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■1000年前のラグジュアリーを最新の研究から学ぶ―『紫式部と王朝文化のモノを読み解く』

大河ドラマ『光る君へ』平安時代中期の物語です。年代で言えば、西暦1000年前後。今から約1000年前の時間を舞台にしています。

もちろん、同じく「日本」という国で暮らしていますから、1000年前と言えど、共感できるところ、身近に感じるところもたくさんあると思います。たとえば、春の桜を愛でる気持ち、あるいは、新年を迎える新鮮さ。そういったものは今も昔も変わりません。

ですが、やはり1000年の時間の隔たりは大きいと感じるところもあるのです。それは、衣食住など文化の具体的な部分です。たとえば、衣服だったり、生活の中で使っているモノだったり。これらは、名前も形状も現代とは異なるところがたくさんあります。

めちゃくちゃ身近な?ところで言えば、現代の私たちは「十二単」を着ません。そもそも着方からして分かりませんもの。しかも、この「十二単」って、正式名称ではないんですって。正しくは「女房装束」と呼ぶのだそう。先日見たテレビ番組で初めて知りました。

私などはとてもざっくりとした性格をしていますから、平安時代に描かれた物語を読んでいて、知らない「モノ」が出てきたとき、「きっとこういうものなんだろうなぁ」とふんわり(自分勝手に)想像するか、知らないまま猪突猛進に読み進めるか、です。つまり、分からないものが出てきても、分からなままずいずい読んで行ってしまうことがほとんどなのです。

それはそれで物語を楽しむことはできます。ですが、今回読んだコチラの本を読んで、そういった「モノ」たちに込められた意図や意味を知ることが、さらにその物語の深さをより強く実感させるのだと知りました。

平安時代の「モノ」という、私たちにとってちょっと遠く感じるものが、どれほど豊かな読みを与えてくれるのか。今回はそれを具体的に教えてくれる本のご紹介です。




■『紫式部と王朝文化のモノを読み解く』について

■『紫式部と王朝文化のモノを読み解く 唐物と源氏物語』
■河添房江著
■角川ソフィア文庫
■2023年10月
■1180円+tax
*本書は『光源氏が愛した王朝ブランド品』(角川選書、2008年)を元に、紫式部や藤原道長と唐物の関係など、最新の研究成果を取り入れて改題・増補したものです。

紫式部の生きた平安時代。今から約1000年前の王朝生活において、沈香、瑠璃壺、青磁、唐綾、毛皮などの舶来品は、高価で入手しにくく、貴族たちの富と権威の象徴であった。『源氏物語』や『枕草子』をはじめ、『竹取物語』『うつほ物語』『栄花物語』ほか王朝文学作品にも唐物は多く描かれている。舶来の「モノ」をキーワードに王朝文化の世界を読み解き、物語の登場人物の関係や、平安時代を生きた人々のこころを浮き彫りにする。

裏表紙あらすじより引用

■「国風文化」とはどのような文化だったのか

平安時代中期の文化について、私たちは歴史の教科書で「国風文化」という名前を習い、その名前から連想される通りの内容を覚えます。

たとえば。

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