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第3回「商品・サービス開発プロジェクト」レポート

「これからの地域を支えるデザイン経営」を本気で学ぶ場所として、2023年にスタートした越前鯖江デザイン経営スクール。2023年11月11日(土)、12日(日)に第3回目の「商品・サービス開発プロジェクト」が開催されました。
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2023年9月に始まった当プロジェクト。3回目となる今回は、全4チームが2ヶ月かけてリサーチした内容を踏まえ、中間発表会を開催しました。また、11月11日(土)には第2回「これからの価値づくりセミナー」を同時開催。建築家の堀木俊さんに「冒険」というテーマで講演いただきました。


中間発表会の様子

プロジェクトの最終成果に向けた中間発表会では、ものづくり事業者4チームが、講師や一般公開で来られた皆さんを前に発表しました。

【参加事業者】
・曽明漆器店(漆器問屋)
・沢正眼鏡(眼鏡フレームメーカー)
・小柳箪笥店(箪笥メーカー)
・越前セラミカ(瓦メーカー)

【講師紹介】
 ・時岡 壮太|株式会社デキタ代表
 ・森 一貴|シェアハウス家主 
 ・内田 裕規|株式會社ヒュージ 代表 
 ・新山 直広|合同会社TSUGI代表/一般社団法人SOE副理事

曽明漆器店チーム

曽明漆器店4代目の曽明晴奈さん

「NEW問屋のあり方を模索する」というテーマを掲げた曽明漆器店チーム。曽明漆器店は商品企画から卸・販売までを行う、創業100年の漆器問屋です。

越前漆器の産地で今後担い手となる職人が不足するのではという危機感から、問屋としての新しいあり方を提案しました。その名は、つくり、つたえ、つなぐ「NEW問屋プロジェクト」です。

「NEW問屋」とは、産地の先頭に立ち、産地と産地外を積極的につなぐ問屋のこと。これまでのように、商品を小売店におろしたり自社ショップで販売したりするだけでなく、産地や商品の魅力を発信し、産地の将来についても考える存在を目指したいのだそう。NEW問屋はまさに産地のディレクターとも言えます。

チームディスカッションの様子

さらに、具体的なアクションとして、期間ごとに3つの施策を考案しました。
短期:在庫の見える化、情報共有のための社内ミーティング実施
中期:デッドストックを活かした新たな販売機会の創出
長期:自社商品「Kyutarou Blue」や新商品を通して、産地と産地外をつなぐ

プロジェクトの2ヶ月間を通して、会社のビジョンが明確になった曽明漆器店。今後の動きが楽しみです。

講師陣による講評にも注目が集まります。

沢正眼鏡チーム

続いては、和気あいあいとした雰囲気の沢正眼鏡チームの発表です。

沢正眼鏡は鯖江市にある創業約70年の眼鏡メーカー。現在は、プラスチックフレームのOEMが事業内容の100%を占めているのだそう。

沢正眼鏡を取り巻く地域と産業の課題をチームで洗い出したところ、
地域:居住人口の減少、移住のハードルの高さ(住める状態の住居が少ない)
産業:給与水準の低さ、製造工程の複雑さ、眼鏡産業への入口の狭さ
という課題が見つかりました。

そこで、地域にある資源を活用し、関係人口でとどまっていた人たちが移住して働きやすい仕組みづくりができないかと考えました。具体的なアクションは、
・空き家を活かした住宅提供
・自社ブランドの開発
・作業のマニュアル化
・事業のパッケージ化
の4点。地域と産業が一体となり、次世代の担い手を生み出すサイクルを目指します。

沢正眼鏡の澤田渉平専務

講師陣からは、「ここまで地域のために取り組める経営者は少ない。アクションの内容が多岐にわたるので、最初の計画にどれだけ落とし込めるかが重要」などの意見が。最終発表までにディスカッションや実践を通し、沢正眼鏡が産地の課題を解決するロールモデルになることを目指します。

小柳箪笥店チーム

続いての発表は、「百年箪笥研究所の開設を目指す」というテーマを掲げた小柳箪笥店チーム。百年箪笥研究所とは、100年間暮らしを見守り続ける越前箪笥のように、さまざまなスキルを持った有志と100年後の箪笥のあり方を共に考え、箪笥の技術と文化を未来に引き継ぐための研究所です。

「箪笥職人の高齢化や箪笥の需要が減少しており、30年後には越前箪笥の伝承が途絶える可能性があります」と危機感を募らせる小柳箪笥店チーム。そこで、百年箪笥研究所を立ち上げることで、小柳箪笥店の圧倒的な技術力に、デザイナーやマーケターなどのクリエイティブな発想がかけ合わさり、箪笥の魅力と価値が最大化できるのではないかと考えました。

小柳箪笥店5代目の小柳勇貴さん

研究所長には5代目の勇貴さんが就任し、4代目の小柳範和さんが営む小柳箪笥店と協業することで、越前箪笥の魅力と価値を世界に発信します。

講師陣からは「小柳さんの作る箪笥には十分な技術力とニーズがあるので、ブランディングを強化すれば売上も伸びるはず」「研究所が取り組む具体的なアクションや資金調達の仕組みを検討してみては」「人材が集まるには、越前箪笥の伝統を守りたいと思わせる理由が必要」といったやさしくも厳しい意見が出ました。残りの期間で、百年箪笥研究所の具体的活動や、箪笥の技術を後世に残す意味を検討します。

越前セラミカチーム

建築士やルームスタイリスト、エンジニア、デザインディレクターといったスキルを持ったメンバーが揃う越前セラミカチーム。「越前瓦の持続可能な未来をつくる」というテーマを掲げました。

銀鼠の美しい色合いと抜群の強度を兼ね備えた越前瓦は、福井の風景を象徴する存在です。しかし、近年では瓦屋根の住宅が減少し、越前瓦の需要も縮小傾向に。これまで越前瓦の製造・販売・施工を通して、瓦屋根の景色を守ってきた越前セラミカは、「越前瓦の新しい景色をつくる」ゴールに向けて、チームメンバーと取り組みを模索しました。

現地リサーチやディスカッションにより見つかった課題は、以下の2点。
・越前瓦の認知度の低さ
・窯が稼働できない期間に、職人と工場の余剰リソースが発生する

そこで、「越前瓦×⚪︎⚪︎」の商品開発を提案。越前セラミカのタイルの製造技術を活かし、床、壁、外装、プロダクトにも使えるオリジナルタイルを作れないかと考えたのです。建材フェアやライフスタイル系インフルエンサーとコラボすることで販路を開拓し、越前瓦を使った商品が全国に知れ渡ることを期待します。

越前セラミカの石山享史社長

講師陣からは、「資本主義的な文脈で売るのか、ストーリー性で売るのか、方向性を考えてみては」「耐久性を活かして外で使える製品づくりをしてみては」「越前瓦だけでなく、日本の瓦の風景を守るプロジェクトとして展開するといいかもしれない」といった意見が出ました。

最終発表までに、越前瓦の強みを裏付けるデータのリサーチ、使いたくなる商品名やキャッチコピーの検討を行い、プロジェクトをまとめ上げます。

***
中間発表会が終了し、最終発表に向けた後半戦がスタートします。次回のレポートもお楽しみに!

(文:ふるかわ ともか)

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