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「ホテルまで着いてきたらぶっ殺す」

懐古厨による説教回。

先日、トットちゃんが出演されていたるるぶさんのインスタライブを見た。桑原さんがおすすめのワインを紹介して、多田さんと一緒に飲んでやんややんややっているやつ。5000円以内で楽しめる美味しいワインと、コンビニで買えるお手軽なおつまみとのマリアージュを教えてくれたとても参考になる配信だった。ふたりできゃいきゃいしてるのめっちゃかわいいから良かったら見てください。

リアルタイムで視聴していた。インスタライブにはコメント非表示機能が搭載されていないので、リアルタイムで見る時は必然的に常にコメントが流れ続けている。それを見ていて思ったんだけどね。ここだけは思ったことをそのまま言うね、ごめんね。

「 検 品 せ え !!!!!!!!!!!!!!」

何度も思った。もう少し検品してからコメントしませんか…

私はトットのおふたりよりもちょっとだけ上の世代で、高校を卒業したあとに、インターネットの常時接続が普及し始めた。どこの駅前でもYahoo!がモデムを配りまくっていた頃。あの頃がハタチくらいだった。それまでは「ダイヤルアップ接続」で、電話と同じようにインターネット回線は、使ったら使った分だけ課金されるシステムだった。
当時の私は第1期バンギャル期の真っ只中で、私はガチガチのラーだった。PIERROTが宗教で、キリトは教祖様(今でもこれは変わっていない)インターネットは普及し始めたばかりで、スマホもSNSもなかった。情報を得る手段は、雑誌、ラジオ、ファンクラブの会報のみ。radikoもTVerもない。東京でOAされているラジオを聞くために、東北の片田舎で部屋の中をうろうろしながら、異国の言葉のノイズの奥から聴こえてくるトークを必死に聞き、フールズメイトの友達募集で作った全国津々浦々の友達と文通(文通!!!)をして交流を深め、テレビをダビングしてもらったりしていた。
あの頃、PIERROTちゃんがやっていたラジオ番組で、ツアー中のファンの行動についての話が出たことがあった。その中でキリトが言った言葉が、タイトルにしたそれである。

「ホテルまで着いてきたらぶっ殺す」

その頃はヴィジュアル系の全盛期で、PIERROTちゃんのホームは武道館だった。西武ドームやさいたまスーパーアリーナでもライブができるバンドで、武道館3daysはフルキャパで全日センキューソールドアウト。FCでもチケットが取れないほどの人気だった。でも、入り待ち出待ちは許容されていた。その時やっていたラジオは毎週生放送で行われていて、実際、局に入るメンバーの入り待ち出待ちをするために、真夜中のTBSに多くのラーが集まっていた。それが許されていたどころか、スペシャル企画とかいって、レコード会社のイベンターの方が、集まったピエラーちゃんたちにおにぎりを振る舞う、というようなトチ狂った企画すら行われていた。公式からのある程度の許容があった上で、でもやるならちゃんとマナーを守ってね、近隣の方たちに迷惑をかけないでね、というような話をしていたように思う。ごくごく当たり前な注意喚起。で、そのあとに「ただ、ホテルまで着いてきたらぶっ殺す」とキリトは言った。
ステージに立つ人たちと、自分が立っているフロアとの間に、明確な境界線があることを教えてくれたのが、この時の「ホテルまで着いてきたらぶっ殺す」だったように思う。もちろんそんなことはしてはいけないことだとは高校生だった私にもわかっていた。けど、改めてそう言われたことで「私が生きている世界とは違う世界にいる人たち」という認識がより一層高まった気がする。
この認識は、その頃から今でもずっと変わっていない。同じ時代を生きてはいる。けど、私が生きている世界線の円と、彼らが生きている世界線の円は重なり合ってはいない。それが唯一重なるのは、ライブ会場と劇場。彼らの生業に生で触れることが出来るその瞬間だけ、だ。

SNSの普及で、アーティストやアイドル、芸人さんたちとの距離感は縮まったと思う。直接本人が発した言葉を受け取り、こちら側からもコメントを投げ、たまたま目に留まればそれに返してくれたりもする。SHOWROOMなんかは、もう初めからそれが前提のツールでもある。だから、勘違いしてしまう人もいるんだろう。でも、忘れちゃいけない。

推 し は 友 達 じ ゃ ね え ぞ

先日のインスタライブで、終始、読んでいていやな気持ちになるコメントばかり投げている人がいた。リアルタイムで視聴して、コメントを何度も投げるくらいには好きな人なんだろう。けど、言うことがほぼほぼ「何でそんなこと言うの?言えるの?」というものばかりだった。見ているだけのただのファンでもいやな気持ちになるようなものを、本人が読んだら。どんな気持ちになるだろうね。いや、まかり間違って画面の先にいる芸人さんを友達だと勘違いしていたとしても、それでも、たとえ友達だったとしても、友達にそんなことばっかり言ってたら嫌われるよ?と思うような言葉ばかりだった。そういうのが目についちゃうと楽しさも半減してしまうよね。桑原さんもクイズのネタで言ってるやん。「思いついたことをパッと言う、それがアカンいう話をしています。検品せえ!!!」まさにこれ。

