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プラン遂行と力強さ【清水エスパルス vs 鹿島アントラーズ】マッチレビュー J1 第26節 25.August.21

こんにちは、Gran El Equipoです。
今回は、鹿島アントラーズ戦を振り返ります。

今シーズンのリーグ戦では最多となる4失点を喫し、苦しく悔しい結果になったエスパルス。
準備していたプランはきちんとトライされており、何度もよい形は作れていただけに、それを結果に結びつける力強さが欲しいところでした。
自分たちの形を結果に結びつける、やり切るというところでの力の差が出てしまった。そんな試合でした。

1. スタメン

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エスパルスは前節から1枚の変更。竹内に代わり、ホナウドが初先発しました。前節、衝撃を与えた唯人は今節も左サイドハーフで先発しました。

対する鹿島はメンバーを大幅に入れ替えるも、攻守両面で矢印を常に前に向け、強く出てくるスタイルは変わりませんでした。

2.鹿島のスタイルとエスパルスのプラン

今節のエスパルスの攻撃時の狙いを紐解くために、まずは鹿島のスタイルについて少し触れたいと思います。
多くの試合を見ていたわけではないので、今節を中心とした印象ですが、攻撃も守備も、「矢印は前へ速く」という意識が強いと感じました。

ここでは守備について書きますが、非保持の局面になれば、ツートップと両サイドハーフ、そしてピトゥカが前がかりな立ち位置を取り、ビルドアップをけん制します。
そして、ボールをサイドに誘導すると、片方のサイドに選手をグッと寄せることで、ボールを奪いきる。反対サイドはどうしても空ける形になるのですが、そのリスクは承知の上で、得られる対価となるショートカウンターを積極的に狙っていきます。

仮にボールを逆サイドやDFラインの背後に飛ばされても、守備陣の個人能力と撤退の速さでカバー。相手チームからすれば得点を奪うのは簡単ではありません。

また、攻撃から守備の切り替えは速い。攻撃では早く相手陣内にボールを運び、ボールを失ったとしても、切り替えの速さでボールを奪い返せれば、再び相手ゴールに近い位置でカウンターを打てるという考えです。

きちんと配置を取ってボールを運ぼうとしたザーゴ監督から相馬監督に交替したときは驚くほどのプレスの鋭さでした。

対するエスパルスは、鹿島の前からはめにくる守備に対して、ボールをきちんと握る選択をしました。その狙いは、相手が片方のサイドに人数を集中させた背後を突くことでした。

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エスパルスのボール保持の場所は左サイド。なぜなら、相手を左サイドに集め、反対サイドの原もしくは西澤へスペースを与えたいから。

しかし、ボールを単純に左に持っていき、相手を左サイドに集めるだけでは、相手のプレスの網にかかり、カウンターを受けるリスクが高まります。
そこで、CBとSBでのパス交換により相手を左右に揺さぶったり、左サイドで数的優位を作って、ボールを前進させたりすることで、相手のプレスを遅らせる必要があります。

上図のように、エスパルスはボランチがCBの間や脇に下りてサポートすることで、相手のプレスをずらし、回避しつつ、左サイドで前進を試みます。
プレスを外し、ボールを前に運べれば、鹿島の中盤も少しラインを下げることになります。

この状態で、ボールを後ろに下げることで、逆サイドに効果的なロングボールを蹴る時間をつくり、一気に相手守備陣の背後を突くことが狙いでした。

右サイドへ展開するために、一度ボールを左に持っていき、井林や松岡からロングボールを使って一気に局面を打開する。特に前半はこのような場面を何度も作ることが出来、チャンスを作ることが出来ていました。

3.プランの徹底に失敗したツケ

先述のように明確なプランを持ち、そのプランを遂行した際にはチャンスを作り出すことが出来ていたエスパルス(本当に良かったと思います)。

しかしながら、1つのミスを鹿島に突かれ、失点を許すことになります。

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権田からボールを受けたヴァウドに対して、鹿島はこれまでと同様に、ボランチのピトゥカも加わった前がかりなプレスで選択肢を削りにかかります。

パスコースが殆ど消された中で、ヴァウドの選択はチアゴへの縦パス。
しかし、ここを狙っていた町田に潰され、ボールを拾ったピトゥカは一発で上田へ。シュートは素晴らしかったですが、ヴァウドは別の選択を取るべきだったと感じました。

ボール保持は右から始まりました。しかし、先述の通り、この試合で良い形を作れていたのは左サイドで一度ボールを持ってからの展開。
右を消された状況で、松岡も指示を出していたように、一度ボールをGKに下げることで、一度やり直すことが出来ればよかったと感じました。

