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日々の光
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夢の弓をひけ

夢の弓をひけ

Photos / Frédéric Barrès

6月1日、娘が初めてのピアノリサイタルを開いた。

11歳の少女の演奏を聴きに集まってくださった
たくさんのお客さんに挨拶をしながら、
今からこの子は
たった1人で1時間、舞台に立つのだ
と思ったら私も震えそうになった。

本番前、楽屋に恩師のヴェロニク先生が
満面の笑顔で訪ねてくださり
その途端、娘の瞳がきらりと光った。

リサイタルは盛況だっ

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うちの猫はどこ?

うちの猫はどこ?

うちの猫見ませんでしたか?!
と言って
夜の10時過ぎ、近所の方々に迷惑をかけてしまった。
みなさん信じられないくらい優しく
一緒に探してくれたのに
見つからない。
絶対に家から出ないうち猫のパール、しかも
持病の心臓病に加え、
少し前から別の病気が見つかり、毎日治療中の日々。

張り裂けそうな胸を抱えて家に戻ると、
庭やガレージ、あらゆる所を探していた夫が叫んだ。

いたよ!!!

なんと子供部

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あしたの家に住む子供たち

あしたの家に住む子供たち

春休みに遊びに行った
紙漉き工場の土産屋で、ある英語の詩を読んだ。
いつか何処かで読んだ気がするのに
ひとつひとつの言葉がまっすぐに心に突き刺さり
その場を動けなかった。

家に帰って調べると
カリール・ジブランの預言者という本に
出てくる一節だった。
取り憑かれたように何度も読み返し
英語の本を注文した。
レバノンで生まれアメリカに育ち
パリで勉強をしたジブランの人生も興味深い。

あなたの子供

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子供の情景

子供の情景

サマータイムから
すっかり日照時間が長くなり、夏休みまであとひと月。
フランスは年度末だ。
5月は連休が続き、花が咲き乱れる中
あちこちでイベントがあり
子供達も浮き足立って落ちつかない。

そんな中、娘は6月に3回、
リサイタルを予定している。

今まで私達両親や友達、先輩達と
一緒に様々なコンサートに参加してきたが
ひとりで1時間近く弾くリサイタルは初めてだ。

昨日は日帰りでパリに、
ピアニ

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光の日々

光の日々

この春は、ざーっと激しい雨がよく降ったかと思うと
すぐに力強く熱い太陽の光がやってくる。
日当たりの良い室内の床や家具を触れても、
その温度が違うほど。

おかげで我が家の小さな裏庭の緑は
輝かしいほど生き生きしている。

半年ほど毎月続いていた自分の本番が落ち着いたので
生徒さんたちの試験や発表会、
そして娘のサポーターに
専念することができている。

毎年、忙しくなると免疫が弱くなり
いろいろ

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Rumba

Rumba

前回、Burlesque 映画について書いたが
この映画コンサートの2日後に
偶然また別の、現代版滑稽喜劇映画を観ることになった。

娘の小学校では
年に2回ほど、
徒歩で隣村まで行って映画を観るという行事がある。
小学校最後の遠足と聞いて引率をすることになった。

隣村までは6Kmほど、徒歩では1時間19分と出ている。
娘はこの遠足に何度も行っているが
私は歩いて行くのは初めてだった。
日頃の運

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Burlesque について

Burlesque について

Burlesqueと呼ばれる滑稽喜劇映画を続けて観た。

まずは
私たち家族が
毎月開催している土曜クラシックの5月のゲストが
ジャズピアニストのロベール氏と
映写技師のアンドレさんによる
映画コンサートだった。

アンドレさん、元々はトランペット奏者で
音楽院の院長先生だったと
奥様から聞いてびっくり。
映画好きが高じて映画技師にもなったそう、
素敵でしょう。

ジャズピアニストのロベールは、

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異国で集う女たち

異国で集う女たち

久しぶりに日本人の女友達3人でランチをした。
今回の行き先はアヴィニョン、私の村からは
50分くらいかかる。
それぞれの家からの中間地で待ち合わせて
友人が運転して連れて行ってくれた。
料理上手でグルメな2人は
お洒落な店もよく知っている。

さすがミシュランに載っているという
フレンチレストラン、接客サービスも良く
美しい盛り付けに目を見張り
繊細な味付けを堪能した。

お腹が膨れたあとは宮殿広

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未来の音楽

未来の音楽

先日、娘にとって大切なピアノの試験が終わった。
音楽院の第3過程に進む飛び級試験で、
2ヶ月前からそのための準備をしていた。

審査員は院長先生と外部からの先生の3人で、
写真は娘の先生が送ってくださった。

試験は土曜日の午前中、私は仕事があったので
夫が付き添った。
試験の時間中はソワソワソワして待っていたら
審査員の賞賛つき満場一致で合格、
という良い結果が届いた。
とても集中して良い演奏を

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彼のいない春に

彼のいない春に

夏時間になり
北向きで日当たりのあまり良くない我が家にも
お日様がやってくるようになった。
テラスにもよく陽がさすようになり
洗濯物をたっぷりと干せて嬉しい。

猫のパールは
ここ数日
朝は陽だまりの下で日光浴をしている。

その姿を見ながら
とつぜん思った。
ああ、
パールにとっては初めてのひとりの春なのだ。

相棒だった武蔵は11月の末に逝ってしまった。
太陽が大好きで、冬の間も
僅かな日の光

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ようこそ我が家へ

ようこそ我が家へ

このごろ外出中に思うのは
「早く帰ってピアノを弾きたい」
こればっかりだ。

なぜなら我が家には
3週間から新しいピアノくんがいるのである。

中古ピアノ探しの旅に出てから4ヶ月、
いろいろなピアノに出会った。
業者さんのところでも
個人のお宅でも
それぞれのピアノに
物語があって興味深かった。

あるお宅でのスタインウェイ。
素晴らしい音色に
少々予算を超えても、と心が動いたが
メカニックに故障

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夏時間とイースター

夏時間とイースター

朝、雨戸を開けると
庭に勝手に生えて育った桑の木(たぶん)に
鳥がとまっていた。

フランスでは、毎年3月最後の週末に夏時間を迎える。
正確には日曜の午前2時に変わるんだそうだ。
1時59分から2時を抜かして3時になる。
その瞬間を見たことはないけれど
とばされちゃった2時はどこにいくのだろう。

娘が小さい時
朝は、おひさまおはよーっと空に挨拶をして
ママ、夜はどこにいるの?と
よく聞いていた。

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パリで歳を

パリで歳を

パリ滞在3日目に私は誕生日を迎えた。
ママおめでとう!と
娘が朝一番にプレゼントをくれた。
自分で書いた短編だ。
「下水道の鼠についてのフィクション」
渋いタイトルに負けず
中身はかなりミステリアス。
私が子供の頃に書いていた双子の話を
覚えていて
ヒントにしてくれたそうで嬉しい。

日本の家族や親友、
南仏の友人たちからメッセージをもらい
ジーンとしていたら

夫の計らいで
昼食は
夫の親友と

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3月のパリにて

3月のパリにて

娘のピアノレッスンに付き合って
家族でパリに行った。
今回は2日続けてレッスンを受けることになり
改装中の16区のアパルトマンに引っ越した
友人一家の家に3泊、とってもお世話になった。

ずいぶん前、留学準備でパリにひとりで到着し
最初に泊めてもらったアパートも16区だった。
オスマン建築の建物が並ぶ高級地に
胸が高鳴った。
あの日から25年が経とうとしているのに
やはり私には場違いな感じだ。

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