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【無料】マルチ商法の歴史・陰の章

この記事は

・2019年に作成したnoteを一部修正し、再掲載します。マルチ商法(連鎖販売取引)の歴史は違法行為の歴史。今回はそんな、マルチ商法の〝陰〟の部分をお伝えします。春先は騙される学生や社会人が多いので、警鐘の意味を込めて無料公開します。

前回のおさらい


中小企業は販売網を持たないし、代理店を広げる資金力もない。テレビのような広域宣伝媒体も存在しない中、人間関係を基にした直販や代理店方式を取ります。これはもちろん合理的な販売方法。

アメリカのカリフォルニアビタミン社は直販をもう一歩進め、

「うちの商品を売ってくれたらマージンあげる。売ってくれる販売員を集めてくれたら、その人の売上からもマージンをあげる」

という形で、商品販売と同時に販売員の勧誘を行い、個人では到底不可能な売上とマージンをもたらした

・・・・・・というのが〝陽の章〟のお話でした。

今日はお待たせ〝陰の章〟です。


APOジャパン


1970年代、日本におけるマルチ商法の祖と言われる会社が誕生します。

その名は「APOジャパン」。

アメリカで広まった連鎖販売取引を大々的に持ち込みました。

エンジンの燃焼効率を向上させ排ガスを綺麗にする添加剤を商材としており、モータリゼーションの発展と公害問題に揺れる日本に「正しさ」を持って広まります。時流に叶っていたんですね。

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しかしその商材ベーパーインジェクターマーク2は全くのインチキで、排ガスを綺麗にする効果などはありませんでした。

最終的には「念ずれば効果は高まる」などというトンデモ理論まで使い販売者を洗脳していきます。

良質なビタミン剤や化粧品で広まったアメリカと違い、最初からインチキ商材を使うあたり、ちょっと日本的だなと思う。

モラルも法律もガン無視して販売員を拡大させるAPOジャパンの手法は、高校生の自殺者まで出して社会問題化しました。

同社の実権を握っていたのは副社長の波和二(なみかずつぎ)。最終的には詐欺罪で逮捕されました。

◆波和二

波は出所後に「水道水を天然水に変える石」のマルチ商法を展開し、再び詐欺罪で逮捕。再出所後には布団や健康器具の高額販売を行っていたものの、70歳にして突然天啓を得ます。

使っても減らない金で世界を救うとして「世界円天構想」をぶち上げました。そう、ご存知の方も多いでしょう、あの円天です。

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2008年に三度目の逮捕となり現在も服役中。

APOジャパン、魔法の石、円天と、三度も被害者を出していながら、その全てにおいて一度たりとも反省の弁は口にしていないそうです。

◆島津幸一

島津幸一は、日本初の催眠商法「新製品普及協会」を設立した人物です。

焼きたてのパンなんかを餌に、殺風景な事務所や空いた店舗へ高齢者を集め、気分を高揚させつつ高額商品を売りつける商売ってあるでしょ。売るだけ売ると事務所を引き払うやつ。あれを生み出した人物が島津です。

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新製品普及協会は、年商150億円、4000人の従業員を抱えたところでいきなり倒産。500社もの連鎖倒産を引き起こし大問題となります。

その翌年、島津は波和二と出会い心酔。APOジャパンの教育(洗脳)を一手に引き受け、日本初のマルチ商法の根幹を支えたのでした。


ホリデイマジック


ホリデイマジックは日本三大マルチの一角ながら、元はアメリカ資本です。

アメリカでは先鋭化するマルチ商法が社会問題化し、徐々に規制を強化する流れになりました。当時大きな勢力となっていたホリデイマジック社にも業務停止命令が下ります。

同社は倒産を回避すべく、世界第二位の経済大国に着目したのです。

化粧品を扱う同社は女性をターゲットに「ホリデイガール」と呼ばれる洗脳販売員を大量に育成しました。彼女らの多くは抱えた在庫で生活を破綻させ、家庭の崩壊、友人関係の崩壊に見舞われます。心を病んで自殺する人もいました。

