見出し画像

【パンの科学】科学が明かすふわふわ食感の秘密

みなさんはパンが好きですか?

私はご飯よりもパン派というぐらいパンが好きです。

そんな多くの人に愛されているパンですが、そのおいしさについて真面目に考えたことがある人は少ないのではないでしょうか。

なぜそのパンは美味しいのか?

その秘密は科学に隠されているんです。

今回はそんなパンの科学について見ていきたいと思います。

パンを科学的に見てみる

いきなりパンについて小難しい科学の話をし始めるといったい何のことやら…と感じる方も多いと思います。

まずはさわりとして、パンを科学的に見てみるとどんなことがわかるのか?について書いてみましょう。

みなさんもご存じの通りパンは小麦粉を主成分とした食べ物です。しかし、同じように小麦を使ってもうどんなどの麺類やお好み焼きのような粉ものとは異なりますよね。

パンと麺類や粉ものとの大きな違いと言えば、イースト菌(パン酵母)を使った発酵でしょう。

このイースト菌がパン生地内の糖分を分解することで炭酸ガスが発生し、その気泡がふわふわ食感を作ります。

それでは、ふわふわ食感があればすべてパンなのかと言われれば、それもまた違いますよね。

ひとくくりにパンといっても、食パンとフランスパン、ベーグルは全然違った食感を持ちます。ましてや、同じ食パンであってもパン屋さんによっては全然異なる食感を味わえます。

それでは、このようなパンのふわふわ感の違いはどこからやってくるのでしょうか?

パンにまつわる科学を解き明かしていくとこんな謎が明らかになってくるんです。

食感を決めるパンの構造

パンの構造というとなにやら難しい響きですが、簡単に言えばふわふわした白いところと硬めの耳の違いのことです。

これを専門用語でいうと内部構造を表すクラムと耳である表面構造を表すクラストという2つの構造に分けられます。

表面がクラスト、内部がクラム

特にふわふわやもちもちの秘密は内部のクラム構造が関与しています。クラムを支えるのは小麦に含まれるグルテンです。名前は聞いたことがあるかもしれませんね。

グルテン自体非常に奥が深いので今回は触れませんが、このグルテン骨格と気泡の関係性というのが私たちが感じるパンの食感に直結することになります。今回はそんなグルテン骨格と気泡の構造がどのように食感に影響を与えるのかを紹介していきます。

まず、パンの食感に重要なポイントとして、気泡膜と呼ばれる気泡を包むグルテンの膜の厚さが挙げられます。この気泡膜が薄いと軽くて柔らかい食感になり、逆に気泡膜が厚いと嚙み応えのある食感になるようです。

つまり、製パンメーカーやパン職人はこの気泡膜の厚さを適度に制御することでおいしさを引き出しているといっても過言ではありませんね。

パンの内部の気泡を生み出しているのは発酵による炭酸ガスの膨張です。パン作りにおいてはさまざまな工程が複雑に関係しあって、内部のクラム構造を作り上げているわけですが、その1つには発酵による膨張があるというわけですね。

例えば、気泡の膨張度が高いと気泡膜は薄くなるため食感が軽くふわふわなり、逆に膨張度が低いとぎっしりと詰まったもっちり食感になるわけです。
わかりやすい例としてふわふわな食パンと噛み応えのあるフランスパンを比べると、食パンの方が気泡の膨張度が高く、フランスパンは膨張度が低いようです。

参考文献より引用

この理由の一つには原料の違いがあります。詳細はまた次回紹介したいと思いますが、簡単に言えば、発酵の使用する糖分に差があります。食パンは砂糖を加えて作りますが、フランスパンは一般的に砂糖を入れずに作ります。この砂糖の有無によりイースト菌の発酵度合いが変わり、食パンの方がよりガスを生み出すわけです。

また、食感の違いは気泡膜の厚さだけでなく気泡数の違いというのも重要だそうです。ストレート法という基本的な手法で作ったフランスパンと食パンを比べると気泡数がとても違うことがわかりますね。

食パンの方が気泡数が多く、気泡のサイズも膜厚も小さいことがわかります。この違いがまさに私たちの感じているパンの食感に影響しているのです。

ちなみにここで登場する中種法は一度に全部の原料を混ぜずに半分以上の原料から中種と呼ばれるパン生地を作ります。その後、残りの原料を混ぜ合わせて、本捏ねを行います。ストレート法に比べて手間がかかりますが、気泡が細かに入ることで、さらにふわっとした食感を実現することができるようです。

今回は触れませんでしたが、パンの耳に当たるクラスト構造もパリッとした食感に影響を与えます。クラスト(耳)は表面の炭化の度合いによって変わり、薄ければやわらかく、厚ければ固い食感になります。

フランスパンなどのクラストはパリッと感が大事ですし、ベーグルの表面の食感はまさにこのクラストが重要になってくると言われています。

最後に

今回は、パンの食感に違いについて科学的に紹介しました。グルテンと気泡が織りなす構造というとなんだか建築物のように感じますよね。

元物理学徒で材料屋だった私からすると、建築物や車などに使われる構造材料と呼ばれる微細構造を持った材料に見えてきます。この構造材料の分野でもやはり内部の空間構造と骨格構造の関係性が強度に影響を与えます。

パンの構造を見るとこの構造材料との類似性を感じてしまい、物理学的な視点から食感が考察できるのではないかなと感じました。

次回は、今回紹介しきれなかった食感のコントロールについて見ていきます。パン作りの複雑で奥深い世界を一緒に見ていきましょう。

参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/49/4/49_280/_pdf


この記事が参加している募集

最近の学び

物理がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?