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個人的興味で新C99のコミケットアピールを2年前のC97と比べてみる

2021年12月30・31日に開催される「コミックマーケット99」は、2019年12月に開催された「コミックマーケット97」以降、2年ぶりの開催である。2020年5月の「コミックマーケット98」の中止、同12月は開催見送り、2021年5月はサークルを募集したが延期という紆余曲折を経て、ようやく手にする開催であり、コロナ以降国内最大級のイベント開催となる。

11月15日、サークル参加者向けの案内である「コミケットアピール」が公開された。これまでは当落通知に同封されていたが、申し込みサークルへのメールでURLが送付され、PDFでの公開となった。昨年12月の「エアコミケ2生放送」においても、担当者が大きく見直すという方針を述べていたが、今回それが実現したようで、判型や構成がこれまで(=コミケット97のコミケットアピール)から大きく変化した。

以下では、コミケットアピール(以下、アピール)のコミケット97(以下C97)版、コミケット99(以下C99A)版を比較しながら、その変更点について考察していきたい。あんまり時間がかかって旬を逃してもアレなので、ひとまずは本文のみの比較に留める。なお、C97アピールとC99Aアピールは下記からダウンロード可能である。

C97: https://www.comiket.co.jp/info-c/C97/C97appeal.html
C99A: https://www.comiket.co.jp/info-c/C99A/C99Aappeal.html

※ なお、下記の見解については公表情報に基づく個人的な分析であり、変更に抜け漏れがある可能性があるし、解釈が間違っているかもしれない。不明なことは準備会に問い合わせたり、当日スタッフさんに確認して下さい。

判型・レイアウト

かつて、晴海の国際見本市会場から、有明の東京ビッグサイトに会場を移してしばらくまで、コミケットアピールは四つ折りされたA2・両面印刷で送付されていた。底辺をカットすると8ページの折本となる判型だ。このアピールは縦書きで、いわゆる新聞のようなレイアウトであった。Webで公開されている『コミックマーケット30's ファイル』を見たけど、実物は見つからなかった。家を掘り起こせば見つかると思うけど、そこまではしないでおく。

その後、C97のようなA3・16ページのモノクロ本文と、二つ折りされたA3・両面2色刷りの会場・別紙案内図という構成になり、それが15年以上にわたり続いていたと思われる。今回のPDF送付という形が継続するかは不明だが、少なくともC99Aアピールは16:9 13ページのフルカラー本文と、A4(4:3) 6ページ2色の別紙案内図という構成となった。PDFのメリットを活かし、外部サイトへのリンクや、ページ間リンクなども埋め込まれており、情報が参照しやすくなったといえる。

フォントについては沼が深いので詳しい人に解説を委ねたいが、C97のビジネス文書っぽいフォントから、C99Aはヒラギノゴシック系に統一されており、全体的に少しポップな感じを醸し出している気がする。

表紙 (P1)

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まずは「コミックマーケット99 サークル参加のご案内」という一言が加わった。確かに「コミケットアピール99」だけだと、なにかのチラシかしら、と思われる気がしなくもない。同時に、アピールがどういう位置付けの文書で、サークルに何が期待されているかも右上に少し書かれている。また、関連リンクが付いていたり、ページ参照付きで今回の主な変更点が記載されているのも、PDFならではの利点を活用している気がする。

今回、あらゆる点が変更になっているとはいえ、大きく言えばここに記載されている7つのポイントなのだと思う。各ページを見ながら触れていこう。

ごあいさつ・開催概要 (P2)

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C97アピールと比較して、コンテンツとして大きな追加はないが、上の囲みメッセージがひときわ目を引く。それだけ伝えたいメッセージなのだろう。「ごあいさつ」で目をひくのは「1日あたり5万5千人の来場者」というところだろうか。コミックマーケット年表によるC97の1日あたり来場者数18-19万人からすると1/3以下となるが、2021年で国内最大級のイベントであることに疑う余地はないだろう。というか、逆にこれまでのコミケットの規模ってヤバイ、と感じる一節である。

また、ごあいさつの最後の段落はサークル参加申込書セットPDF P19以降の「コミケットマニュアル」にある「コミケットの理念」を想起させる内容。理念冒頭に記載された「コミックマーケットは同人誌を中心として すべての表現者を受け入れ、継続することを目的とした 表現の可能性を拡げる為の「場」である」ことにひもづいているように感じる。