というのも、権田からヴァウドにパスが渡った後も、井林は左サイドに幅を取り、権田経由で、ボールを受けられる位置を取っていました。これは、左で一度ボールを持ちたいという意図があったのだろうと思います。

また、井林がこの位置を取るのは、かなりリスキーでもありました。
ヴァウドはボールを持ち出したので、中央に立つのは松岡のみ。鹿島の狙うショートカウンターに対して非常に脆弱な状態になっています。

虎視眈々とショートカウンターの機会を狙った鹿島の仕留める力に上回られた結果になってしまい、もったいない失点でした。

4.ツートップとボランチのすり合わせ

非保持の局面では、中央に人数を多くかける鹿島の戦い方に難しい対応を迫られました。

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序盤こそツートップとサイドハーフを前に出す形で、相手のビルドアップに対して上手く制限をかけることが出来ましたが、鹿島がこれに対応し始めると、プレスをかけることが難しい状況となりました。

鹿島は前半途中から、三竿がCBをサポートし、サイドバックに幅と高さを取らせる形を取るようになりました。
幅はサイドバックが取る一方で、遠藤、カイキ、ピトゥカがエスパルスのボランチ脇に頻繁に顔を出し、荒木が中央に下りてくるように。

これにより、松岡とホナウドは自分の脇に顔を出す相手選手に対応しなければならないため、前からのプレスに加わることは難しくなりました。
自分たちの前に下がってくる荒木に対しても、ボランチが食いつくのではなく、中盤と最終ラインできちんとブロックを作ることを優先したように見えました。

一方で、ツートップのコロリとチアゴは引き続き前からプレスに行きたいという動きが多く、中盤との意思統一が難しくなっていたように見えました。

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2失点目の場面も、自分たちのチャンスでボールを奪われてからの展開でしたが、まずドリブルを止められたチアゴの帰陣が少し遅れました。
相手の攻撃に対して、10人で守備をするような形になっていた中で、コロリは11人のときと同じように前から相手を追ったため、中央で三竿に時間を与えてしまいました。

前線の守備は上手くいかず、中央を通されてしまったものの、後方のブロックはきちんと作れていたことと、ボランチの素早いプレスバックで大きなピンチになってはいませんでした。

新加入選手がいる中で、前線と中盤の意思統一にはもう少し時間が必要な一方で、きちんと敷いたブロックは簡単に崩されてはいなかったと思います。

しかし、ここでも鹿島の攻撃⇒守備の切り替えの速さに先手を取られてしまったのはもったいなかった場面でした。

後半、コロリと唯人の位置が入れ替わりましたが、前線の守備を改善したいという意図もあったかもしれません。

5.藤本のポテンシャル

夏の最後の新加入選手となった藤本。2点を追う難しい状況且つ、周囲との連携はまだまだという状況ではありましたが、今のチームに足りない要素である裏への抜け出しで可能性を見せてくれました。

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良いなと思ったのは、チアゴが下りるスペースを狙っていたところ。ツートップの相方の特徴を意識して、空いたスペースを使う意図がありました。

そして、裏抜けの前に、一度あえてバックステップで相手をひきつけ、自分の走りこむスペースを空けていたのもこれから楽しみと感じました。
(この場面では鹿島 林も常に藤本を自分の前に置く、良い守備を見せていました)

6.課題はあるが、一つの敗戦を引きずる必要はない

2点のリードを得た鹿島は、ボール保持へのこだわりが更に薄れ、前がかりになったエスパルスの背後を虎視眈々と狙うという相変わらず憎たらしいほどの試合巧者ぶりを見せました。
守備に難のあったカイキが和泉に代わると、サイド攻撃への守備のしつこさは増し、最後まで崩し切ることは出来ませんでした。

後半の2失点は少し緊張の途切れてしまった部分もあったかもしれませんが、チーム全体ではゲームプランに懸命に取り組んでいたと感じました。

より大きな課題と感じたのは、攻撃の仕上げの部分。今節も、チャンスを作ることについては相手チームにも劣っていないものの、決定力の違いが勝敗を分ける試合となってしまいました。

衝撃的な敗戦であったものの、これで監督や選手を糾弾するようなひどいものではなかったと思います。
ゴールに一番近いところで如何に精度高くやり切るか。ここにはメンタルの部分も大きく影響すると思います。
すぐに待っている試合に標準を合わせ、気持ちを切り替え、次節こそ相手を上回ってほしいです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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