障害者も有意義な転職をしよう:第4章 面接試験
4-1.企業研究
書類審査・適性検査を通過すると、いよいよ面接試験です。
(適性検査が面接試験と同日で行われる企業もあります。)
私が受けた面接の時間はどこも1回にあたり約1時間ほどでした。
1時間となると、表向きの質問だけでは済まされません。
しっかりと対策が必要です。
準備としてまず大事なポイントは、企業研究をしっかりと行うことです。
今は企業のホームページに情報が充分掲載されていますので、こちらをじっくりと読んで備えておきましょう。
ホームページはできるだけ多くのページを見ておいたほうがよいのですが、転職の方など時間に制限がある方にとっては苦しいところ。
よってここでは、見るべきポイントを挙げておきます。
それは、「企業理念」と「事業内容」、そして「求人情報」です。
「企業理念」には、企業の方針の核が詰まっています。
はっきりとカギカッコや太字で強調している企業は分かりやすいので、そのままおさえておけば問題ありません。
もし強調されていない場合は、文章を読んで何度も出てきている単語をひろいます。その会社のキーワードです。
もしくは、冒頭や最後のまとめの部分を重視して読んでみましょう。
企業が何を重視しているのか、おのずと浮かび上がってきます。
「事業内容」とは、その企業が特に力をいれて取り組んでいる事業です。
「事業の概要」や「事業戦略」など名称はさまざまですが、要は、企業が何に力を入れて収益を上げているのかが端的に書かれているところです。
この儲けがないと、企業は生き抜くことができません。
同時に企業が一番ウリにしている部分です。
ここを把握しておけば、面接で有効な回答を提示することができます。
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そして「求人情報」もしっかりとチェックしておきましょう。
「新卒採用」「中途採用」に比べると障害者採用は情報量が少なかったり、企業によってはいきなり「お問い合わせ」ページにとんだりします。
障害者採用についてもしっかりと知っておくことは必要ですが、重要なのは、企業がどんな人材を求めているのか、です。
これは健常者・障害者問わず当てはまることです。
そこで必ず見てほしいのが、健常者の「新卒採用」「中途採用」のページです。
健常者の「新卒採用」「中途採用」のページには、企業の求める理想の人材像が詳しく描かれたりしています。
障害者については理想像が書かれていませんが(見たことがありません)、健常者のページから企業の雰囲気を感じることはできます。
ほかにも業務内容であったり、部署、1日の時間の流れ、職場内の写真や社員のインタビューが載っていたりするので、この情報を見ることでどんな人と一緒に働くのか、社内の雰囲気はどのようなものかを把握することができます。
こうした内容をしっかりと分かっておくことで、面接試験対策につなげることができます。
実際に私も志望動機をどんどん深く聞かれた会社があって、そのときは1日の流れのページに載っていた情報を答えて対応することができました。
面接官は何度もうなずいていらっしゃったので、しっかりと企業研究をしたことが伝わったと思います。
企業研究をしたことも、あてずっぽうで受けたわけではない証になるので、しっかりとしたアピールポイントになりますね。
4-2.面接試験対策
企業研究によってひと通り会社の概要を把握できたら、次は面接試験対策です。
エージェントによっては事前に過去の質問が送られてきたりしますので、それをもとに作ってもいいですし、どの企業にも当てはまる普遍的な回答も用意しておくといいでしょう。
たとえば、企業によって変える質問と普遍的な質問には、次のようなものが挙げられます。
<企業によって変える質問>
・ 志望理由
・ 希望する部署、業務
<普遍的な質問>
・ 自己紹介
・ 得意なこと、不得意なこと
・ 職務経歴
・ 病気・障害について(どのような症状があるか、通院状況、服薬状況、会社で必要な対応など)
・ 健康面で心がけていることについて
・ 趣味、特技
・ 個人的な情報(家族構成、親の介護等で離職する可能性があるか)
