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整理したリバウンド【清水エスパルス vs 名古屋グランパス】マッチレビュー J1 第27節 29.August.21

こんにちは、Gran El Equipoです。
今回は、J1 第27節 名古屋グランパス戦を振り返ります。

前節の大敗からのリバウンドを見せたかったエスパルスは、短い試合間隔ながら、攻守両面できちんと修正を加えてきました。
個人の能力を単純に比較すれば劣る部分もある中で、チームとして相手をコントロールする局面を多く作り、アウェイで上位相手に勝ち点1を持ち帰ったことは評価出来ると感じました(もちろん勝ち切れれば最高でしたが)。

1.スタメン

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エスパルスは藤本が加入後初先発。コロリと唯人が両サイドハーフに回りました。藤本は非保持でもサボらずきちんと守備対応を行っていましたし、攻撃ではチアゴとの距離を意識しながらチームに溶け込みつつありました。
名古屋は前節から3人が交代。前線には前田と柿谷という機動力に優れた2枚を据えました。

2.左右対称で優位をつくる

前節は左で作って、右でひっくり返す形が見えたエスパルスでしたが、今節は左右対称に綺麗に形を作り、効果的にボールを運ぶことが出来ました。

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名古屋の守備はそれほど前からプレスに来るのではなく、サイドハーフもきちんと押し下げて、ブロックを固めることを優先していました。
前線からの守備については、前田と柿谷が横並びになり、CBにけん制をかけつつ、守備範囲の広いボランチが前に飛び出していく形が多かったです。

これに対して、エスパルスはCBの間もしくは脇にボランチの1枚が下り、もう一人のボランチは相手ツートップの背後に立つことで、ひし形を作り、ツートップを剥がす形を作りました。

また、ボランチを1枚下ろすことで、サイドバックを押し上げ、サイドで幅と高さを取らせつつ、両サイドハーフは内側へ。

この左右対称な形を上手く取り続けることで、最終ラインでは安定してボールを持つことが出来、相手ボランチが前に出てくれば、その脇に立つサイドハーフにボールを刺し、相手守備を攻略する形を作れていました。

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上図は前半5分の場面ですが、名古屋 前田と柿谷を両CBとボランチで外すと、その背後で受けたホナウドが更に相手ボランチの間に入ったコロリへ縦パスを刺しました。
そこから幅を取りつつ飛び出した奥井へ展開すると、そこから逆サイドに駆け上がった片山へ。
シュートまでは至りませんでしたが、最後方からボールを繋ぎ、立ち位置で優位を取り、相手守備陣を効果的に攻略する狙いを実現した場面でした。

サイドバックが高さを取るエスパルスの攻撃に対して、徐々に名古屋 マテウスと森下が引いて対応するようになっていきました。これにより相手のカウンターの鋭さを削ぐことにも繋がり、エスパルスからすれば、ボールを保持し、攻撃を仕掛けることで、カウンター対策にもなるという、まさにゲームをコントロールするというような局面を作ることが出来ていました。

3.次に空く場所を把握して使う

前半は上述の通り、ボールを持てる場面では、位置取りで相手に対して優位を作り出し、高さを取ったサイドを中心に攻撃を仕掛けていました。
しかし、後半の名古屋はサイドハーフが、より明確にエスパルスのサイドバックをケアするようになり、6バックにも近いような布陣で蓋をしました。

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一方で、名古屋の前線の守備は変わらず横並びなので、エスパルスは最後尾でボールをもつことには苦労せず、今度は相手ツートップ脇のスペースでボールを運ぶことが出来るようになります。

井林がこのエリアでボールを持ち運び、相手を引き出してからパスをつける狙いを見せたりと、相手に蓋をされた中でも新たに空いた空間を使い、相手を引っ張り出す工夫が見られてよかったと感じました。

相手を引き出すことで、ボランチ脇で受けた滝から藤本、そしてチアゴと、得点の流れにも繋がりましたし、藤本が相手ペナルティエリア角に走り込み相手の背後を取ることもありました。