このシステムを作ったのが、ロバート・ホワイトです。

◆ロバート・ホワイト

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ロバート・ホワイト
悪徳商法の基礎を日本に伝えた人物

ロバート・ホワイトはホリデイガールの教育担当でした。先ほど登場した催眠商法の島津幸一に、客の洗脳方法を伝授した人物でもあります。

ホリデイマジックは日本でも強烈な洗脳プログラムを実施し、組織も売り上げも一気に広まります。しかし、金儲けに走ったディストリビューター(マルチ参加者)の暴走であえなく倒産。

ロバートホワイトはその後、自己啓発セミナーの会社を設立しました。その幹部だったのが、後にライフスペースを設立してミイラ遺体事件を引き起こした、シャクティパッドの高橋弘二です

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ロバートホワイトのセミナーは極めて完成度が高く、催眠商法、カルト、自己啓発セミナーの根本経典として受け継がれていきます。X-JAPANのTOSHIがはまり込んだホームオブハートも、ロバートホワイトのメソッドを模倣していたとされます。


ジェッカーチェーン


ジェッカーチェーンの創業者、山口隆祥は群馬県伊勢崎市生まれ。高校卒業後に富士重工業(現SUBARU)で働くもわずか2年で退職し、後に日本三大マルチと呼ばれるジェッカーチェーンを設立します。

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このレコード持ってるんですがプレーヤー無いから聞けない

国会でマルチ商法が問題になり始めると、山口は会社を潰す準備をします。新たに寝具販売の新しいマルチ商法会社を起こし、ジェッカーチェーンの主力メンバーを移転させました。

その寝具販売マルチこそが、ジャパンライフです。


ジャパンライフ


ジャパンライフはおそらく、日本のマルチ史上でもっとも急速に日本中へ組織を拡大させた会社です。

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ジャパンライフ社長・山口隆祥
画像引用・FACTA

マルチの雄・アムウェイは上陸したばかりでまだ勢いはなく、ニュースキンは存在しない。化粧品や洗剤のような消耗品を数千円で売るよりも、何十万円もする健康寝具を売るジャパンライフの方が短期で儲かった。

社会問題化して潰れた三大マルチ。それらで巨大グループを作り上げた日本中の実力者が、ジャパンライフへ集結したのです。

しかし、短期間で儲けられるがゆえ、強引な販売と生活破綻がすぐに問題化します。さらに山口本人の6億円の所得隠しが発覚。

ジャパンライフはジエンド・・・・・・にはなりませんでした。

山口は娘に会社を継がせつつ、京都府警本部長を務めた相川孝を社長に招きます。相川は生活安全局保安課長を勤めた人でもあり、この人事はかなり「効いた」。

ジャパンライフは潰れることなく存続します。

画像引用・テレビ愛知

マルチ商法からレンタルオーナー商法へ切り替え、営業を継続。ここでも被害者を量産するものの摘発まで30年を要します。

しかも摘発のきっかけは警察ではなく消費者庁であったことから、警察OBの抱え込みは大きかったのではないでしょうか。

また、山口本人は有り余る資金を政界へばら撒きました。それは与野党を問わず広く行われ、モリカケサクラの桜を見る会へつながり、再び問題化しました。


原ヘルス工業


派手な活動を続けたジャパンライフですが、マルチ商法としての実態は1985年をピークに下火となりました。悪徳商法として国会で取り上げられてしまい、有力ディストリビューターが相次いで離脱したのです。

ジャパンライフを離れた有力者はその後、原ヘルス工業へ移りました。そう、バブルスターの原ヘルスです

原ヘルス工業には、現物まがい商法で社長が惨殺された「豊田商事」の残党も加わり、売上は急拡大。千葉真一、松方弘樹、山城新伍、梅宮辰夫、北大路欣也と、有名俳優を使ったCMで世間を驚かせます。

