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【読書感想文】生理痛も花粉症も抜け毛も「穀物菜食」で改善できる!?『若杉ばあちゃんの食養相談室』

今回紹介するのは、若杉友子著、せきねゆき 漫画の『若杉ばあちゃんの食養相談室 食い改めのススメ』です。

著者の若杉さんは、1937年生まれで御年86歳のおばあちゃん。マクロビオティック(穀物菜食)の創始者である桜沢如一の教えを学び、それを広めている人です。

この本にはマクロビオティックを実践することで、現代人が抱えている体の悩みを解消できるということや、具体的にどんな食事をすべきなのかが書かれています。

●食事の「陰陽」について

この本のメインの主張は、「食べ物の『陰』と『陽』を意識し、穀物菜食に努めなさい」というもの。「陰陽」とはこの世のすべてを構成するもので、太陽は「陽」、月は「陰」といったように、真逆の性質を持ち、互いにバランスをとろうとしているのだとか。

食べものの陰と陽については以下のように書かれています。

【陰性の食べ物の特徴】
冷える・広がる・ゆるむ・カリウムが多い・大きい・寒い・植物
(例)トマト、ナス、ピーマンなどの夏野菜、南国のフルーツ、キノコ類、もやし、大豆製品、スイーツ

【陽性の食べ物の特徴】
温まる・縮まる・硬くなる・ナトリウムが多い・小さい・熱い・動物
(例):肉、魚、乳製品、卵、ごぼうなどの根菜

現代人は体を冷やす極陰(砂糖など)・体を酸化させる極陽(動物性食品など)の食事をとりすぎているため、体のバランスが取れず現代病を引き起こしやすいのだそう。そのため、陰陽の真ん中(中庸)に位置する食物(玄米など)を中心に食事をすべしというのがこの本の基本です。 

●穀物菜食の効用と実践方法(正直、難易度高し)

ではマクロビオティック(穀物菜食)を実践することで、どのような効用が得られるのでしょうか?

本書によれば、

●生理痛の軽減
便秘の解消
アトピー性皮膚炎の改善
冷え性の改善
花粉症の改善
腰痛の軽減
四十肩・五十肩の解消
更年期障害の解消
尿漏れの解消
抜け毛の予防
落ち込み・人間関係のトラブルの解消
集中力の向上

が全部実現するとのこと。

こう聞くと、「マクロビオティックって魔法みたい!」と思う方がいるかもしれません。実際、本書の中にはマクロビを実践することによって心身の悩みを解消し、人生を好転させた人のストーリーが漫画でわかりやすく描かれています。それを読むとなおさら「やってみたい!」という気持ちにさせられます。

…しかし、残念ながらこの本に紹介されている穀物菜食は決して甘いものではありません。以下がその穀物菜食のやり方です。

●米をしっかり食べる
●適した塩で食べる
●陰陽を踏まえて食べる
●動物性食品を控える
●砂糖をやめる
●果物を控える
●大豆製品に気をつける
●野草を食べる
●海藻を食べる
●飲み物に注意する
●いい食材・いい調味料を使う
●土鍋を活用する

…どうでしょう、実践できそうですか?正直私はこの目次を見ただけで「ウッ」となってしまいました。笑 全部無理というわけではありませんが、まぁ半分できるかできないかといったところでしょうか。

この本で言う「穀物菜食」とは、 玄米を中心にして、あとは野菜の味噌汁や野菜のおかず・漬物だけで食事を済ませるというもの。肉や魚といった動物性食品は食べず、スイーツも控えるので、現代の食生活とはかけ離れたものになります。そこに耐えられるかどうかが肝になりそうです。

でも上の条件をできるかぎりクリアすれば、自分の心身の悩みから解放されるかもしれないので、やってみる価値はありそうですね。

●個人的に気になる「たんぱく質、少なすぎじゃね?」問題

万能そうに見える穀物菜食。しかし私はこの食事の方法を見て1つ気になることがあります。それは「たんぱく質、少なすぎじゃね?」ということ。

この本に書かれている穀物菜食は、動物性食品を控え、大豆製品もあまりとらないようにするため、たんぱく質の摂取量が明らかに減ってしまう恐れがあります。著者はこの本の中で「人間の体には動物性のたんぱくを分解する機能や能力が備わっていない」とか「動物性食品や植物性たんぱく質をとらなくても、体にはたんぱく質やカルシウム、脂肪をつくりあげる能力と機能が備わっているから、いとも簡単に肉体をつくる」というような発言をしています。また「玄米や野菜や味噌汁の中にたんぱく質が含まれているのでそれだけで充分。現在は逆にたんぱく質の取りすぎによりいろいろな病気が引き起こされている」とも主張しています。

その一方で私は、以下のようなデータを見つけました。

https://www.alic.go.jp/content/000128125.pdf
「独立行政法人 農畜産業振興機構 肉を食べて健康寿命を延ばそう」より

上の2記事には、「肉を食べ始めたら、日本人の平均寿命が延びた」ということが書かれています。
文春オンラインの記事から一部を抜粋すると、

「今から100年前の日本では、大豆などの植物性タンパク質を摂取するばかりで、平均寿命は30代後半。欧米諸国に比べて10歳以上の差を付けられていたのだ。それが肉などの動物性タンパク質の摂取量増加とともに、日本人の平均寿命は1980年代、世界トップクラスに達する。
日本ポリフェノール学会理事長で、日本臨床栄養学会監事でもある板倉弘重医師(品川イーストワンメディカルクリニック院長)は(中略)「肉が足りなくなると、筋肉や免疫機能の低下、アミノ酸不足が引き起こす神経性症状などが起こり、老化に拍車がかかります。筋肉が維持できないということは、若さを保つどころか、要介護状態に陥ってしまいます。人生の後半、自然に体の脂肪が減ってきたら、それは老化の始まり。肉を食べれば食べるほどいいわけではないですが、特に高齢者は植物性と同等に動物性タンパク質を摂取することを意識してほしい」

文春オンライン「専門家に聞いた! 「老けない肉ベスト10」「老ける肉ワースト10」ランキング
高齢になってもエネルギッシュな著名人は“肉好き”」より

とのこと。

たんぱく質と寿命が関連しているとなると、動物性食品や植物性たんぱく質を取らない穀物菜食は本当に健康的な食事法なのかと思ってしまいます(本書の著者は現代の栄養学に対して批判的ですが)。上の2記事のほかにも、たんぱく質と寿命に関する論文やデータがネット上でたくさん見られるので、動物性食品や植物性たんぱく質を極力減らすのもあまり良くないことなのでは、と感じました。

しかし、この本の著者である若杉ばあちゃんのところに「穀物菜食で体質が改善した」「子どもに恵まれた」という声が多数寄せられているのは事実なようです。料理教室や講演会などを開催しているため、多くの人から穀物菜食が求められている、ある程度効果が立証されていると見受けられるので、人によっては効果を発揮するのかもしれません。

なので私自身もどこかのタイミングで、動物性食品や大豆食品などをとらず、玄米と野菜のおかずと味噌汁だけで過ごす時間を作ってみたいなと思います。それで自分自身の体の悩みが解消されるのか、一回実験してみたいです。

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