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残留を糧に【清水エスパルス vs セレッソ大阪】マッチレビュー J1 第38節 4.December.21

こんにちは、ぐらんえきーぽです。
遅すぎるレビューですが、記録もかねて、J1 第38節 セレッソ大阪戦を振り返ります。

前節の劇的な勝利により、引き分け以上で残留が決められる立場にあったエスパルス。
きちんと守備組織を固めながら、試合をスローに進めると、引退を決めた大久保をきっかけに失点するものの、強い気持ちで得点を重ねると、ホームで勝利で残留を決める、この状況下で、これ以上ない結果を得ました。

西澤のシュートは本当に素晴らしかったですし、就任後、3勝1分けという素晴らしい結果を残した平岡監督にも大感謝です。
最後にはまだ去就の発表がない監督人事についても考えを述べてみたいと思います。

1.スタメン

前節負傷交代となった井林に代わり、ヴァウドが入りましたが、それ以外は前節と同じ布陣となりました。
対するセレッソは引退を発表した大久保が最後のリーグ戦に先発しました。

2.試合を大きく動かさずに進める

この試合で最も重要なのは残留を決めること。自力で残留を決めることが出来るエスパルスは、条件である引き分け以上を大前提に試合に入りました。

守備を行う際には、前節浦和戦の序盤と同様に、きちんと4-4のブロックを形成し、相手に良い形で中央にボールを入れさせない守備を敷きました。

セレッソも相手がプレスをかけてこなければ、きちんとボールは保持して前進していこうという意図を持ち、そこからの機会を窺う形となりました。
特に、大久保が頻繁にが下がってボールを引き出し、中盤を助ける動きをすると、その背後で加藤が裏を狙うという動きを見せていましたが、エスパルスはきちんと対応することが出来ていたと思います。

時々、西澤や後藤が前に出たところを利用され、裏返される場面はありましたが、あまり動きがない試合を作り、残留を決める大一番を落ち着きを持って進めることが出来ていました。

また、落ち着きといっても動きがないというわけではなく、守備⇒攻撃、攻撃⇒守備の切り替えの意識が高く、ここで負けなかったことも良かったと思います。

3.きっかけは唯人

この試合でセレッソは前線からのプレスをかけるというよりは、エスパルスと同様に、きちんと守備組織を作り、構える守備を敷いていたと思います。そのため、エスパルスには最終ラインでボールを持つ時間が与えられていました。
その中で、チームとして狙っていく形を明確に持てていたとまでは言えないながら、再び独力で輝きを放ったのは唯人だったと思います。
(監督が攻撃の構築が出来ないというよりも、準備に与えられた時間の中で、どうしても守備構築を優先したのではないかと推測します)

今節の特殊な条件の中で、エスパルスは攻撃にもそれほどリスクはかけられない状況であったと思います。
攻撃の際には、選手が決められた場所に立ち、カウンターの対策を取りながら、その中で自由を与えられた唯人が流動的にボールを引き出す形が多かったと感じました。

上図の場面のように、サイドにボールが良い形で入れば、左右いずれの場合でも、唯人が相手サイドバックとセンターバックの間にあるハーフスペースに走りこむ形を作ることが出来ました。
相手にとっては嫌な位置ですが、非常に狭いエリアとなるこの位置で、ボールを受けても、相手守備を間接視野で見ながら、前を向くことが出来る能力は素晴らしかったです。

また、西澤のゴラッソのきっかけとなった場面でも唯人が良い位置でボールを引き出していました。

この場面では、ヴァウドがフリーで持ち上がると、西澤にボールを付けました(西澤の位置に原が入り、西澤がもう一つ前に立つというのが、より有効な立ち位置だったかもしれませんが)。

そこから唯人にパスが入るわけですが、若干前のめりに立っていた奥埜と最終ラインの間の狭いスペースで反転すると、チアゴとパス交換をしながら、ドリブルでグッと前に出ると、一気にペナルティーエリアの前に侵入しました。

