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居心地の良さの正体。


言葉よりも雄弁な。


フィンランドと期限付きの《結婚》をして
お母さん見習いをやっていた時。


ひとりの時は気軽で身軽な移動も、
ふたりの時は、大いに気を遣う。
この子の安全は、私にかかっている。。

ベビーカーに同伴乗車する場合、
同伴者はトラムの運賃無料。

初めてこの恩恵を受けるのに、
相当な心の準備をした。


ステップのあるトラムが来ませんように。
停留所の表示を見逃さずに
ちゃんと目的地に着きますように。
乗車中大人しくしていてくれますように。
車内トラブルに巻き込まれませんように。

もたもたせず、スムーズに乗降できますように。


そう願って待っていた、トラム。

よし!
たかがトラムなのに
覚悟を決めて、いざ。

目の前の扉が開いて、怯んだ。


満員御礼。
降車する人、ゼロ。
スペース、猫の額ほど。。
ベビーカーを畳んで乗り込む元気、なし。


うん、次を待とう。


身体の重心を後ろにした瞬間、
伸びてきた、4本の腕。
ベビーカーがトラムに吸い込まれていく。

『あ、Kiitos...』

うなずいてすぐにそっぽを向いた
仏頂面のおじさんと、クールなお姉さん。


ありのままの姿の、ベビーカー。
隣にある、ゆとりのスペース。


振り返ると
無人だった停留所に、数人の影。
違う乗降口から次のトラムに回り、
詰めてスペースを空けてくれたらしい。

ふぇ~。

一瞬にして起こった、連係プレイ。
キツネにつままれたような。
感謝の気持ちより、
まず来たのが驚き。

しばらくして、
胸のあたりがあたたかくなった。




フィンランド語に慣れ
聞き耳を立てられるようになった頃。

車高の高いトラムに
子供連れの女性と、
中学生くらいの女子3人組、私。

走行中に席を立って、
3人組の一人に声をかける女性。
うなずく、学生さん。

ベビーカーを指さしながら
「次のストップで、手伝ってほしい。」
「OK」
くらいの、初級学習者でもわかる、
簡潔な会話。


次の停留所で
二人の鮮やかな連携プレイ。
片手をあげてから、
颯爽とベビーカーを押して去っていく女性。

彼女が戻ると
何事もなかったかのように、
会話を再開する3人。


一連の流れが、軽い。
スムーズでスマート。


慣れているな と感じた。


助けを求める方も応える方も
「さも当然」と
行動しているような。

「優しいね~」みたいな、
年頃にありそうな
特有の冷やかしもない。


私も、今度言ってみようかな。。
きっと大丈夫。


助け合う というか
協力し合う というか
思いやる というか
ごく自然な、共通意識みたいな。



言葉を尽くさなくても、伝わる感じ。



気持ちがシンプルに見える感じ。



あたたかくなれば
途端に添い寝が無くなり、

寒さがぶり返すと
身体を寄せてきて

あたたまって、あたためてくれる

猫みたいな。


この感じ、うちにもあるよね。

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