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その本?

と、思わず突っ込んでしまった

前までは、自己啓発的なものを
(人は話し方が9割、みたいな本)
選んでは
パラパラめくっていたのに
「虹の岬の喫茶店」を
手にとっていたのだ
夜、眠るまえに。

ドライヤーでモサモサと髪の毛を
乾かしていた手を止め、思わず
どしたん?と聞いた
それ読むん?と、も一度疑った

いや、ちょっと人間に戻りたくなってさ
小説読もうかな、って

なんかあったん?
聞いてしまった
もぅ、ええ歳した息子に。

帰ってきた時から
疲れた顔してるな~とは思った
でも
秋刀魚はパクパク食べてたし
茄子と万願寺のお浸し
大根とさつま揚げを炊いたん
きゅうりの浅漬けも
調子よく平らげていた
ごはんは?と聞いたら
たまごかけにする、と言ったので
ニンニク醤油を出し
味噌汁もあるで、と
コンロに火をかけた

デザートに
もらいもんのぶどうを出すと
皮がかたいなぁと言いながらも
繰り返し口に運んでいた

そして、眠る前。

ドライヤーの手を止めた時
濡れた髪が気にならなくはなかったが
なんかあったん?と聞かずには
いられなかった

もうさっ
ええ学校いって
ええ会社いって、って時代ちゃうよな
毎日やめたい、思いながら
会社いってるわぁ、と薄~く笑う

転職したばかり
でも、それなりに成績はあげてるという
先輩のおかげもあるけど、と
前髪を、時折触りながら話す

前にファイアーしたいわと
話ししていた事を思い出した
ファイアーってなんなん?と
聞いたら
早期リタイア
運用したお金で暮らす、とかなんとかと
言うてたっ、け

多様性とか
ファイア~とか、そういえば
よく耳にする、そんな言葉を
頭に過りながら歩むのは
しんどいだろうなぁと思う
そんなわけにはいかないって
ほんまは思う性分だけに、余計ね

いっそ
自由にどこまでも好きなことをって
やってのけるタイプだったら楽だろうに
長男気質が以外とあって
大人になってからの貴方を見てると
小さい頃と違いすぎて
辛い思いをさせすぎたなと思う

いつも、よわっちい母親で、ごめん
心のなかで、ぼんやり謝る

これ、ええよ、この本
小説もいいよ~
お風呂でね、お母さん
最近、本読んでるねん~
気分晴れるしね~、と
興味はないだろうけど
母のリラックス方法を伝授したら
へ~、ええやん、と
子どもの頃のように
小さく、ニタッと笑った

がんばらないでいいから
生きていてね


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