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結び

卒業した。

早かった?

ううん、決してそんなことはなくて。
でも、上手く言えないけど、もう戻ってこないものを思い返すたびに、わたしは必ず大事なことをこぼしてしまう。だから、ちょっと寂しい。

時々のぞく風呂敷の中身。
今日までずっと一緒に旅をしてきたはずの風呂敷。
全部包んで持ってきたはずなのに、一向に重くならない。
たまに立ち止まって覗いてみる。
目を凝らすと、入っていると思っていたものは全部見つけられる。
それなのに、旅をしてもしても、重くならない。
気づいてしまったら、すぐに、誤魔化すみたいに早歩きする。
早く重くなってくれたらいい。
風呂敷の軽さはわたしの心の密度に比例していた。

卒業。
最後だから、を決まり文句に、風呂敷をざっと開いていろいろ並べてみた。
それは懐かしいね、こんなこともあったね、今までありがとう、また会う日まで。
そう言って、今日の思い出と一緒に詰め直した。
学校を出る直前、ぎゅっと強く口を結んだ。
わたしはここから出る。
今はいっぱいに詰まってる。重い。
重さに安心したかった。
今の心は。
あれ。

最後の下校、帰りの電車。
土曜の白昼に浮くスーツと沢山の紙袋、覗く卒業証書。
うとうとしながら、明日からのことを考える。

この出会いが、この結び目が、時間を経て綻んで、‘他人‘になりませんように。

そう祈るわたしが居た。


今日までの6年間、いろいろありすぎた。
良いことも、悪いことも。
沢山の人の愛と祈りとゆるしで過ごせた。誰かのそうでない部分で時に傷ついたこともあった。
わたしがわたしらしくあれた時間も、そうはならない時間もあった。
有意義すぎるくらい幸せな経験も、無意味で腐った経験もあった。

これは全部、繋がってるんだろうか。
結ばれて、いつか、一つの作品として、成すことができるだろうか。

大きな実でなくとも、それが幸せを感じるものであればいいと思った。
それが世を照らす光になるのなら、なお良い。

わたしも、わたし以外のみんなも、その行先に希望を見据えつづけて、いつかたどり着く先がそうであればいい。そうであってほしい。

そう信じてる。ずっと。
それが、わたしがここでもらった光だったから。
この光を持って、狼の世界だとしても、賢く素直に進み続ける。
しっかりと強く立って、苦難を耐える。
光は、守る。いつか結ばれる時のために。

これが、わたしの結びの言葉。

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