平岡監督は就任後4試合で、カウンターを攻撃のよりどころにした分、自分たちでボールを持った際の攻撃は少し単調になった印象がありました。
しかし、唯人の動きに流動性を与え、唯人もそれに能力で応えたことが、リーグの最終局面で結果を残すことが出来たのは良かったです。
一方で、この戦い方が残留争いの残り4節では効果を発揮したものの、ここを対策された場合にどうなのかという点は今後考えていく必要があるのかもしれません

4.流動性をゾーンで締める

セレッソに先制点を許すも、西澤のセットプレーからの同点弾、後半開始早々のゴラッソで勝ち越すことが出来たエスパルス。
その後、多くの時間でセレッソにボールを保持されるものの、何度か中央を割られるパスを通されたものの、集中した守備対応を見せました。

ボールを保持されるようになってからは、エスパルスはラインを下げ、ブロックをきちんと作り、中央のスペースは自由に使わせない守備を敷きました。

対するセレッソも、後方から繋いで相手を崩していこうという意図が強く、清武や大久保が低い位置に下りて、ボールを触ろうとする場面が多くなりました。
その代わりに、ボランチの奥埜やサイドバックの丸橋が高い位置を取るのですが、大きなボールを背後に入れることは少なかったです。

エスパルスからすれば、上図のように中盤4枚のカバーするエリアに人が入ってきて、自分たちの前でボールを触ることが多かったため、図らずも守りやすい状況にはなっていたように思います。

崩しのきっかけとなるドリブルに高い能力を持つ坂元にも片山がきちんとマークし、後藤がプレスバック出加わることで、1対1の局面が出来てしまうのを防いでいました。

大久保にヘディングを放たれた以外は、クロスに対しても集中して対応することが出来ており、良い守備を行うことが出来ていたと感じました。
(サイドからクロスが入る瞬間の皇帝のポジション取りが美しかったです)

4-4-2でも十分守り切れそうでしたが、最後に3バックに変更し、立田、宮本を入れた采配も平岡監督ならではでした。

5.この勝利・残留を糧にどこに向かうのか

まず、チームが監督交代という決断をした中で、残留を決めることが出来て本当に良かったです。
そして、とても難しいミッションを引き受け、結果に結びつけてくれた平岡監督には感謝しかありません。
エスパルスにとって、今シーズンも本当に色々なことがあったシーズンになりました。

一ファンであることは大前提として、チームに対して自分の思うところは、これからのエスパルスを考えた際に、今シーズンが失敗という言葉で片付けられるものではなかったということです。

ロティーナさんは自身の明確な哲学をチームに出来るだけ早く浸透させようと取り組んでくれていたと思います(怪我人の部分が厳しい状況をもたらしてしまいましたが)。
平岡さんは仕切りに反省していましたが、その中でコーチ陣が悪かったとも思えません。
ドキュメンタリーで、ロティーナさんに意見を聞かれた際の会話がありましたが、ここの議論を深めていくためには時間が足りなかったのかもしれませんし、エスパルスという組織の成熟度が足りなかったのかもしれないのかなと。

選手の中にも、充実したシーズンを送った選手はポジティブに取り組んでいたように見え、そうでない選手は守備的、細かい規則というネガティブな言葉が並んでいたように思います。

全てをひっくるめてエスパルスの実力が出た、そんなシーズンだったのかもしれません。

純平さんがドキュメンタリーについて、リアルを見せると言っていましたが、自分もチームで何が起こっていたことを目に焼き付け、来シーズンに挑むエスパルスを見守っていきたいと思います。

今シーズンを糧に、積み上げていくことを考えると、監督人事についても注目です。

監督交代後、4試合で平岡監督が見せた、非保持でのプレスとカウンターをベースとした戦い方は結果に結びつきました。
しかし、長いシーズンを見据えた時にそれだけでは足りない程にJリーグの戦術的なレベルは上がっていると思います。
そして、それは平岡監督自身も明確に理解していると思います。

長期的なプランで上位進出を見据えた時に、この残留を糧に、どのようなサッカーを志向していくのか。エスパルスのこれからに注目して応援していきます。





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