私は面接対策としてパソコンでWordを開き、<普遍的な質問>のファイルを作って質問と自分の回答をひたすら書き込みました。
文面は面接で答えているかのような敬語表現を取り入れて本番さながらの文章にしました。
これにより、文章を作っているときもすでに面接の練習になっていますし、面接前に何度も読み直すことで丁寧な口調が自然と身に付きます。
<普遍的な質問>とは別に、<企業によって変える質問>のファイルを作りました。
1会社につき、1ファイルです。
すべての企業をひとつのファイルにまとめてしまうと探すのが大変だったり、時間がかかったりします。
ファイルを分けておけば探しやすいですし、もし追加で書きたいときにもすぐにファイルを見つけて書き足すことができます。
そしてファイルをクラウドにあげておけば、ふだんの通勤時間や昼休憩の時間にスマホでみることができます。
ぜひ参考にしてみてください。
4-3. 面接試験できかれたこと
では実際にどのようなことが聞かれたのか、そしてどう発展していったのかをみてみましょう。
私が実際に答えた具体的な内容も含めて書いてみますね。
①「自己紹介をしてください」
「志望動機を教えてください」
この二つは最初の質問として際立って多く聞かれました。
緊張をほぐすためにも、まずは準備してきただろう内容から取り掛かるのかもしれません。
私が面接に進んだ企業は4社ありました。
すべて自己紹介が求められ、次に志望動機が聞かれました。
そのうち1社だけ、最初の質問が「職務経歴をすべて順に説明してください」というところがありました。
私は職歴が7社もあるので、これはつらかった・・。
3分弱、ひと通り答えて「以上です」と言うと、「すみません、緊張してらっしゃいますよね」と謝られました・・・はい、そうですね。
ピンと張りつめた空気の中で、この長さの内容をずっと一人でしゃべり続けるのはつらかったです。
(面接官もご経験の長さはさまざまなので、試行錯誤されているのかもしれませんね。)
自己紹介では、名前を伝えたのち、得意なこと・不得意なことを話しました。
料理とか掃除とかプライベートの話ではなく、仕事の上で得意としていること、不得意としていることを具体例を入れて話しました。
大事なのは、不得意なことをきちんと自覚していることを伝えて、常に気にかけていることを強調するということ。
実際に、「私は注意深いところがあり、メールも送る前に何度も読み返したり、他社に文書を送る際にもダブルチェックをしていただいたりしています。こうしたことを自覚しているので、私は常に「丁寧さ」と「迅速さ」を気にかけながら業務にとりかかっています」と答えました。
志望動機は、準備したことをしっかりと答えれば大丈夫です。
障害者であるから大それたことは言えない、などは気にする必要はありません。
私はだいたいどの企業も志望動機を2点準備しました。1点目は、「御社の理念、~に感銘を受けました。日本/グローバル社会の中で大きな役割を担っていらっしゃる御社にぜひ貢献したいと思っています。」などと広く大きく答えました。
そして2点目で自分のスキルが~という業務に生かせると思ったなど、個人的なことを語りました。
この志望動機で、企業研究をしっかりしてきましたよというアピールにもなります。
胸を張って堂々と答えましょうね。
②「職務経歴を教えてください」
私は職歴が7社(箇所)もあるからか、職歴すべてではなく1社か2社ほどピックアップされてどんな仕事をしていたのか、なぜここを辞めたのか、について掘り下げられました。
仕事の内容については、簡潔にまとめると伝わりやすいので、事前にしっかりと準備しておくといいですね。
また辞めた理由、転職した理由については、前向きな理由にしましょう。
たとえば「この資格を取ったので、もっと活かせる仕事をしたいと思った」、「通勤時間を短縮して簿記の勉強をしたいと思う」などが挙げられます。
ただし障害者雇用なので、「薬の時間を配慮したり体調を崩さないように、規則正しい生活を心がけようと思った」でもいいと思います。
大事なのは、「~が嫌だった」などのネガティブな内容にしないことです。
③「どんな業務をやりたいですか?」
