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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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JOKER 偏愛記録②

4.ジョーカーの誕生

マレーの番組出演を控え、一人でリハーサルを行う。
that's lifeの曲に合わせて、髪を緑に染めながら踊るアーサー。
ピエロのメイクをしているところに、かつての同僚であるギャリーとランドルが訪ねてくる。自分が渡した銃のことで口裏合わせを要求してくるランドルを、ハサミで惨殺してしまう。
怯えるギャリーに対し
”You were the only one that was ever nice to me”
いつも親切にしてくれたのは君だけだ。

と言って何もせずに逃すのであった。
自分に良くしてくれた人には害を与えない、アーサーの素直さが分かる良いシーンだ。同じ理由から、妄想上で恋仲だった女性にも危害は加えていないのではないかと私は推測する。

赤いスーツに緑の髪でばっちりキメたアーサー。
後ろ姿が映ると同時にRock'n'Roll(Part2)がかかる。
自信に満ち溢れた表情のアーサーはまるで別人のようなオーラを放つ。
そして名シーンと名高い階段でのダンスへ突入する。
アパートへと続くこの長い階段をしんどそうに登ってきたアーサーだが、
全てと決別した今は足取り軽やかに、華麗なステップで降りていくのである。
悲劇だった彼の人生は今、喜劇へと変わろうとしている。

映画.comより引用

警官に追われるが逃げ切ることに成功し、おどけて見せるアーサー。
番組の楽屋へ到着。
鏡には口紅で Put on a happy face と書かれている。
挨拶をしにきたマレー本人と対面。
自分をジョーカーと紹介して欲しいと頼む。

映画.comより引用

タバコを咥え、スタジオの脇で出番を待つアーサー。
登場する時のダンスがアーサーらしい。
側で見守るスタッフの「何してんねんこいつ」という感じが面白い。

生放送本番中、マレーとの対談で地下鉄で3人の男性を殺害したことを告白する。

I ain't got nothing left to lose.
Nothing can hurt me anymore.
My life is nothing but a comedy.
僕には失うものが何もない。
誰も僕を傷つけられないよ。
僕の人生はまさに喜劇だ。

殺人を非難する観衆に対し、アーサーは答える。
Oh, why is everybody so upset about these guys?
If it was me dying on the sidewalk,  you'd walk right over me!
どうしてみんなあいつらに同情するんだ?
もし僕が道で死んでいたら、みんな踏みつけて行くくせに!

全員が最低な人間ではないと諭すマレーに「自分をからかったお前も最低だ」と怒りを露わにするアーサー。
悔しさで目いっぱいに涙を浮かべているのが本当に切ない。

How about another joke, Murray?
What do you get when you cross a mentally ill loner with a society, that abandons him and treats him like trash?!
I'll tell you what you get.
You get what you fucking deserve!
もう一つジョークはどうだい?マレー。
精神疾患をもつ孤独な人間と、それを見捨ててゴミみたいに扱う社会を掛け合わせるとどうなると思う!?
教えてやるよ。
クソみたいな報いを受けるんだ!

そう叫ぶとマレーを銃で撃ち、殺害する。
かつては父親像を重ね合わせるほど憧れだったマレーを自らの手で殺害し、返り血を浴びたアーサーは、小さく震えながら満足げな笑みを浮かべる。
スタジオは騒然として生放送は中断される。

パトカーで連行されるシーン。BGMにはWhite Roomが流れる。
暴徒化した民衆は街に火をつけて破壊している。
闇へと堕ちていくゴッサムシティを恍惚とした表情で眺めるアーサー。
何者かが運転するトラックがパトカーに激突。
アーサーは気を失ったが意識を取り戻し、パトカーのボンネットの上で立ちあがる。民衆から大歓声を浴び、自らの血で口を引き裂いたような笑顔を作る。

留置場でカウンセリングを受けるアーサー。
笑い続けるが病的な発作ではない。カウンセラーが尋ねる。
What's so funny?
何がそんなに面白いの?
Just thinking about a joke.
ジョークを考えていただけさ。

Do you want to tell it to me?
どんなのか教えてくれる?
You wouldn't get it.
言ったって分からないよ。

部屋から出ると廊下に血の足跡が残る。
That's LifeのBGMの曲に合わせて華麗なステップを踏む。
職員に見つかり廊下を右へ左へと逃げ回る。
オープニングと同じ黄色い文字でThe Endの表示が出て映画は終了する。

〈まとめ〉
 子供や老いた母親に優しく接し、他の人を笑顔にしようと頑張るアーサーだが、彼を待ち受ける運命は残酷だ。現実世界にも、信じられないほど不運や不幸が重なる人はいる。なぜ自分がこんな目に遭うのか、という答えのない問いは確実に我々の精神を蝕んでいく。

 アーサーは辛いことが起こるたびに、自分の人生は喜劇だと認識するようになる。自分の病気も家庭環境も貧困も、これらは全て面白いジョークなのだと思うことに決めたのだ。強いストレスがかかると発症していた笑いの発作が、マレーの番組に出演する前あたりから一切出なくなる。ジョーカーというまさに道化師の仮面を被ることで自己表現できるようになったアーサーは、やっと心から笑えるようになったのかもしれない。happy faceからsmileへーこれは一人の男が闇堕ちしていく話であると同時に救済される話でもあるのだと思う。

数多くの"アーサー"を無視しておきながら"ジョーカー"の出現に怯える社会。
自分がジョーカーの被害者にならないためにどうしたら良いかではなく、
目の前にアーサーがいたらどうやって手を差し伸べることができるか。

私は人として、医療者として、考え続けなければならないと思う。

次回作の予告編がすでに激アツなので、興味のある方はぜひ見てほしい。

https://youtu.be/gg2WqUkSXF4?si=0tga-L2CcO3seQRJ


こんな偏った記事を最後まで読んでくれる人がいるのか分からないが、もしいらっしゃったらもう感謝感激である。また何か思いついたら加筆修正しようと思う。

お付き合いいただき、ありがとうございました!





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