「そんなどーでもいいこと、答えませんっ」 -男子発言ノート41
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「そんなどーでもいいこと、答えませんっ」 -男子発言ノート41

「この人と一緒にいられたら、私はいろんなことを上手にやれる気がする」

そう、不思議と確信めいたことを思ってしまった時から私は、“彼のことを好きな女子”になった。

とても好きだけど、そうとはまだ伝えられずにいた男の子と、3度目のご飯を食べてバイバイした帰り道。
私は、嬉しくて、楽しくて、初めて彼に用もなく電話を掛けた。

とりとめのないことをつらつらと、ホクホクと、生まれてこのかた「今がいちばん幸せな時間!」とばかりにウカれて声を上げては、喋りつづけた。

そして、その流れで彼に訊いたのだった。

「じゃあさ。布団とベッド、どっちで寝てる?

……うん。メッチャどうでもいい質問。

しかも、二択系の質問の中でも、

「目玉焼きには、しょうゆ or ソース?」とか、
「きのこの山派? たけのこの里派?」とか、

好みやこだわり、その理由までを掘り下げて討論できるような議題ではなくて、ただちょっと、好きな人のまだ見ぬ一面を知って「っへ〜布団で寝てるんだ〜」とか想像してキュンキュンほくそ笑みたいだけだった。キモチ悪いのはじゅうぶん承知のつもりだった。

それでも、
好きな人の何でもないことでも知りたくなるのが、恋。

なんじゃ、ないのかな?

すると、さっきまでとは打って変わって声のトーンを落とした彼が、

「どっちだっていいでしょ……そんなどーでもいいこと、答えませんっ

と、ナゼか最後は思いっ切り突き離すような敬語で冷ややかに言い放つのが、途切れ途切れの電波の合間から聞こえ、

プツ。ツーツーツーツーツー

と、突如電話は切れたのだった。

……へ?

えっ私、今、電話切られた……? 電話、切られたの!?

唖然として、何が起こったか状況整理がつかないまま、スマホを手に、しばし放心状態。ただもう、なんか、ものすごーく最悪なことが起きたっぽいことだけは分かる。そして、少し遅れて……

ひ・で・ぶッ!! やっちゃった? 布団とベッド、どっちで寝てるかなんてアホなこと訊いて呆れられた? 怒った? 乙女心のフリしたウザ過ぎる下心、バレちゃった……!?

いや確かに! あンまりにもくだらない質問だったかもしれない。
でもさ、切ることなくない? なくないかい……?

や、電波が悪くて切れちゃっただけかもよ? それか、バッテリー切れ? にしても声、チョー怖かったなぁ……気になる。けど聞けないよ。電話また掛けて「寝具関連の質問はNGだった?」とか到底聞けない!

もうすっごく……落ち込んだ。
私との電話を、彼は「切った」んだ、って。

なんだかもう、どうしようもないくらい、世界イチじぶんがどーでもいい、くだらない存在のような気がして。今後彼に何を話しかけてもどーでもいいことと思われそうで。

くっそーう。「寝るときは、パジャマかジャージか?」にしとくんだったー!(余計ガチャ切りされるワ)

男子にとっては、
「今日の昼飯は牛丼にするか、ラーメンにするか」
「Mac か Windows か」「slack か Chatwork か」
とかが重要ゴトだったりするかもしれないけれど、

恋する女子は、好きな男子が、
「布団で寝てるか、ベッドで寝てるか」
「ヒゲ剃りはカミソリ派? 電動シェーバー派?」
なんてことを聞いてみたくなるわけで。

だけどそんなこと……彼らにとっては、ホントにどーっでもいいのかもしれない。

それでも、
どーでもよくないのが“彼のことを好きな女子”で、
どーでもいいと言えてしまうのは“彼女のことを好きではない男子”なんだなと思った。

そんな彼のピシャリによって、百年の恋も一気にかき消されたというか、瞬間凍結させられたのだった。塩対応どころか“液体窒素対応”だったと言っていい。

そうして、何も上手くやれないまま私は、彼のことを好きな女子をやめて、元の“ただの女子”に戻った。しゅるるるるぅ……。

あゝ悔やまれみ。全くもって、悔やまれみ!!

あんなこと訊かなければ、この恋はうまくいっただろうか?

いや多分、遅かれ早かれきっと、私の片想いだったってことは、どこかのタイミングで分かったんじゃないかな。
ただそれが、今回は、この世で最もどーでもいい質問をきっかけに明るみになっただけ。

だって、
どうでもいいことを聞かれて嬉しいのもまた、恋。

なハズって思うから。

こうして、この「憐れ!布団かベッドか事件」以来、“布団”とか“ベッド”とかそれらのワードを聞いただけでも今だにゾクッとしてしまう(笑)。

それでもまだ、出会えることを信じていたい。
「どーでもいいじゃん」と笑いながらも答えてくれる、私をどーでもよくは思わない人と、出会えることを。

ただし今生、布団かベッドかの質問だけは、封印しておこうと思う。危険だ。


▼今後のエピソード(予定)
「手でも繋いじゃう?」
「ソレやってたら結婚してるよ、ウチら」
「わっっっかりました!」
……etc. お楽しみにです。

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おもに恋とじーん|エッセイや掌編・シナリオを書いています |どうせ“私じゃない誰かを好きな”男子たちの言動について綴った『男子発言ノート』『好きにならずにいられてよかった』、漫画家つきはなこさんとの『ピン留めの惑星』他 https://www.ohshimatomoe.com/