いや、まだ入ってないからわかんないって!と思いましたが、そんなことは前提で質問されているので、ここでは得意で従事できることが可能な業務を答えれば大丈夫です。
私は次のように答えました。
「やりたい業務として、3点あります。
1点目は、パソコンを使った事務業務です。ワード、エクセル、パワーポイントはひと通り使えます。
2点目は、教育業務です。入社後に御社についての知識の習得をしたうえで、教育に携わることが可能です。これまでの教員経験を活かせるかと思います。
3点目は、英語や日本語の文書を作成することです。両言語で論文や書籍の執筆経験があるので、公的な文書作成ができると思います。」と答えました。
このほか障害者雇用の業務としては、郵便物の配布やコピーなど社員の方々のあらゆる業務の補助をしたい、細かいデータ作成や処理をしたい、などが挙げられます。
経験やスキルを仕事や業務内容に結び付けて答えるのがコツです。
余談ですが私は以前通った就労移行支援事業所で、「一般企業の経験がほとんどないから、採用される可能性が低い、公務員試験を受けるとよい」と言われていました。
たしかに、一般企業の経験が少ないのは私の弱点です。
それでもなんとか今回の面接対策で、「一般企業でも自分にできること」をひねり出しました。
業界が異なった場合でも、経験やスキルを企業での業務に結び付けることは可能です。
精一杯考えれば、説得力のある回答を作ることができるのです。
また事前に準備したときには「得意な業務はなにか」という質問を想定して上記の回答を作っていました。
今回のように別の質問が来ても、該当することが分かれば瞬時にスラスラと答えることができます。
事前のしっかりした準備は、こうした機会にも活かすことができます。
④「障害・病気について配慮事項を教えてください」
障害や病気については、企業によって充分に把握されているとはかぎりません。
先入観もあるかもしれないですし、面接官の知識は不充分かもしれないので、ここは中立な視点から端的に伝えるとよいでしょう。
障害や病気のことを詳しく伝える必要はなく、あくまで仕事で何か対応が必要になった場合にどうしてほしいか、に集中して答えればよいです。
私の場合、万が一てんかんの発作が起きたときのことを説明しました。
「意識がある状態でしたら、そのままで大丈夫です。ここ何年も発作は起こっていないので大丈夫だと思います。
もし意識がある発作が起こった場合は何もしていただかなくてかまいませんが、もし意識がなくなった場合、5分間意識のない状態が続けば、大変申し訳ないのですが、救急車を呼んでいただけるとありがたいです。」
控えめに、かつ援助していただきたいことは明確に言うのがポイントです。
「5分」などのように数字で表すと相手も把握しやすいですね。
そのほか、昼食後に薬を飲んでいるか(忘れないよう声をかけたほうがいいか)、業務中に配慮したほうがいいことはあるか、といったことを聞かれました。
私は特に思い当たらなかったので「ありません」と答えたのですが、ここに該当することがあれば、正直に答えるほうがよいでしょう。
採用後とのミスマッチが起こらないようにするためにも、事前に伝えて理解を得ておくほうがよいです。
重要なのは、「やってもらって当然」ではなく「していただけるとありがたい」という気持ちを忘れないこと。
障害者雇用=障害者の保護 ではありません。
人材としてがんばりますが、この点は配慮していただけるとありがたいです、という姿勢で話しましょう。
⑤「〜じゃなくてもいいんですか?」
例:「教育関係の仕事に就かなくてもいいんですか?」「英語関係の仕事じゃなくていいんですか?」
これはいくつかの企業で聞かれました。
私の職歴に教育関係が書いてあったり、TOEICのスコアを載せていたからかもしれません。
この質問は答えにくいように見えますが、そんなことはありません。
「いろいろと調べてじっくりと考えたのですが、事務職でもこれまで身に付けたスキルは活かせると思います。」とか、「英会話の企業を探してみたところ、社会人対象などで夜間勤務があったりと就業時間が不規則だったので、体調に影響するかと思い断念しました。」などを答えました。
面接官はうなずいて納得してくださいました。
