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【1分で読めるミニ記事】5回対称っぽい結晶

ナノの世界には私たちの世界にはない奇妙な物質がたくさん存在します。

結晶の世界でも同様に、私たちの生きている世界では見かけることはできないけれど、ナノの世界にのみ存在する変わったものがあるんです。

今回はそんなナノの世界に潜む不思議な結晶について紹介していきたいと思います。

結晶と対称性

まずはじめに、結晶とは原子や分子が規則正しく並んだ物質の状態のことを指します。

そして、原子や分子の並び方には2回、3回、4回、6回対称しか存在しないことが知られています。

そう聞くとあまりよくわかりませんが、イラストにしてみるとわかりやすいかと思います。

三角形・四角形・六角形タイルでの平面敷き詰め

このように見てみると、平面を敷き詰められるのは正三角形、正方形、正六角形のみであるということですね。

五角形ではきれいに敷き詰めることはできない。

しかし世の中には結晶なのに5回対称っぽく見えるものが存在します。

5回対称

5回対称を持つものといえば、有名なのが準結晶と呼ばれるものです。

この5回対称はこの前ノーベル賞を取ったロジャー・ペンローズに代表されるペンローズタイルが有名です。

ペンローズタイル wikiより引用

このタイルを見るとわかるように五角形だけで、タイルが敷き詰められているわけではありません。このように五角形だけでは平面を敷き詰めることはできないけれど、きれいな対称性があるように見える構造をとる物質を準結晶と呼びます。

ところが、この準結晶とは別に5回対称っぽく見える構造がナノの世界では頻繁に見ることができるんです。

ナノの世界に現れる5回対称っぽいもの

先ほど述べたように、結晶はその定義からして5回対称になりえないという絶対的な条件があります。しかしながら、世の中には5回対称のように見える結晶が存在します。

5回対称があるように見える(引用元

タイトルでも5回対称っぽいと表記しているのは、本当は5回対称ではないってことなんですね。

それでは、どうして5回対称っぽく見えてしまうのでしょうか

これには原子レベルの並び方にポイントがあります。

通常、原子がきれいに並んだ場合、下の図のようになり、7.5°の隙間が空いてしまいます。

通常の結晶の場合


この隙間が空いてしまうことから、5回対称というのは実現できないわけですね。


ところが、ナノスケールの世界になると、必ずしもそうはなりません。原子は少しだけ並び方を変えて隙間を収めてしまうんです。ここでの結晶構造は通常の構造から少し歪んだ構造をとることになります。

多重双晶粒子の場合

このような構造を持つナノ粒子を多重双晶粒子といいます。

ちなみに、結晶が大きくなっていくとこの歪による構造の緩和ができなくなり、積層欠陥、粒界を作って緩和します。

最後に

今回は5回対称っぽく見える多重双晶粒子について紹介してみました。

世の中には不思議なものがたくさんありますね。知っていても知らなくても人生になんの影響も与えないことですが、こういう無駄なことを知っているのもまた一興ではないでしょうか。

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