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IT組織に対する顧客体験価値の重要性を探る! 第2弾

第1弾では、NPS®と顧客体験価値についてお話させていただきました。

第2弾では、IT組織における顧客体験に「おもてなし」は必要なのかどうか、IT組織における「おもてなし」とは何かを考察していきます。


IT組織にも「おもてなし」は必要なのか?

「おもてなし」とはお客様や大切な人への気遣いや心配りをする「心」であり日本の文化です。広辞苑によると、その語源は、とりなし、つくろい、たしなみ、ふるまい、挙動、態度、待遇 馳走、饗応とあります。平安、室町時代に発祥した茶の湯から始まったと言われています。

一般的に「おもてなし」の心は、旅館や料亭などのお客様を「もてなす」サービスが思い浮かぶと思いますが、「心」という言葉が示す通り「人」と「人」との間の相互作用によって生まれる関係性に深く根差していると考えられます。

では、IT組織では「人」と「人」の相互作用はどこにあるでしょうか?

第1弾でお話したカスタマージャーニーでいえば、「エンゲージ」「提案」「合意」「オンボード」「共創」「実現」のそれぞれで「人」が顧客やユーザーとのタッチポイントにおいて何らかの相互作用があることが考えられます。
その際に素晴らしい顧客体験を得るためには、対応するIT組織の「人」(担当者)がおもてなしの心を持って対応することで、心地良い体験によりNet Prompter Score®が高くなる可能性があります。特に最もお客様が支援を必要としている時のサポート窓口である「サービスデスク」の担当者との相互作用は、体験価値においてとても大切であることも分かるかと思います。

ただし、ここで注意が必要なのは、「おもてなし」でサービスの体験が向上するのは、サービスが顧客のニーズに合っているということが前提となることです。ニーズに合っていないサービスにお金を払ってしまった顧客に対して、サービスデスクの担当者がおもてなしの心を発揮して丁寧にサポートしても、顧客体験は向上しません。


ITシステムにも「おもてなし」は必要なのか?

「人」と「人」との相互作用ではない「人」(ユーザー)と「機械」(ITサービス)との間の相互作用にも「おもてなし」は必要でしょうか?

そもそも機械には心はないですし、現在のIT技術では人間の感情をリアルタイムで読み取って対応を調整するようなことは難しいので、ITシステムに「おもてなし」を求めるのは無理があると言えます。

しかしながら、「動く機械=ソフトウエア」を作るのも「人」ですから、ソフトウエアの設計(デザイン)に「人」が心地よく使い易いユーザーインタフェース(UI)や、UX(ユーザーエキスペリエンス)を取り込むことによって、貧弱な体験をしないようなサービスデザインにすることができます。従って、筆者はIT組織の顧客やユーザーとのタッチポイントを持たない設計や移行の作業に関わるエンジニアにも、「おもてなし」の心をもって、ユーザーの立場に立って考えることが求められると考えています。
またサービスデスクの担当者はユーザや顧客の体験を直に聞くことができる立場なので、その場しのぎの「おもてなし対応」にとどまることなく、サービスを設計する担当者にフィードバックして、サービスを改善していくことが重要です。


実際にあった貧弱な体験談

あるITサービスのオンボードで、実際に貧弱な体験をしたお話です。

ITサービスへ申し込みをすると、オンボードに必要な、分厚いマニュアルが手元に届きました。その時点で「面倒くさそうだなぁ」という悪い印象をもったのですが、1ページ目の手順からつまずいてしまいました。

マニュアルには、Windowsの設定のために、インターネットにアクセスし、そこにあるPDFファイルの説明に従って設定をするように指示されていたのですが、説明に使われている画面ショットは、自分の使っているWindowsよりも、かなり古いものでした。

自分の設定画面から同様の設定をする方法が分からず、5分くらい格闘して、うんざりしてセットアップを止めてしまいました。

そして、そのITサービスは申込みをしたものの、オンボードもせず、1度も使用せずに解約することになりました。

とても最悪の体験でしかないのですが、このマニュアルやPDFファイルは、明らかに「お客様」の立場に立って書かれたものではないですし、古い画面ショットを平気で掲載していること自体に「おもてなし」の心なども感じられません。

またそのITサービス自体も、自分たちサービスプロバイダを中心に設計された複雑な技術ソリューションになっているため、ユーザーからみたら面倒くさく複雑で、分かり難い、自己満足なサービスになっていることが明らかに感じられました。


ITエンジニアは、もっとユーザーへの「おもてなし」の心を!

本記事の最初にも述べたように、「おもてなし」は日本独特の文化的背景を含む言葉なので、グローバルのIT業界ではあまり通用しない概念と思うかもしれません。しかし、世界のサービスマネジメントでも、今回説明したような体験価値を向上するための人の感情面に関するナレッジが注目を集めています。
最新のITIL®4では、デザイン思考、ユーザ中心設計、認知的共感に基づくサービスの共感といったプラクティスが紹介されていますので、参考にしてみてください。

カスタマーファースト、カスタマーセントリックと言われて何十年にもなりますが、ITエンジニアは技術思考かつ技術的にマニアックになりがちです。
ITエンジニアには、ITサービスをデザインする際、ユーザーのオンボードをデザインする際、ユーザーへのマニュアルやドキュメントを策定する際、様々な場面でユーザーへのタッチポイントがありますので、ぜひユーザーの立場にたって「おもてなし」の心で、ユーザーに優しいデザインやサポートを心掛けて欲しいと思います。


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