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今更ですがPDCAじゃなくてPDSA思考へ

日本では多くの人が一度は聞いたことのあるPDCAサイクル。これはウィリアム・エドワーズ・デミング博士によって提唱され、日本で普及しました。ところが、アメリカではPDSAが一般的に使われていると言われます。なぜでしょうか?


日本で普及したPDCAサイクル

デミング博士は、1947年GHQから国勢調査の準備のために日本に派遣され、その後1950年に再来日しました。その再来日の2カ月間で、「品質の統計的管理」の講義を数多く開催しました。これが日本におけるQCサークル活動のきっかけとなり、PDCAサイクルが製造業を中心に普及していきました。


PDSAとは?

ウォルター・シューハート博士は、実験計画法を専門とし、これは仮説を立て実験で確認し、仮説を検証しながら、“仮説を修正”していく方法論です。

PDSAとは、Plan(計画) – Do(実施) – Study (研究) – Act (是正)の頭文字をとったものですが、Planの実験計画で「仮説」を立て、Doで実験を「実施」して、Studyで実験結果の「観察や研究」をして、Actで仮説を「修正」するというサイクルを示しています。

このシューハート博士の考え方は、品質のバラツキを減らすために、統計的な分布を一定の許容範囲内に収めるという考え方を提唱しています。これは、作られたモノに対する品質検査の思考ではなく、作るモノの製品設計や工程設計(生産技術)などから発生するバラツキを抑える考え方です。

一方、当時の製造業の品質管理は、出来上がったモノの品質をCheck (検査)し、基準を満たさないモノを取り除くというプロセスが一般的でした。つまり、PDCAのCheck (検査)は品質を検査によって管理する考え方を連想させます。


デミング博士も途中からPDCAと呼ぶのをやめた!?

シューハート博士は、デミング博士の師という師弟関係にありました。そのシューハート博士はデミング博士のPDCAという言い方には大反対をしていたといいます。そのため、デミング博士は途中からPDCAと呼ぶのをやめて、PDSAに切り替えそうです。

では、なぜ日本にはPDCAが定着したのでしょうか?それは、1950年に来日した際は、PDSAに切り替え前だったため、PDCAとして講義が行われていたのでした。


1文字違い、されど1文字の違いは大きい

PDSAとPDCAでは、StudyとCheckの1文字しか違わないのですが、これが前述したように大きな違いがあります。Studyは、品質を設計段階で組み込むことで品質のバラツキを抑えるようにして、研究段階と是正段階を通して「上手に素早く失敗して素早くフィードバックを得る」ことを示しています。ところが、Checkは生産した後で「品質基準を満たさないものを検査して不良品を取り除く」ことを示しています。


PDSA思考のまとめ

環境の変化が激しく、また多様で様々な要求のある世の中で、試行錯誤してやってみなければ、それが消費者の満足を得ることができるのかどうか分からないようなケースに挑戦しなければならないことも多くなっています。

そのため、サービスを構成するソフトウェアでは、アジャイルソフトウェア開発プロジェクト手法やDevOpsを実現するCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリ)の取り組みによる、スムーズな流れ(DevOpsの第1の道)、実験と学習のための短いフィードバックサイクル(DevOpsの第2-3の道)が求められています。

まさに、この考え方はPDSAとマッチするもので、ソフトウェアをアジャイル開発で短いイテレーションでStudy(デモンストレーションしてフィードバックを得る)しながら、Act (修正・改善)することと考えることができます。

デミング博士も途中からPDCAの提唱からPDSAに切り替えたように、現在の複雑化した環境においては、PDSAの発想をうまく活用することも良いのでないでしょうか。