見出し画像

本を出すのは楽しい、という話

きみたちは本を出したことはあるか? わたしはある。

自分の作品が物理的に形になると、QOLが上がる。
わたしが本を出す時のおおまかな流れを書いていくから、きみたちも本を出してどんどんQOLを上げてくれ。
ちなみに、紙が折ってあったらそれは立派な本です。これはマジ。


解説! 本はこうやって出す!

0.〆切をつくる

大前提として、わたしはケツがないと原稿ができない。いやできるんだけど、ダラダラ書いてしまって一向に完成しない。

なのでまず、同人誌即売会にサークル参加することを決めます。
となれば、新刊を出したくなりますね。
すぐに何箇所かの印刷所で見積もりを出します。ここでは欲張ってカバーに特殊なPP加工をつけたり箔押しを入れたり遊び紙に特殊紙をつけたりしておきます。

特殊加工は納期が長くなる(=〆切が早くなる)ので、後からやろうとすると、死にます。絶対に見積もりの時点でつけておいたほうがいいです。

そうすると、早割からの料金と〆切が出ます。
ついでに極道入稿の料金と〆切も出ることがありますが、あてにしてしまうので見なかったことにします。

それらの見積もりの中で、一番料金が安く済む早割を〆切に設定したら、あとは走るだけ!

1.作品を完成させる

優勝!!!!!!!!!!
正味これが一番難しい。
優勝!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

2.組版をつくる

わたしは小説を文庫本にする者なので、AdobeのDTPソフトであるInDesignに本文を流し込んで作っています。

文庫サイズでファイルを作成、レイアウトグリッドで1ページあたりの行数や1行あたりの文字数を指定します。
天地ノド小口の余白もここで決めます。ノドは本を綴じる側になるので、ノドの余白は多いほうがいいです。
そもそも余白って、モニタで見たら「ちょっと多すぎ?」って感じるくらいが、紙だとちょうどいい。大胆に取っていこう。
あるいは、好きな本の文字数と行数を数え、余白を定規で計ってもいいと思う。実際やったことがある。

そしてフォントを選びます。
小説なので明朝体で、その中でも、ひらがな/カタカナが漢字よりも小ぶりになっているフォントが読みやすく感じます。
フリーフォントなら源暎こぶり明朝がかなりおすすめ。縦書きで読みやすいように作られてる。
わたしもこのフォントで250ページくらいの本を出したことがあるよ。

さて、レイアウトグリッドの設定ができたら、とりあえず巻頭の方の事務ページを作ります。主に中表紙や目次など。
中身はまだ詰めずに、ページだけ確保しておく感じ。

本文を始められるページまで来たら、マスターページってやつを追加します。マスターページにページ番号や章タイトルなんかを入れると、そのマスターページを適用したページ全てにページ番号や章タイトルが表示されます。

たとえばこれが一章のマスターページだとしたら
こっちは二章のマスターページ

次の章や話に行く時にマスターページを変えておくと、たとえば短編集なら、ぱっと開いたページの話がなんなのか一発でわかるというわけです。
たのしいね。

3.本文を調整する

これはわたしの好みでしかないのだけど、見開きで文が区切れるように、したい!
きっかけは京極夏彦!
京極夏彦はこれをやるためにInDesign直打ちで原稿を書いているらしい! 同じ話でもレイアウトが変われば直しているらしい! すげえ!

おれもやる!!

というわけで、改行の位置をこねくり回したり文を足したり削ったりして、整えていきます。
わたしはこの作業が一番生を実感するかも。

見開きの終わりに文の区切りが来るようにこねくり回して整えたやつ


4.全体のページ数を調整する

本文を全部調整し終わったら、巻末の方の事務ページを作りつつ、全体のページ数を調整します。目次も確定するのできっちり作ります。

巻末の事務ページは主に初出を載せるところと奥付。調整次第であとがきも。
事務ページは概ね5ページ前後に収まると良いとされているらしいけど、いっつも10ページくらい使っちゃう。
なぜなら全体のページ数を4の倍数に調整したいから!

一応、無線綴じ本ならページ数は偶数になっていれば大抵は大丈夫です。印刷所によっては、無線綴じ本でも4の倍数や8の倍数に限られていることがあるので、あらかじめ確認しておくといいよ!

また、奥付に記載すべき内容はある程度ルールが決まっていて、特に連絡先はSNSのアカウントではなくメールアドレス等が適切とされています。ちょっと気をつけたほうがいい点です。
詳しくはこういうところを見てみてね。

5.紙を選ぶ

ページ数が決まったら、本文用紙を選びます。
小説本なので淡クリームキンマリ72.5kg!
割と脳死でこれ系の用紙選ぶようになっているけれど、本文用紙にもいろいろあります。いろんな紙が使えます。
本の種類、紙の厚さや色味などを加味して、その本のバイブスが一番上がる紙を選びましょう。黒い用紙に白や金のインクで印刷できるところもあるよ。

ちなみに、淡クリームキンマリ72.5kgを脳死で選びがちな理由としては、

  • 紙が薄いのでページが捲りやすい

  • その名の通り淡いクリーム色なので文字を読むのに目が疲れにくい

あたりが挙げられます。
ページ数が多くなりやすく、文字をたくさん読むことになる小説本にかなり向いている用紙というわけです。

6.表紙やカバーを作る

ページ数と本文用紙が決まると、自動的に本の厚さが決まります。そうすると、おのずと表紙やカバーのサイズも決まります!

