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ヨーロッパ的なるもの:小話4 工夫、工夫で太陽光発電:オランダ

【工夫、工夫で太陽光発電:オランダ】
 このタイトルをみて、ニヤッとするのはオランダを知っている人でしょう。オランダの一般的イメージは、チューリップとそれにふさわしい明るさかもしれません。ところがオランダは天気が悪い。特に秋から冬はしょっちゅう雨の土地という印象があります。年間の雨が降る日数は、ベルリン163日、ロンドン167日、パリ170日に対し、アムステルダム185日と突出しています。

 ヨーロッパ、特に北ヨーロッパは環境意識が高く、地球温暖化対策として化石燃料からの発電を減らすために、再生可能エネルギーへの移行に熱心です。有名なのは、北海やバルチック海の広大な海域に広がる洋上風車でしょう。そんな中、オランダも2030年までに全発電量の70%を再生可能エネルギーにするという野心的な目標を持っています。その為には洋上や陸上の風車だけでは足らない。そこで太陽光発電に焦点が当たりました。

 ところがオランダは天気が悪いことに加えて、ミニ国家を除いて人口密度がヨーロッパ最大という問題もあります。住宅の屋根は利用できますが、太陽光パネルを並べるための広い敷地は手に入りにくい。ここでオランダ人の柔軟志向の出番です。オランダ人は非常に論理的なうえに、考え方が非常にフレキシブルです。前例、しがらみ、躊躇などの言葉は口にする価値も無いと思っていることでしょう。そのため創造的でイノベーティブな発想が噴出します。

 場所が無くても頭はある。まずはオランダ人の必需品である自転車の駐輪場の屋根。屋外駐車場の屋根も全面ソーラーパネルに。駅の屋根も屋内農場の屋根も活用。産業廃棄物を捨ててできた小山の斜面も使える。またオランダには無数の運河が張り巡らされ、農業や水位管理用のため池が無数にあり、国土の20%が水面と言われています。その水面も利用する。フローティング・ソーラー・パークです。水面が使えるなら道も。オランダ人と自転車は切っても切り離せません。街でも田舎でもどこに行くのも自転車。雨でも風でもお構いなし。全土に自転車道路が張り巡らされています。この自転車用道路の路面にも太陽光パネル。それならバスレーンや車の橋もとやってみたが、こっちはどうもすぐに壊れます。

 ともかく知恵を絞ってあれもこれもとやってみたら、2022年は全発電量の14%が太陽光発電となり、国民一人当たりの発電量ヨーロッパ1位の栄冠を獲得。気候の激変で、あり得ないほど暑い日が増えたヨーロッパ。その気候自身がオランダ人の先手により大きな成果をもたらすことでしょう。 

著書紹介:ヨーロッパこぼれ話


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