私には、SNSをやる上でずっと心に留めていることがある。

・「何を言うか」ではなく「何を言わないか」を考えること
・わたしの「嫌い」は「誰かのすき」(だから結局「何を言わないか」を考えることに繋がるんだけれど)

芸人さんに対しては特に、コメントが難しいな、と思う。その場のノリやツッコミ、イジり、と、「失礼」の境目が本当に難しい。四十路目前で、文章を書くことが大好きな私でもまだわからない。全然わからない。リアルタイムで流れていくトークに付随するかたちの、文字、字面だけでのやり取りだと、なおさら。
自分では、ツッコミだったり、ノリに乗るつもりで書いた言葉でも、その字面だけで、自分が思っている通りに、そのニュアンス通りに相手に届くとは限らない。だって文字だけだから。相手の視覚から入っていく文章が、音として届く言葉と同じあたたかさや響きで伝わるとは、私は思っていない。
送信ボタンを押す前に「これでちゃんと伝わるかな?」と読み返して、結局コメントを消したことなんて、これまでで数え切れないほどにある。相槌とか、共感ならそのまま送ってもいいと思うし、私も何も考えずに送ることもある。けど、それを超える部分については、
「所長!この、今のトークのノリに乗るようなこのコメントを送信してもよろしいでしょうか!」
「これは文字だけでは自分が思っているニュアンスでは相手に伝わらないかもしれない。却下!」
「では所長、これではいかがですか!」
「これなら大丈夫であろう。許可!」
とか、そういうの、いったんちゃんとやろ?検品しよ????

自分の好きな人たちとの距離感が縮まって、たくさんの言葉に触れられること、そして自分の言葉も届けられることは、すごく喜ばしいことだ。双方向のツールは楽しいし、コメントを拾ってもらえたらすごくしあわせな気持ちになる。いい時代になったな、と思う。最新情報はTwitterで知れるし、なんなら、本人の言葉で告知してくれることまである。本人から「よろしくお願いします〜!」なんて言われたら、すぐに財布の紐は無くなってしまう(そもそもとうの昔に紛失してしまったんだが) 考え方や価値観を知れる文章も、雑誌を買わなくてもnoteやブログでいつでも読めるし、テレビやラジオも、文通で交流してダビングしてもらわなくても、真夜中にラジオ片手に部屋の中をうろうろしなくても、乱れのない綺麗な画質、音質でTVerやradikoで楽しめる。「今何をしているか」「今日何をしていたか」をリアルタイムで知ることもできるし、ツールによってはリアルタイムで触れ合える。何を食べたかも教えてくれるし、誰とどんなことをしていたのか、を知った時には、その先にある自分の楽しみも同時に生まれて「推し事」はどんどん増えていく。お金を出せば、直接Zoomでお話する機会だって得られるようになった。ほんでさらにYouTubeまである。なんという贅沢。本当にありがたいし、オタクをする環境は抜群に良くなった。
生まれた時からインターネットがあって、Wi-Fiがあって、スマホがあって、SNSがあって。いつでも便利に情報を得られる時代に、いわゆる「推し」を好きになった人たちのことが、とても羨ましい。本屋さんでJRの時刻表買ったことある?昔はあれでいろいろ調べて遠征してたんやで。そういう不便も不便で楽しかったし、当時はそれが当たり前だったから不便だとも思ってはいなかったけれど。
でも、距離感が縮まった今だからこそ、リアルタイムで触れ合えるツールを使ってやり取りができる時は、見ている人みんなが「楽しかった」と思える場所にいたい。そして何より、推しにいやな気持ちになって欲しくない。こないだのお仕事としてのインスタライブならまだしも(そうだとしてもいやな気持ちにはなって欲しくない)、お金の発生しない、本人にとっては何の得もないような、ただのファンサービスの配信の時はなおさら。
「検品せえ!!!!!!」
あの桑原さんの渾身のひと言を、トットちゃんが好きなら深く心に刻んでおいて欲しい、と切に思う。みんながたのしく過ごせる時間を共有しましょうよ。ね。そうなるといいな。そうなろうよ。

ところで、これは全くの余談なんですけど。
「ホテルまで着いてきたらぶっ殺す」と言っていたキリトが、地方のホテルに泊まった時の話。たまたま同じホテルになってしまったピエラーちゃんとエレベーターで鉢合わせになる事態になったそう。先にエレベーターに乗っていたのは、上の階に泊まっていたピエラーちゃん。ドアが開いたら、目の前にキリト。
「ホテルまで着いてきたらぶっ殺す」がよぎったんでしょうね。まぁ私がそのピエラーちゃんでも思うわな。
「まずい、殺される!!!!」
結果、エレベーターに乗っていたピエラーちゃんが「閉」ボタンを連打して、ソッコーでドアを閉められて、結局キリトがエレベーターに乗れなかったっていう話は、バンギャルとして末代まで語り継がなきゃいけない話だと思っています(そうですか)


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