⑥「趣味・特技はありますか?」
これは自由に答えてもいい質問です。
「特にない」は印象があまりよくないので、いくつか考えておいたほうがいいですね。
もしかしたら深く突っ込んで聞かれるかもしれませんが、自分の知っている範囲で答えれば充分です。
また内容は自由ですが、答え方は簡潔な形にまとめておきましょう。
たとえば、「2点あります。1点目は・・・。2点目は、・・・です」などと準備しておきましょう。
⑦「スポーツはしていますか?」「夜は眠れていますか?」
スポーツの質問は趣味・特技と同じようにも見えますが、実はまったくちがいました。
私は「スポーツジムに通っています」と答えたのですが、どんなトレーニングをしたかとか誰と行くかとかではなく、「どのくらいの頻度で行っていますか?」という質問が返ってきました。
そこでようやく、健康に気遣っているかどうかについて聞かれているのだなと気づきました。
健康に関しては、このような聞き方もあるのですね。
障害者だからよけいに、健康についての質問は聞きにくく、この質問形式が選ばれたのかもしれません。
仕事をするにあたって(病気・障害をのぞき)健康であることは重要ですし、ふだんから心がけていることをアピールすることができます。
なお睡眠については、これは個人的な解釈ではありますが、眠剤を飲んでいてもそれを説明する必要はないと思います。
企業が知りたいのは寝ているか寝ていないかなので、「寝ている」と伝えれば充分です。
⑧「これまで仕事を休職したことはありますか?」
これも障害者に向けた質問かもしれません。
健常者の場合、中途採用試験ではブランクがある場合にかぎれば聞かれるかもしれませんが、めったにない傾向だと思います。
なかなか突っ込んで聞いてきますね。
休職経験がある場合であっても、その理由を端的に説明し(ここでも上司の悪口などネガティブな内容は避けて、体調不良から医師の判断によるなどにとどめておきましょう)、今は充分仕事に就く状態にあること、場合によっては医師から就業が認められていることをアピールするとよいでしょう。
そのほかについては個人の文脈で聞かれることが多いと思います。
例えば私は資格について聞かれたことがありました。
資格といっても教員免許とか運転免許ではなく、食いつかれたのは最近取ったコーチングの資格でした。
ある企業の取締役の面接では、採用になったらコーチングをうちの社員に提供してくれないか、というお声もいただきました。
さらにはコーチングの資格をなぜ最近取ろうと思ったか、コーチングを行う上で一番心がけるべきことはあるか等、かなり掘り下げた質問に及んだところもありました。
ちなみにコーチングの資格を取ったのは、転職活動を始める前月でした。
コーチングの資格を取ってよかったなと思いましたし、何歳になってもなにか勉強し続けることは、先方へのアピールになるのでしょうね。
このように履歴書に書いた内容には、自分では自覚していなくても他者からは宝物に見えるものもあるのです。
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以上、この章では面接試験対策と実際に聞かれた質問やその答えを書いてみました。
いろいろな情報とともに参考にしながら、自分なりの回答へとつなげていってください。
一生懸命考えれば、自分をアピールできます。
そして、堂々とかつ謙虚に臨んでいきましょう。
自信をもって挑んでくださいね。
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この記事は本来はkindle出版を検討しましたが、noteですべて無料でお届けします。(今の就業先が副業禁止なのもありますが、少しでも障害者のみなさんのお役に立ちたいと思っています。)
ですので、読んでいただいたら、ほかの障害者や関係者の方々に広めていただけると幸いです。
(こちらのリンクを貼ってください。)
https://note.com/epilab/m/mc29dabeb2457
よろしくお願いします!
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