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マレーシアのボイコットの続き KFCは業務縮小

 昨年10月にイスラエルのマクドナルドがガザを侵攻するイスラエル兵士に対して無料でハンバーガーなどを配りました。これに怒ったイスラーム教徒らは世界各地で不買運動を展開していますが、マレーシアでもボイコットがかなり深刻化しています。

 マレーシアでの不買運動はマクドナルドに限らず、「米国のフランチャイズだから」という理由でKFC、スターバックス、ピザハットなども対象になっています。先にいくつか書いているので、こちらもご参照を。

 マレーシアのKFCを運営するQSR社は4月29日、国内の店舗約600店舗中108店舗を「暫定的に閉める」と発表しました。特に僕の住むクランタン州では最も多い21店舗を閉鎖。ここはイスラーム教徒が95%を占める州なので、かなり影響を受けています。

 先日、自宅近くのKFCに行きましたが、客はおらず。2階も食べるスペースはあるのですが、昨年以来あけていません。ときおり来る客は華人ばかりで、やはりイスラーム教徒はいないのです。
 
 この店舗はもともと24時間営業でしたが、今では半日程度しか開店しておらず。ドライブスルーでも賑わっていたお店ですが、車が来ることはほとんどなく、従業員をみているととても可愛そうになってきます。

 近くにあるスターバックスは6月末まで閉鎖すると貼り紙がされていました。こちらはおそらく閉店することになるでしょう。

 そもそもKFCもスタバもガザ侵攻とは全く関係ありません。確かにアメリカのフランチャイズではあるのですが、地元企業が運営し、社員もほとんどが地元のイスラーム教のマレー人です。

 108店舗を暫定的に閉めるKFCは社員の配置転換で何とか雇用を守りたい考えですが、さて、それがすんなりいくかどうか。この人たちは確かにガザの人道問題については同情を寄せるものの、直接的にはガザとは関係ありません。そんな中で仕事を失いかけている。これほどのとばっちりがあっていいのでしょうか。

 結局、退職せざるを得ないという人も出てくるでしょう。こういう人たちに対してボイコット団体はどう責任を取るのでしょうか。フランチャイズで働いている人に対して辞めろとでもいいたいのでしょうか。

 だったら別の雇用を働きかけるということも提案したらいいと思いますが、それはせずにただ抗議しているのみ。それは大変無責任な態度ではないでしょうか。

 特に仕事がないクランタン州ではいったん仕事を失うと次の仕事はなかなか見つかりません。そういったことを考えてのボイコットなのか。

 経済学者らはこのボイコットがかなり深刻になっていることを認め、国内経済に今後大きな影響をもたらすだろうと警告しています。

 実際、KFCの店舗閉鎖に始まり、影響を受けているスターバックスも一部の店舗閉鎖を始めています。マクドナルドもそうしており、この3つのフランチャイズだけでも数万人の雇用があるため、仮にマレーシアからこの3つが撤退ということになれば、それだけ雇用も失われるということになります。これは誰が責任を取るのでしょうか。

 ただ、完全撤退はおそらくないとみられます。マレーシアは多民族社会で、華人とインド人の購買力のほうがはるかに高い。

 そうなってくるとこの2つの民族の市場のみを対象とする方策も考えられなくはありません。店舗数はおそらく減らさざるを得ないでしょうが、華人が住む場所に店舗をどーんと構えておけば、その市場だけを狙えることも可能。マレー人がダメなら、華人インド人の市場があるというのがマレーシアなのです。

 また、おそらくボイコット団体の人たちは知らないのだと思いますが、マクドナルドやKFCといったフランチャイズは実はハンバーガーやチキンで儲けているわけではないのです。

 これは確かロバート・キヨサキさんの本に書いてありましたが、これらフランチャイズは飲食店ではありますが、同時に不動産業なのです。世界各地の不動産を買ってそこに店を展開し、地価が上がればそれを転売できる。

 そういった企業なんですが、ボイコットで立ち行かなくなった場合、不動産を売って儲けて次の不動産を買って、ということを繰り返していくだけ。こういった企業は店舗の場所をどこもいい場所に確保しています。ということは相当額で売れる、または貸し出せるということになる。

 確かに飲食の売上に影響するでしょうが、根本の不動産事業には実はあまり影響は受けていないと思うのです。ボイコットをすればするほど損をするのは地元の労働者なのです。

 さて、この落とし所を今後どうするのか。ガザ侵攻はまだ続きそうですが、アメリカ国内でさえも抗議運動が出ており、何らかの停戦がなされると期待したいですが、どうなるのか。それ次第でこのボイコットも続く可能性が大きい。と同時に反米主義がマレー人の間で浸透していくと今後も他にも影響していく可能性があります。

 しかし、ここまでボイコットが広がったことは、当のボイコット団体も予想外ではなかったのでしょうか。やはりイスラーム教徒のガザ問題に対するこれまでの鬱憤があったからなのでしょう。イスラエルが侵攻したときにはインスラグラムなどではかなり悲惨な映像が拡散され、これらがボイコットに大きく影響したと見ていいと思います。

 いずれにしても、米系フランチャイズはまだまだ試練が続きそうです。

(写真)誰もいないKFC 

 

 

 

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