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米の凄みを感じる酒

ナチュール、自然派。ワインの世界ではもはや定着しており、専門店や、それを得意とするレストランなども多い。当初は「???」と感じるようなワインも結構有ったが、最近は進化や淘汰が進んでワインとしての美味しさも向上していると思う。自然派は結構ですけど、まずワインとして美味しくないと話にならない。

昨今、日本酒の世界でも「自然派」を称する酒が出てきている。私自身は日本酒は「技術」の積み重ねの酒であると考えているので、自然派って何ぞや?という感はあるが、「無農薬栽培米」とか、「無添加(日本酒には表示義務の無い添加物とかもある)」とか、「生酛造り」とか、「蔵付き酵母使用」とか、決まった定義は無いようだけど、そういった感じのものらしい。

千葉県 寺田本家 香取 無濾過生原酒 22BY
精米歩合90% 生酛 酵母無添加 無濾過 純米生原酒

千葉県の寺田本家さんが醸す、「香取」という銘柄。こちらの酒蔵は「五人娘」という銘柄が一般的だが、この「香取」も地酒として造られており、有名な香取神宮の御神酒としても供されている。ただし、普通に販売されているものは、同じコンセプトで造られてはいるが、加水されたものであり、この原酒はあまり流通はしていないだろう。

精米歩合90%。1割しか磨いていない。昨今磨きが浅い日本酒も見かけるようになったが、90%は珍しい方。非加熱無加水で度数は21%もある。醸造度数の限界に近い。飲んでみると、非常に濃厚。旨味、甘味、酸味、渋み、苦味が一体となって非常によくまとまっており、焼き米の香ばしさもある。強烈な旨さ!米の持つ様々な味を堪能できる。この精米歩合にして、洗練された繊細さも持ち合わせており、濃厚ながらも綺麗な味で、21%の度数を感じさせない。「米の凄み」を静かに感じさせる。恐ろしい酒。

同時に普通の加水された「香取」も試飲してみたが、この生原酒を飲んでしまうと、まるで水割りを飲んでいるかのように感じてしまう。それは当たり前か。。

本数限定、流通量も極めて少ないようなので、これを飲むのは難しいかも知れないが、オススメしたい一品である。

「自然派だから良い」ではなく、「美味しいから良い」酒を求めたい。無農薬、無添加、昔ながらの酒造りは、美味しい酒を造るための手段であるべき。自然志向、回帰指向であっても、そこには確固とした技術が息づいているのであると思う。やはり日本酒は技術の酒だと思うから。。

著者 facebook 2023年2月 投稿記事より

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