また、ここに「従来の形に比べ制約も多く」という記載があることからは、理念冒頭の3つめの囲みにある「コミックマーケットは、法令と最小限にとどめた運営ルールに違反しない限り、一人でも多くの参加者を受け入れる事を目標とする」を踏まえて、苦渋の選択であることも伝わってくる。

新型コロナウイルス対策 (P3-4)

C97にはない完全新規項目なので比較を主意とする本稿では触れないこととしたい (解釈間違えていたらやだし)……が、Twitterとかで多く言及されていた変更点だけ取り上げてみる。

P3右側に目立つ太字で書かれている「ワクチン・検査パッケージの導入に伴い、サークル入口で新型コロナワクチンの接種証明(コピー可)あるいはPCR検査結果証明の確認を行います。いずれかの証明書を忘れないように持参し、提示して下さい。提示のない場合、サークル通行証を持っていても入場できません」には十分に注意したい。

P4左側の「頒布物は不特定多数が手に取る見本誌と実際の頒布物を分け、接触を最小限に留めて下さい。見本誌にはビニールカバーをかけて定期的に消毒して下さい」にも多くの人が言及していたが、DOUJIN JAPAN 2020の同人誌即売会の開催ガイドラインの通りなので、まあそうなのかなと。

同じくP4左側の「現金の取り扱いを最小化するため、可能なサークルはキャッシュレス決済の導入も検討して下さい」は、企業ブースがクレジットカードNGだった時代からしても隔世の感があるけど、こちらも上記ガイドライン記載の通り。

この項ラスト、P4左側の「コミケット前後の会食・打ち上げ・懇親会等は自粛し、自宅等からの直行直帰をお願いします」についても、ガイドライン制定の時期を考えるとやむを得ないのかと。もちろん、社会情勢がかなり変わってきているが、決めたらからにはやり切ることが大事なので、意識していきたいところである。

事前の準備 (P5)

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C97アピールの「1. 事前の申請・準備」に対応している。C97まで必要であった「参加登録カードの記入」への配置場所・サークル名の記入、署名・捺印に代わり、当日配布される「参加登録見本誌提出用封筒」に受付番号・配置場所・サークル名・見本誌数・成年向け頒布物有無を記入し、そこに見本誌を入れて提出するよう方式が変更された。C97参加登録カードでは、見本誌数は準備会記入欄の一部であるなど、細かい変化もある。

なお、前述のコミケットマニュアルでは、コミケットが見本誌を回収する理由を下記の通り説明している。

コミケットは 見本誌として回収した三百万点の作品を第1回から継続して保存しています。この貴重な資料を維持・拡充・公開していきます。なお現在、直前回の見本誌は米沢嘉博記念図書館で閲覧可能です。また、コミケットが協力する施設において、閲覧に供することがあります。

タイムテーブル (P6)

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C97アピールの「2. 設営日」「3. 当日 3.1 タイムテーブル」に対応している。設営日に関連する情報は、アピールから公式Webに移されている。公式Webの「設営日」のご案内はC99Aアピールのランディングページに掲載されている。

サークルが更衣室を利用するのにもチケットの購入が必要となり、入れ替え制となった。また、C97では9:00「会場内の通行制限開始」、9:30に「各地区の出入口閉鎖」となっているが、C99Aでは9:00が「東/西南地区間封鎖」となり、これが16:00まで継続するようだ。本日(11月16日)、「チケット販売について」が公開されたが、アーリー含む一般参加チケットは「東地区」「西南地区」に分かれての販売となり、原則として地区間移動はできないようである。但し「なお、一般参加者入場後の東地区と西南地区の移動については、今後及び当日の状況により可能となる場合があります」という記載もあるので、続報に注目したい。

当日の流れ (P7~P8)

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C97アピールの「3. 当日」に相当するが、かなり記述が簡素化されている。初参加の人が最低限知っておくべき情報に絞った印象を受ける。

大きく変化があったのがP7左上の「サークル入場」である。ここでも「ワクチン・検査パッケージ」の提示について繰り返し述べられており、絶対に忘れるなよという強い意志を感じる。サークル入口では通常の通行証回収だけでなく、書類確認および検温が行われるようだ。

また、サークル通行証の裏面に① 氏名、② 電話番号、③ メールアドレスの記入が必須とのことである。DOUJIN JAPAN 2020が作成した同人誌即売会の開催ガイドラインにある「同人誌即売会の会場内に一定時間以上滞留する可能性のある者」の連絡先把握のためと思われる。

