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【ピープルウェア】締め切りがない方が生産性が上がる?

みなさんはピープルウェアという言葉を知っていますか?

ソフトウェアやハードウェアに次ぐ3つ目の重要なシステム開発の要素と言われるピープルウェアですが、こんな言葉を聞いたことがあるのは現役エンジニアぐらいでしょう。

かくいう私も最近初めて知りました。
ここのところDXやらデジタルといった言葉が世の中を駆け巡っていますが、どうしたらシステム化が進むのでしょうか?

その答えがもしかしたらピープルウェアに隠されているかもしれません。
ということで、今回はピープルウェアについて簡単に紹介していこうと思います。

ピープルウェアとは

主にシステム開発の内、人間に関する全ての事柄を指します。例えば、生産性やコミュニケーション、チーム、プロジェクトマネジメントなどが挙げられます。

ピープルウェアという言葉自体は1977年に生まれたようですが、その10年後に有名なソフトウェア工学者であるデマルコとリスターの著書ピープルウェアにて一気に有名になりました。

ソフトウェア開発の古典とも呼ばれる1冊でとても有名なようですが、これがなかなか面白い。

本書では冒頭に、システム開発の問題点は技術的なものではなく社会学的なものだ、と述べられています。

社会学?全然、技術と関係ないじゃんと思われるでしょう。しかし、たしかに的を射た表現と言えるでしょう。なぜならソフトウェアもハードウェアも開発するのは人間です。彼らエンジニアの生産性が悪ければ、どんなシステムも開発することはできません。

つまり、技術的な観点よりも人間に焦点を当ててみるというのがピープルウェアの考え方です。

読み進めていくと、これはシステム開発に限らず多くのプロジェクトに共通する真理だなと感じました。どんなプロジェクトも実行するのは私たち人間です。近い将来AIが代替しているかもしれませんが、少なくとも今は人間ですよね。

中でも面白かった内容をかいつまんで紹介しましょう。

パーキンソンの法則への反論

パーキンソンの法則とは「仕事量は完成のために与えられた時間を全て満たすまで膨張する」というものです。

もしかしたら聞いたことがある人も多いかもしれませんね。締め切りが1か月後であれば、どんなに簡単な仕事でも1か月フルで使ってしまうということです。

これはあくまで経験則の中から出てきたもののようですが、たしかに経験したことがある人は多いでしょう。そのため、締め切りは少しタイトに設定して、急かせた方が良いとも言われています。

しかし、デマルコはこの法則に反対しています。プログラマーのような知的労働においては締め切りがない方が生産性が高くなるというのです。

このようなエンジニアにとって現実的に達成できないタイトなスケジュールを課せば生産性は落ちてしまう。逆に、エンジニアに自らスケジュールを立ててもらった方がむしろ生産性が上がるということを言っています。

実際にデータを取ってはいますが、これは科学的な強い裏付けがあるわけではありません。しかし、エンジニアのやる気を出させるという点では、このような面白い現象が起きるようです。

私はソフトウェアのエンジニアではありませんが、確かにこのやる気という観点では納得できてしまいました。どう頑張っても無理な締め切りを与えられるよりも、自分でタスクとスケジュールを決めた方が圧倒的にやる気が出ます。

私個人が共感するぐらいですから、きっと同じようなことを考える人はそれなりにいるのではないでしょうか?そんなタイプが集まったプロジェクトでは無理なスケジュール管理ほど悪いものはないでしょう。

プログラムは夜できる

周りが騒がしいと生産性が落ちるというのはよく言われることですが、知的労働のエンジニアにとって集中を切らされる外的要因はなるべく避けなくてはなりません。特に言及されているのが電話です。

フローと呼ばれる集中状態になっている最中に電話がかかってくれば、当然集中が切れてしまいます。それも一日に何度もかかってくれば、まともに集中して仕事をすることなどかないません。

これは多くのビジネス書でも書かれていますが、誰もいない朝のうちにオフィスに来て仕事をするとか、エンジニアだと家に帰ってからが勝負とか、結局オフィスにいる日中はろくに仕事ができないのです。

これは想像に難くないことだと思いますが、だからこそマネジャーはオフィスを最適な状態に整えなければならないといっています。多少コストを書けてでも静かで集中できる環境を整えなければ、決して生産性は上がりません。

とても面白い実験が紹介されています。プログラミングのコンテストをした際に、同じ職場から参加したメンバーは同じような成績を出したというのです。つまり、個人的なスキルの問題と思われていたコンテストの結果が職場環境に左右されていたというのです。

これは、たまたまなのかもしれませんが、それでもやはり職場環境をいかに整備するかが知的労働をさせるために最優先事項と言えるわけです。

また、エンジニアは与えられたオフィスの広さによっても生産性が変わります。言わずもがな広いスペースを与えられたエンジニアの生産性は高かったようです。

人がごった返したオフィスに窮屈に詰め込むのではなく、十分な広さのスペースを一人一人に与え、各チームごと仕切られた部屋にまとめる。構内放送はやめて、電話も極力メールにする。こうすることで、関係のない話が耳に入ってくることも少なくなり、集中を乱されることも減ります。

最後に

今回はシステム開発の人に目を向けたソフトウェア開発古典ピープルウェアの内容を紹介しました。

全然科学じゃない!と思わないでくださいね。たしかに自然科学ではありませんが、この本がここまでの人気を博しているということはきっと社会学的な深い洞察が含まれているということなんだと思います。


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