見出し画像

★★★『「若者の読書離れ」というウソ』飯田一史

若者は本を読まなくなったのかについて分析する一冊。

印象に残ったことを下記。

***

小中学生は朝読の時間で強制的に読書するので、読書率は高い。朝読を実施するのは小中学校の8割。国際的なテストで学力が下がった対策と、学級崩壊対策のため(本を読むと子供達が落ち着く)。高校生以降は読書時間が激減。朝読は高校の3-4割前後に。

大学生は本を読まない人が過去から増加。これはスポーツに長けた人を大学に集める学校が増え、学力が高くない層が多く大学に入学したから。大人になっても読書率は変わらず。大学で読まなかった人がそのまま大人になったため。

そもそも、読書をするか否かは遺伝の要素が大きい。読書冊数は過去40年ほとんど変わらず。携帯の普及率含め、世の中の変化がこれほど大きくても、同じように読む人は読んで、読まない人は全然読まない。文字よりも、音や画像から知識を取り入れやすい人も多い。

ケータイ小説、ラノベは読まないので知らなかったが、書籍の中では結構な割合を占める。ただ、知識のパッケージとしての書籍、という需要は残る。鮮度ある情報を提供する雑誌はSNSに取って代わられた。

ラノベは対象を中高生から大人に広げた結果、中高生離れを招いた。一方でケータイ小説は堅調な売り上げを維持。なお、小説家サイトにおける人気作品を売ることで、事前に消費者マーケティングを済ませ、売上増に繋げることができる。

若者は感情に訴えかけ、話の展開が分かりやすい物語が好き。余命もの、デスゲーム、自意識+感情爆発、子供が大人に勝つ。山田悠介、昔たくさん読んだな。。確かに、最近改めて山田悠介を読んでみたが、あまりに淡白で拍子抜けした。人気も下火になっているらしい。使う道具(ガラケーなど)が古くなったのと、デスゲームの裾野拡大で小学生から慣れて飽きた説、確かに。

デスゲーム系はやっぱりバトルロワイヤルが起源だったのね。大人の世界から判断すると、確かに人が次々死んでいくという設定が賛否両論だし、心理/情景描写が無さすぎるが、会話調で展開が次々と起こる様子は確かに若者には刺さる。個人的にもデスゲームは読んでてグイグイ引き込まれる。イカゲームも面白い。感情疲労を起こすと分かってても、感情を揺さぶられる作品が好きな人が多いんだろうな。中高生は若者の抑圧された感情/生活を心の内に秘めてるが、大人も同様に感情の抑圧の中で日々を過ごしている。

感情ってインスタントに作れるんだなと感じた。小説のジャンルをカテゴリ分けして、こういう展開でこういう感情を作る、という定番の様式まで出来ている。それなら感情って何なんだろうな。一定の様式に当てはめて呼び起こすものなんだろうか。そうやって呼び起こされる感情って、意思を含むのだろうか。

また、本ってこのようにカテゴライズできるんだなと、分類の仕方自体を新鮮に感じた。

ありがとうございます!