「サークル受付・見本誌確認」については、C97までのようにスタッフがスペースを巡回して参加登録カード・見本誌を回収し、頒布物を確認するのではなく、前述の封筒に見本誌を入れて入れてサークル窓口のポストに提出する形式になるとのこと。

「更衣室・コスプレ」では、サークル参加者がコスプレする場合でも、事前のチケット購入が必要であることについて述べられている。C97はサークル参加者であれば7:30~9:00に更衣室を利用できたが、C99Aではチケット購入の上で時間指定となるので、注意が必要だ。

「落とし物について」では、C97と比べて感染リスクが高い拾得物については受け取り不可となる旨が追記されている。

※ 「当日の窓口一覧」は東地区ちゃんがついに帰ってきたことにより、変更点だらけなので、本稿における新旧比較は省略する。

諸注意 (P9)

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C97アピールの「4. 諸注意・お願い」の諸注意部分から大きな変化はないと思われる(あったら教えて下さい)。

お願い・関連法令の情報 (P10)

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C97アピールの「4. 諸注意・お願い」のお願い部分がこちらに切り出され「6. 重要通達事項」と併せて1ページにまとめられている。お願い部分について、C97アピールの「同人誌についてのお願い」「撮影・取材についてのお願い」が、C99Aアピールにほぼそのまま引き継がれている。

「準備会記録班からのお願い」は撮影・取材の項に、「子供連れの方へのお願い」は諸注意の「その他注意事項」、「災害時のお願い」は諸注意の「防災指示事項」のところに統合されている。実際、参加者の年齢層が上がっていく中で子供連れも増えており、さすがにC97アピールまで存在した「コミケットは子供にとってあまり安全な場所ではありません」という記述は見直されたようだ。

また、ある意味コミケットらしい記述であった「非常時ゆえのお願い」は削除された。列挙されている過去の脅迫行為、最後の事件 (『黒子のバスケ』脅迫) からも9年が過ぎており、最近のアフターレポートを見る限りではこうした脅迫についての記述はなく、平和が戻ってきたということなのだろうか。そもそも、現在は新型コロナによる別の「非常時」だし。

C97まで「重要通達事項」ということでまとめられていた「ワイセツ図画」「児童ポルノ」「青少年条例」「著作権」「税金」について、C99Aでは「性表現」「著作権」の2項目に簡略化され、詳細情報がC98アピールへのリンクとなっている。表現活動を行うにあたって重要な情報ではあるが、限られた紙面で伝えきるのは難しいと判断したのかもしれない。

搬入・搬出 (P11-12)

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宅配便搬入の指定業者がC97の「ゆうパック」から、C99Aでは「佐川急便」に変更となっている。なお、アピール発行後に中止となったC98アピールの時点で既に指定業者は佐川急便となっており、昨年からの既定路線であったことが読み取れる。

また、搬入・搬出にかかわる手数料も変更されている。C97の早朝搬入・仕分手数料は500円、C98の事前搬入・仕分手数料は990円、C99Aでは726円と少しずつ変わっている。一方、C97ではなかった搬出の手数料が、C98では278円、C99Aでは440円となっている。搬入・搬出で手数料がバランスされた形のようだ。

それ以外にも、大量搬入の申請方法がメールフォームに変更となったり、サークル入場時間帯や搬入時間帯のチラシ配布が不可となったりと、いくつかの変更があるので確認しておきたい。

その他のお知らせ (P13)

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冊子/DVD-ROMカタログの発行なしというのは、なかなか衝撃的な変更点だが、事前にチケットを販売する形式の場合、任意購入のカタログの印刷部数が読めないので、やむを得ない判断だろうか。コロナ禍における多くの即売会がカタログを発行しない形式を取っており、今後のイベントの開催制限緩和に伴い、どうなっていくのかを見守りたい。

また、拡大準備集会(一般参加者やサークル参加者が一部に参加できるスタッフ集会の拡大版)についても、事前申込の抽選制となっている。

最後に

というわけで、かなり変更点の多いC99Aアピール、サークル参加する人はもちろん全体を通読するべきだし、参加を計画する一般参加者にとっても、諸注意等の公開前に有用な情報であると思われる。

2年ぶりにあの「ハレの日」が帰ってくる。一般参加抽選の壁を乗り越えて再会したい。健闘を祈る。

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