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死霊館 悪魔のせいなら、無罪(2021)

 ここ最近エグいスプラッター映画の紹介が続いていて自分でも胸焼けしてきた。
ここは皆大好きこちらの作品に助けてもらおう。死霊館シリーズのメインストーリー第3作目となる今作。ウッキウキで映画館に行ったのを記憶している。

 勘違いしないでほしいのだが、私はスプラッター映画はあまり得意ではない。すごく怖いと聞いて観てみた映画が、どスプラッターで毎回被害を被っているだけなのだ。怖いとグロいは厳密には違うと思うのだが、まとめてホラー映画と紹介しないでいただきたい。「うっかりスプラッター」によるダメージは甚大だ。
 
 一番好きなのは心霊やヒトコワ、悪魔系ホラー。「何かがおかしい」という不気味さが好きなのだ。中でも死霊館ユニバースの作品は「こういうのでいいんだよ」とニンマリしてしまう展開で、安心感が半端じゃない。王道の古典的ホラーを踏襲しており製作陣のホラー映画へのリスペクトも感じるし、途中から下手にSFに逃げたりせず、正体はちゃんと悪魔や悪霊なところが好感度爆上がりである。それにウォーレン夫妻の愛情深さときたら…。2人のおかげで鑑賞後は悪魔系映画を観た後とは思えない心の安寧感を得られるし、油断すると普通に泣く。

<あらすじ>
 1981年、家主を刃物で22回刺して殺害した青年アーニー・ジョンソンは、悪魔に取り憑かれていたことを理由に無罪を主張する。心霊研究家ウォーレン夫妻は被告人を救うため、姿なき存在を証明するべく立ち上がる。警察に協力しながら調査を進める夫妻だったが、とてつもなく邪悪な“何か”に追い詰められていく。

映画.comより引用

<感想>
 最初に映るデイヴィッドの家は、お屋敷ホラーにつきものの「The洋館」でどストライク。こういう家は地下や屋根裏に行くと120%何かが起こるし、階段の途中の壁に飾ってある家族写真は全部落ちて割れるし、キッチンでは戸棚が開いてフォークやナイフが飛んできて机に突き刺さる。これらは入居時の契約書に書いてあるはずだ。決定事項なのだから。

 冒頭の悪魔祓いのシーンから気合いは十分。デイヴィッドの身体はバッキバキに折れるのだが儀式が終わるとすっかり元に戻る。悪魔系映画あるあるだ。姉の彼氏アーニーが身代わりとなり、自分に乗り移るよう悪魔に言う。口説かれるとソッコー鞍替えしてしまうビッチ気質の悪魔はアーニーへ憑依する。

 ウォーレン夫妻がアーニーに悪魔が憑依しているか調べる場面で、従来通り聖水を浴びせたり飲ませたりするのではなく(ド変態夫婦のように聞こえるw)、「聖書の一節を読ませる」という新たな方法が出てくる。悪魔を挑発できるらしい。これならわざわざholy waterを用意しなくてもいいし、誰でも真似できるので汎用性が高い。「もしやこいつ…」と思った時のために覚えておこう。

 本作は前2作のようなソリッドシチュエーションではなく、舞台がさまざまな場所へ移っていくのが大きな特徴だ。趣向を変えたかったのかもしれない。しかし憑依されているアーニー自身は留置所にいてどこにも逃げられないので、緊張感は保ったままだ。アーニー役の俳優さんが細身ということもあるが、とにかくずっと顔色が悪く頬はこけ、精神的に追い詰められていく様子が非常に良かった。途中から登場する水死体のような化け物の描写も気持ち悪くて良い。

 調査を進めていくと、ある魔女が呪いをかけてアーニーに悪魔を憑依させていたことが判明する。終盤のロレインと魔女の追いかけっこシーンもなかなか凝った演出がされている。魔女との闘いと並行してアーニーの悪魔祓いが行われる。悪魔の命令で自殺しようとするアーニーを「愛してる」と言って必死に止める彼女デビー(ここ好き)。ウォーレン夫妻とアーニー&デビーという二組の男女が対比されて描かれ、互いの愛と絆を確かめ合う構図となっている。そして映画ラスト、エドは初キスをした思い出の場所にロレインを連れて行く。互いを見つめ合い、再度唇を重ねる2人。不意打ちでほろっとさせやがって。やれやれ。私の中の悪魔も祓われちまったようだな。

 「愛だなんだってもう信じられねぇよ」という「拗らせ系悪魔」に取り憑かれている方は、死霊館シリーズを全部観てみることをお勧めする。あなたにまだ人間性が残っていれば、夫婦の愛が悪魔を追い出してくれるだろう。

 (余談だが今作の原題は"The Conjuring: The Devil Made Me Do it"だ。
そもそもConjureが「呼び出す/召喚する」といった意味合いの動詞らしいので、その名詞形がなぜ「死霊館」なのか不明だが、輪をかけて今作の邦題は解せない。直訳すると「悪魔が私にそれをさせた」となる。意訳するにしても「悪魔の仕業」などもっとすっきりさせてほしかった。邦題で観る気失せる問題なんとかならんのか…)


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