世はまさにバブル景気。そしてマルチ商法も「バブル」を中心に回っていきました。

そりゃ、三大マルチ+ジャパンライフ+豊田商事だもんよ、売れるに決まってるわ。

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豊田商事の会長殺害を伝える朝日新聞

しかし、バブルスターの中身はただの農業用ポンプであり、発生させていた泡は健康に何の影響もなかった。

薬事法違反であっけなく営業停止となります。

社長の原善三郎は「ただの良い人」「財津一郎が好きな田舎のおっちゃん」だったそうで、マルチ商法のことなんて何も知らなかった。

良い商品だから売れている、日本人が健康になるのだから素晴らしいと喜んでいた。営業停止になった後もバブルスターの健康効果を信じて疑わなかったそうです(2008年没)

原社長は自宅や工場を売却しながら負債を少しずつ返済していったため、会社自体は存続しました。

しかし、マルチ商法としての組織は完全に崩壊。有力ディストリビューターは一気に離脱し、一攫千金性の高い耐久消費財ではなく、組織の崩壊しにくい消耗品へとシフトしていきます。

日本最大のマルチ商法となっていたアムウェイは今更参入しても旨味がないため、新興勢力のニュースキンへ多くが移籍しました。

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また、原ヘルス工業で組織の作り方を知ったトップランカーは自分達で連鎖販売企業を立ち上げていきます。

サンフラワー、クラブイッツ、グリオ、日本エコスといったマルチ商法を立ち上げ、大金を稼いだ後に組織崩壊、倒産を繰り返しています。


悪の系譜


登場する企業名が微妙に古いのは、大学時代にマルチ商法を研究していた時点で知識が止まっているからです(汗)

ここ20年ほどに立ち上がった(そして潰れた)マルチ商法の源流を辿ると原ヘルス工業、そしてジャパンライフにあり、APOジャパン、ホリデイマジック、ジェッカーチェーンへ行き着く。

波和二、島津幸一、山口隆祥、ロバート・ホワイト

これらを悪の系譜と呼ぶかどうかはお任せしますが、世間から悪徳商法とされる商売のリーダー達は、かなりの高確率でマルチ商法を経験しているんじゃないかな。

ネズミ講(無限連鎖講)に認定されて潰れたスカイビズなんて、WEBスペースでマルチやってましたからね。原価0円よ。引っかかってるのは当然若い人ばかりだった。騙した連中は今どこで何を勧誘しているのやら。


マルチ商法で儲けるには


マルチ商法の会社を立ち上げた人から直接話を聞いたこともありますが、短期での金儲けを企む彼らは根本的に罪悪感を持っていない。他人の涙に対して極めて鈍磨で冷酷です。今なら分かる。あれはサイコパス

逆に、化粧品や健康食品のマルチ商法で愛用者を固め、大きな組織を築いている人は、とんでもない人格者だったりするのよね。

特に長続きしている化粧品会社は、いわゆる上流階級の高学歴な奥様方、お婆様方に広いネットワークを持っていたりします。定期的に美容会を開き、押し売りや買いだめをしない人の多い組織は強い。

マルチ商法が当初目指した「商品を愛用し、気に入ったら友人へ勧める。ビジネスしたい人には全力でサポートしてあげる」という形を実現してる人たちです。

だからアムウェイにしろイオン化粧品にしろミキプルーンにしろ、何十年もの歴史を維持してる。愛用期間の長さは組織の強さにつながる。たかだか数ヶ月使っただけで権利収入なんて無理です。

仮に組織を大きくできたとしても維持するのはすさまじい手間を要します。マルチ商法は、権利収入とは縁遠い。何もせずチャリンチャリン儲かるビジネスではありません。

新卒社会人や大学生にお伝えしたい。

本当に権利収入を得られているのは、化粧品の愛用から何年もかけて組織を広げる、金持ちのおばちゃん達です。スタート時点で何十万円もかかる時点貴方には無理なビジネスなので、引っかからないようにしましょう。


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