erika wakayama

日常の小さなことを集めてつなげて文章にしてみたくて note を始めました。 43歳、…

erika wakayama

日常の小さなことを集めてつなげて文章にしてみたくて note を始めました。 43歳、たぶん一番真剣に取り組んでいることは美術、夫と子供(2人)と気の弱いジェントルマンな黒猫とドイツの小さな町に暮らしています。

最近の記事

唇とお尻の穴って同じなんだって

「唇とお尻の穴って同じなんだって」 と、息子が言った。 「え?どういうこと?」 と聞いたら、 「同じ種類の皮膚からできてるんだって」 という返事が返ってきた。 そういうことね。 言われてみれば、何年か前に漆かぶれで全身が腫れあがったとき、唇とお尻の穴には湿疹ができなかった。 そこだけ何か違うんだろう。 唇とお尻の穴は、入口と出口でもある。エネルギー補給過程の始まりと終わり。口から始まる管は驚くほど機能に長けていて、最終的にお尻の穴へたどり着く。 また、口の周りもお尻

    • そこでは時間が止まっているかもしれない。

      移り行く時間はその流れを止めることなく、さらさらとこぼれ落ちるばかり。 必死になって留めようとするならば、流れを見ることさえできず、空っぽの両手が残るのみ。 この世に生まれた生き物は、みんな死に向かっている。 不老不死、老いないことと死なないこと。それは多くの人間が昔から望んできて、まだ誰も成し得ていないこと。 この間、猫のトイレを掃除した。 うちの猫について語ろうとすればいくらでも語れるのだけれど、この文章の趣旨は他にあるのでここでは触れないことにする。 話を戻

      • 実は似たようなもんじゃん。

        うちにワラジムシが大発生していたことがある。洗濯機が置いてある一部屋限定の大発生。 ワラジムシとダンゴムシの違いは、丸くなるかならないか。ワラジムシの方が少し平たくて、背中はゴムのような弾力性を感じさせるマットな質感。ダンゴムシに対して抱く「かわいい」がここでかたちを成さないのは、その表面にしっとりとした潤いを感じるからだと私は思っている。 彼らに遭遇したときの対処方法は2つ用意していた。 ②は、①が物理的に無理になった時にする。それが私の中の決まりだった。 施行の割合

        • 「死にな」と青い空の4月27日

          「4月27日って『死・に・な」』じゃん」と言ってクククと笑ったのは、中1で同じクラスになったK君だった。 今まで気づかなかったのと聞かれ、今まで気づかなかったよと私は答えた。 小柄な体を精一杯大きく見せて、12歳にして既にこの世の寂しさの欠片を持ち歩いているような男の子。一目置かれていたけれど、私は彼の怖い姿は一度も目にしたことがなかった。むしろほろっと壊れてしまいそうな、急にふっと飛んで行ってしまいそうな、静かな危うさを彼はまとっていた。 2年生のクラス替えで別々のクラスに

        唇とお尻の穴って同じなんだって

          潔くなんてないと思う。

          うちの庭にある桜の木は限りなく白に近い花を咲かせる。一滴の赤さえも入っていないんじゃないかというくらい一面の白。ちゃんとサクランボができるので、サクランボの木と言った方がいいかもしれない。 アメリカンチェリーみたいな実は熟れるとどすぐろい赤なんてもんじゃなくて、ちょっとだけ赤い光が溶け込んだ夜の空みたいになる。 私たちがこの家を借り始める頃にはもう古い木の様相をしていたから、今はさらに年を取った高齢木。 冬の間に太い枝が一本折れたらしく、うちの庭とお隣の庭の間にそれが落ちて

          潔くなんてないと思う。