表紙には表1〜表4まであります。わたしたちが普段表紙と呼んでいるのが表1、裏表紙と呼んでいるのが表4です。
表1の裏面が表2、表4の裏面が表3という作りになっています。

この表1と表4の間には背表紙があります。背表紙のサイズは本の厚さに左右されますね。
表1、背表紙、表4をひとつのデータで作る必要があるので、厚さが決まらないと表紙のサイズも決まらないのです。カバーも然り。

表紙やカバーはだいたいAdobeのIllustratorで作っています。
この辺は、ほとんどの印刷所がテンプレートを用意しているので、それを活用しましょう。いろんな拡張子に対応してる手厚いところもあるよ。
ヌリタシが最初からついていたり、あらかじめガイド線を引いておいてくれたりするので大変便利です。いやマジで。
白紙に自分で線を引いて背幅の位置を弾き出すの、ズレたら終わりなのでやらずに済むならそれに越したことはない。

表紙やカバーに使う紙も当然いろいろ選べます。
なんならここの紙選びが本番まである。この世には特殊紙という大変素晴らしいものがあり、表紙やカバーはそれらを使う絶好のチャンスなのです。
「この紙使いてぇ〜」という理由で本を作ることも、ある。

PP加工や箔押しなどの特殊加工も、表紙・カバーが対象になります。

ただ、特殊紙か加工のどっちかしか選べないことが多い! 特殊紙はPP加工不可なものが多いから! あと色や凹凸のある特殊紙だとフルカラー印刷はあんまり向かない気がする!

なのでわたしは、表紙はモノクロで特殊紙を使い、カバーをフルカラーにしてPP加工をかけることにしました。いえーい。

そうやってできたのが直近の新刊です。
カバーには一番好きなトワイライトPPをかけてあります。

トワイライトPPをかけた新刊。最高に輝いてる。

あ、カバーを作るのはわたしの好みなので、絶対にカバーが要るなんてことはないよ! 安心してね!!

7.入稿

優勝!!!!!!!!!!
まずは見積もりをもとに、紙やページ数や遊び紙や加工の有無を入れて、注文します。
そうしたらその注文に対する入稿ができるようになるので、指定されたデータ形式で入稿します。
優勝!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

もしデータに不備があった場合は、ちゃんと印刷所から連絡が入ります。納期が伸びちゃうこともあるので、すぐに対応しようね。

ビッグサイトやインテックスでやるような大きいイベントなら、直接イベント会場に本を納品してくれたり、さらにはサークルのスペースに納品してくれることもあります。会場直搬とかイベント直搬と呼ばれるものです。
これを使って入稿したならもう、イベント当日を待つだけ。
やったね!


わたしが本を出す時のおおまかな流れは以上です。
とはいえ最初に言った通り、紙が折ってあったらそれは立派な本なので、気軽に作ってほしいな〜と思っています。
紙を折ったりホチキスで留めたりするだけじゃ満足できない体になったら、わたしと一緒に印刷所ユーザになろう。待ってるよ。

それでは、最後に好きな印刷所を発表して終わります。


好きな印刷所発表ドラゴン

プリントオン

テンプレートやマニュアル周りがかなり手厚い。対応イベント多数。
早割やフェアがいっぱい。特殊紙・特殊加工もいっぱい。なんでもできる。
豪華な装丁の本を作れる印刷所といえば、という感じ。
わたしが初めて本を作ったのはここ。


STAR BOOKS

1冊から作れる。〆切も一日ごとに設定できる。
テンプレート・マニュアル周りも手厚い。対応イベント多数。
箔押しに強いイメージがある。
わたしが一番分厚い本を作ったのはここ。


コミックモール

カバー付き文庫がありえん安さで作れる。神?
トワイライトPPを無料でかけられる。神?
対応イベントは少ないけど、特典がデカい。
ただ、システムがだいぶわかりにくいので初めての方にはおすすめしないかも。
わたしは最近ここばっかり使ってる。直近の新刊を作ったのもここ。たぶん次の新刊を作るのもここ。愛。


ちょ古っ都製本工房

やっっっっっっすい。
ひっくり返るほど安い。なのにしっかり本ができる。
1冊から作れる。
ただ、原稿サイズは教えてくれるけどテンプレートとかはないので、ここも初めての方にはおすすめしないかも。
カバーを別で作ってあった時、本体を刷ったのがここ。


グラフィック

名刺とかフライヤー、ポスターに強い。Illustratorから直接入稿できる。
なんと学割がある
見積もりや製品ページの説明がかなりわかりやすい。
わたしがイベント2日前とかいう終わってる日程で入稿したのに会場に本を届けてくれたのは、ここ。本当にありがとう。足を向けて寝られません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?