障害者雇用 転職先は男性社会
普段の生活ではとくにジェンダーとかセクシュアリティとかを気にしているわけではないのだが、このたびの転職先は圧倒的に男性社会である。
数だけを見ても、ほんっとうに男性が多くて、ワンフロアで100人以上いるのだが、私がいるフロアには私を含んで女性は9名しかいない。
同じフロアの別の部署からわざわざお菓子を持ってきてくれた女性社員もいたほどである。私を見て女性だ!と喜んでくださったのだそう。
転職の際に受けた面接では、「男性が多いですが大丈夫ですか?」と心配された。
性別うんぬんは特段気にしていないので大丈夫だと答えたが、まあ確かに異様な雰囲気かもしれない。
ここは高度経済成長期のサラリーマン社会がそのまま残っている、ユネスコ無形文化遺産に登録されてもいいくらいの特殊な空間である。
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男性はたしかに多いのだが、そのぶんとても興味深い。
私は文系だったし教育業界にずっといて、そこでは男性よりもむしろ女性が実権を握る環境だった。
男性が半数以上いたとしても、彼らには女性には逆らえないという空気が流れ、女性は伸び伸びと生きていた。(日常生活のレベルの話である。例えば、差し入れのお菓子を食べる順番などの些細なことである。)
だから今の企業に入って、新しい価値観に触れているような新鮮さを味わっているのである。
まず上司は男性の部下を呼び捨てにするのだが、私のことは「さん」付けで呼ぶ。
男性社員には朝礼で勢いよく命令口調だが、私には「うん、ゆっくり覚えたらいいから」と柔らかな口調になる。
男性社員にはオラオラ系だったのが、私になるとまるで初孫に話しかけるおじいちゃんのように変身するのである。
そして男性社員は、気を使いながら、優しく女性社員に業務を依頼する。
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向かいの席には部長の秘書も担当されている女性が座っている。
部長は、ふだんはあきれるくらい、男性の部下達をことごとく叱ってしまう。
部長の部屋は私の机からすぐのところにあって、ドアは開けっぱなしだから、声がよーくこちらにも届いてくる。
次から次へと部下達が懺悔しに来ている日もあった。
(ただ、話をよくよく聞いていると、たしかに部下の方がまちがっていて、部長の方がまっとうなことを言っている。だから、部長はコミュニケーションがめちゃくちゃ下手なだけなのだという結論に落ち着いた)
一方、秘書が部長室で会話しているときは、彼はまるで別人になる。口調はまろやかで、柔らかい。同一人物か?と二度見してしまったくらいである。
だから、世の中の権力構造とはこういう図に落ち着くのではないかという結論に至った。
権力はぐるぐると回り、上司は男性社員に権力を見せて、男性社員は女性社員に権力をもち、女性社員は上司に権力を見せる。それが巡って巡って延々と続く。
まあ、もっと広く見れば、上司は行きつけのスナックのママに一番弱いのだが。(こないだの飲み会で、スナックのママによく怒られると話していた笑)
こうやって、世の中回っているのだろう。
こうやって、世の中の経済は動いているのだろう。
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おかげさまで、私にも他の女性にも特段目立った害はないので、まあこのままでいっか、と思っている。男性社員たちは女性に業務を依頼しつつも優しいし。
まだ3年目の男性社員が朝礼で課長から若干キツめの口調で助言を受けているとき、心の中で「がんばれ」と応援するくらいしかできないが、よくよく考えるとその社員もめげずにやっているから、そこそこ強いメンタルなのだろう。
最近よく耳にする「レジリエンス」というやつかもしれない。
周りをぐるりと見渡すと、男性たちはなんだかんだ元気にやってらっしゃる。
転職先では、いろいろな一面を目にして社会の一片を学ぶことができている。
貴重な人生経験を得ることができている。
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