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孤高の天才ゴッホ。その人生を味わう。

 今回は番外編。大好きな本を紹介したい。
「ゴッホ ー最後の3年」 バーバラ・ストック(作) 川野夏実(訳)
図書館で見つけて一気読みし、迷わず購入した。
ゴッホがその人生を終えるまでの最後の3年間を全編漫画で描いており、活字に抵抗がある方でも非常に読みやすい仕様となっている。弟テオに宛てた手紙の内容を交えつつ、苦悩や混乱に満ちた彼の晩年を鮮やかな色彩で表現している。アムステルダム・ゴッホ美術館監修。世界20カ国以上で刊行されている。

「ひまわり」などの作品で世界的に有名な画家フィンセント・ファン・ゴッホ。
気難しい性格で人間関係を築くのが苦手。絵の具を飲んだり自分の耳を切るなどの自傷行為が目立ち、何らかの精神疾患を抱えていたと言われている。双極性障害という見方が濃厚なようだ。精神病院に入院しながらも熱心に制作を続けた彼は、やがて銃口を自らに向け、37歳という若さでこの世を去った。

 私は別に美術に明るいわけではない。でも映画が好きな理由で書いた通り絵画もまた、時代や国境を越えて私たちを繋げてくれるので、美術館に行くのは比較的好きだ。印象派についての本を買った際にゴッホの特集が組まれており、彼の短くてあまりに激しい人生に惹きつけられた。何が彼を急かし、結果としてこんなにも生き急いだのか。この本を読むと少しだけ理解できるような気がする。

 全編漫画なので読み終わるのには30分もかからない。
とにかくカラフルで美しい挿絵が南フランスの牧歌的な景色や、ゴッホの激しく揺れ動く感情を表現しているので、直感的に彼の心理状態を追体験することができる。弟テオとやりとりしていた手紙の内容も記されており、ゴッホには絵画のみならず素晴らしい文章の才能もあったことが示されている。彼が紡いだ言葉を一部引用しよう。

”星は僕に地図上で街や村を示す黒い点を連想させる。フランスの地図上の印と同じように、空に光る点にも行くことができたらと想像してみよう。タラスコンやルーアンに行くために電車に乗るように、星に行くために死ぬのだ。”

p .57

”僕が生きていると感じるのは、イーゼルの前に立って描いている時だけだ。自分を慰めるため、自分の楽しみのために描こうとしている。”

p.107

”理由の理解できないあらゆることについて考える時、僕は穀物畑を見る。穀物の一生は僕たちのそれだ。だって、僕ら自身もほぼ穀物のようなものじゃないか。少なくとも、植物のように成長し、時には思い描いたところに行けず、熟せば穀物のように刈り取られることを受け入れなければならない。”

p.109

 ゴッホはこうも述べている。

「私は絵の中で、音楽のように何か心慰めるものを表現したい。」

 彼は存命中にほとんど評価を受けることがなかった。しかし死後130年以上経った現在、彼の絵は世界中の人々を魅了している。その力強いタッチと鮮やかな色使いは、絵画を眺める人々の心を慰め、今日も明るく照らし続けているのだ。

夜のカフェテラス(1888年)

 少しでも興味がある方はぜひ手に取っていただきたい。


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