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【映画感想文】デューン 砂の惑星 PART2

『ブレードランナー2049』や『メッセージ』などですっかりSF映画作家としては信頼を得た(と思われる)ドゥニ・ビルヌーブ監督ですが、数々の名監督(ホドロフスキーやデヴィッド・リンチですよ。)が挑んでは挫折してきた呪われた原作に挑戦(ビルヌーブ監督としては『ブレードランナー』に続いてですよね。誰もが躊躇する呪いに自ら手を出していくの。恐れ知らずのオカルト系ユーチューバーみたいな精神性の人です。)して、見事に続編制作までこぎつけた『デューン 砂の惑星 PART2』の感想です。

えーと、私事ではございますが、見事に映画公開時期と引っ越しの日程が重なってしまいバタバタしているうちにI MAX上映終了という状況になりまして(ちょっと早過ぎませんか。I MAXスクリーンの数に限りがあるのは分かりますが、I MAX上映する意味が全く分からない作品に譲るくらいなら。ねぇ。)。ことこの作品に関してはI MAXで観ないと本当に観たことにはならないとおっしゃる貴兄もいらっしゃることでしょうが、いやいやI MAXで観なくても全然面白かったですよ。ちなみにドルビーアトモスでもなかったですが、音も凄かったですね。この映画、画もそうですが、どちらかというと音の方が重要かなと思いました。低音が地響きの様に振動して、着ている服が揺れるどころか体感的には肌に風圧が当たってるくらいの衝撃があって。しかも、これが砂漠にサンドワームが現れるシーンとか、ハルコンネン達の従軍のシーンで流れるので、音の圧そのものがちょっとした映画上の演出になっているんです。4DXのエンタメ的演出とも違う、不快感のある圧の演出。これが凄い効果的だったんですよね。

で、もう既に観た人たちの中では、前作よりも面白いと評判ですが、通常三部作の真ん中って物語が途中から始まってそれが閉じないうちに終わるので、なんだか散漫な印象になるんですね。ただ、それを覆して面白くなってる三部作の真ん中というのもありまして。えーと、これは異論もあると思いますが、個人的にはシリーズ中でも一番好きな『スター・ウォーズ エピソード5 / 帝国の逆襲』。あとは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』三部作の真ん中、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』とか(続編という意味では『ターミネーター2』とか、『マッドマックス2』とか、『エイリアン2』とかあると思うんですけど、あくまでストーリーが前作からと次作へ繋がっているものということでこの2本を例にしました。最近だと『Xエックス』シリーズの続編『パール』がありましたが、これも『パール』は『Xエックス』の前日譚なので、ストーリーは繋がってないんですよね。傑作度では前作に及びませんが2でやりたい放題になったと言えば『死霊のはらわた』シリーズがそうですね。)。で、この2本は恐らく1と3を観なくても面白いんですよ。今回の『デューン PART2』もそういう映画になってると思うんです。

つまり、ストーリーは1と3を繋ぐ道筋をつけるくらいしかやるこもがなくて、あとはどれだけ遊べるかってことなんですけど。その作品の世界感と大義が共有出来てればOKといいますかね。例えば、『スター・ウォーズ』だったらタイトル通り宇宙での戦争なわけで。帝国軍という悪役と反乱軍という主人公側がいて、その設定の中でいろんな惑星に行ったり、トーントーンとかAT-ATみたいなワンダーな生き物とか乗り物が出て来るのが面白かったんですね。『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』にしても、PART1で過去というある意味リアルな世界にいったタイムマシーンで、今度は未来という未知の世界へ行く。そこで起こる荒唐無稽な出来事が面白かったわけです。つまり、作品の世界感が第一部で既に共有されているので、それを集約させなきゃいけないという縛りもない中で、荒唐無稽なことを説得力を持ってやれるのが三部作の真ん中だと思うんです。ただ、やり過ぎると『スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ』みたいに完全に世界観を逸脱するみたいなことになるわけです。

で、正しく今回の『デューン PART2』もそういう面白さが満載で。その荒唐無稽さと、ドゥニ・ビルヌーブ監督のSFとしてちゃんとしたい感が入り混じって、荒唐無稽なエンターテイメントでありながらアート映画的でもあり、実験映画的でもあるということになってると思うんです。PART1ではまだまだ沈鬱でシリアスな雰囲気が主体でしたけど、それが三部作の真ん中というとにかく盛り上げて次に繋ぐしかないっていう構成上の理由で思いの外エモーショナルな作品になってるんだと思うんです。前作では、ああ、ここから『スター・ウォーズ』が生まれたんだな…っていうくらいだったのが、今回は、あ、あれもこれもここが元になっていたんだ!っていう。その、全て(全てではないですけど。)のSF映画の始祖でありながら、それの最新型を見せられてるような。いま、SFの歴史を観ているんだっていう感慨があったんですよね(とりわけ今回は、虫使いとか、風の強い砂漠とか、昆虫型の飛行船とか『風の谷のナウシカ』への影響を強く感じました。そして、『スター・ウォーズ』も『風の谷のナウシカ』も政治の話だったんだよなって振り返りが出来たのも良かった。)。音と映像に圧倒されるっていう根源的な映画の見方が出来たのも良かったですし、そういうエモーショナルさに誘導されながら観てるので終盤のポールの演説にもグッと来ました。そして、やっぱりビルヌーブ監督、複雑な話をスムーズに見せるのむちゃくちゃ上手いなと思いました。前作、一回しか観てないんですけど、誰と誰が敵対してて、誰の上に誰がいて、この人はこういう能力持ってたみたいのが、そのエピソードが出てくるとちゃんと思い出せて、ぜんぜん混乱しないで観れたんです(これはシリーズ物としては一番いいところですよね。MCUとか、え、これ誰?ってこと多々あるんで。)。スター俳優が次から次に出て来るのもエンタメSF観てる感があって良かったですね。一瞬出て来たアニャとか。「おっ!」ってなった(アニャの登場によって俄然次作への期待が高まりましたね。)。


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