個人的には終盤に2回、西澤がバイタルエリアで前向きにボールを受けることが出来た場面があり、いずれもシュートを選択出来なかったか気になりました。
これまでチームとしてもミドルシュートは少ないので、ブロックを敷いた相手を引き出す手段として、良い状態で受けた際のシュートの選択にも期待したいと感じました。

4.少し出ながら脇を締める

相手のビルドアップに対する守備では、藤本が自分の背後を消しながら、スピードを生かした効果的なプレスを行いました。
そして、中盤は出来るだけ中央を締め、相手のビルドアップを外回りにさせる意図が見えました。

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今試合では、サイドハーフの唯人がプレスに加わるというよりは、高い位置に立ちながら、相手にけん制をかけるような立ち位置を取っていました。

名古屋 中谷がボールを持つと、チアゴがでていきつつ、その後ろのボランチを藤本が見る形を取りました。

そして、キムミンテへのパスが出そうになれば、唯人が「キムミンテに出たらいけるよ」とでもいうように、少し前にでて窺う姿勢を見せます。

ただ、実際にキムミンテにボールが出れば、藤本が飛び出し、唯人はキムミンテからの縦パスを消しつつ、吉田にも出られる位置に少し下がります。

前半、名古屋はサイドハーフが内側に入ってパスを受ける動きを見せていたため、エスパルスのサイドハーフは背中でそのパスコースを消し、内側を閉めながら、外にボールを追い出していく狙いを持っていたと感じました。

後半、名古屋はサイドハーフを外に張らせて、仕掛けさせるように変わったようにも見えたので、前半にうまく行かなかった点を修正してきたのかもしれません。

5.修正されたプレスへの連動

また、前節からはるかに良くなったと感じたのが、前線のプレスに対するチーム全体での連動です。

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前節は前からプレスをかけたいチアゴ、コロリのツートップと中盤、最終ラインの連動がうまく行かず、ツートップと中盤の間にスペースを与えてしまいました。

しかし今節は、相手がボールを下げたとき等に、チアゴと藤本がプレスをかけると松岡、ホナウドも連動して押上げ、チーム全体でグッと相手を押し返すことが出来ていました。

名古屋がそれほど、ポジションを流動的に動かしてこないことなどもあったのかもしれませんが、選手間の声がけもDAZN越しに多く聞こえ、前節の敗戦からのリバウンドを見せてくれたと感じた場面でした。

6.藤本とチアゴの組み合わせ

藤本は一発の裏抜けを狙い続けるタイプかと思っていましたが、試合をみて周りとの距離感や連携を大切にするクレバーな選手なのだと感じました。

守備での追い方も上手でしたし、相手の脇で受けてアシストを決めた場面も巧さを感じました。チアゴとの連携がもっと上がってくれば相乗効果が生まれそうです。

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失点のきっかけになった場面でも、チアゴにボールが入ったタイミングで、藤本は前向きの体勢を作り、ボールを受ける準備が出来ていました。

この場面では、松岡は上手くダイレクトでチアゴに当てたため、中谷の対応が若干遅れていました。
相手も攻め残りで守備の人数が揃っていない状況で、うまく藤本に落とすことが出来れば、一気に数的同数で攻撃を仕掛けられる場面でした。
残念ながらチアゴが潰され失点に直結してしまいましたが、エスパルスの得点に繋がってもおかしくない場面だったと思います。

7.中断期間を使って

試合後のインタビューでロティーナさんが指摘していたように攻撃の仕上げの部分は引き続き課題となり、勝ち切るには至りませんでした。
しかし、ボールをじっくり保持し、相手を押し下げながら、薄いところを突いていくことで、多くの局面で、相手を自分たちのコントロール下に置くことが出来たのも事実です。

なにより、前節の大敗からもう一度気持ちを入れ直し、選手間での指示に声を再び響かせ、上位相手に対して粘り強く戦いアウェイで勝ち点をもぎ取ったのは素晴らしかったと思います。

これでチームは代表ウィークに入り、一旦リーグは中断となりますが、この期間で新戦力と現有戦力の更なる融合を図ってもらえればと思います。

リーグ再開後の試合が楽しみです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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