となるか」と聞かれ、私の口から出たのが「より遠くに行きたい」という言葉でした。

本当に偉大なことを成し遂げる組織って「自分だけでは到達できない」というチャレンジを望む人たちの掛け算で生まれていると思うんです。たしかに、私に対して「あなたなら事業や組織を牽引できます」と身の丈以上に裁量のあるポジションを用意してくれる会社であれば、すぐに船のオールの担い手として自己効力感は得られるかもしれない。

ただ、私自身は自分のことをまだまだ発展途上のビジネスパーソンだと思っています。そのため、私程度がすぐに大きな裁量を持っても、みんながあっと驚くような景色はきっとまだ見せられない。それは、私自身がありたい姿ではきっとない。

手前味噌ながら、CEOの麻野は世間で知られている以上に、類稀な能力と哲学を持っているリーダーだと思います。これほどのレベルのリーダーと私は出会ったことはありませんでした。そして、経営や事業を牽引するリーダー、メンバー達も奇跡的な水準の人材が揃っていて、自分が彼らを引っ張ってやるなんて口が裂けても言えません。

ただ、自分の手が届かないと思えるほどの大義とチームを持っているナレッジワークだからこそ、人生を賭けるに足る挑戦をして、ほとんどの人が見たことがないような遠くの景色を見に行けると思い、ナレッジワークに入社しました。

-- ナレッジワークで麻野さんという経営者と間近で働き、いま執行役員に就任されて感じたことをお伺いしたいです。

最近、CEOの麻野が語っていてとても共感したのは「経営とは、突き詰めれば事業・行動を通じて世の中の人々や今隣にいる仲間を幸せにすることでしかない。経営者になりたいと自分のことばかり気にしている間はその人は経営者ではない。」という言葉です。

私も、ふと自分のキャリアの先が不安になったり、自身の立場を守りたくなるような弱さがあります。ただ、できる限りそういう自分を律して、会社を通じて少しでも社会に貢献したい、仲間たちに幸せになってほしい、自分が好きな組織を他の人にも好きになってほしい、ということに集中してきました。

それが結果的に経営の姿勢を養ったり、その役割に近づけたりしてくれているのだと思います。

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EVANGE - Director : Kana Hayashi / Creative Director : Munechika Ishibashi / Interviewer : Kana Hayashi / Writer : Kozue Nakamura / Editor:Akinori Tachibana / Assistant Director : Makiha Orii / Photographer : Shihoko Nakaoka

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