フェルマーの最終定理(サイモン・シン、新潮文庫)

数学の狂おしいほどの魅力。

サイモン・シン著「フェルマーの最終定理」の面白さは、群を抜いている。

私の中の、「この本に出逢えていれば」とつくづく思う本のリストの中で、最高峰にある。文庫という手に取りやすい形でこの内容は、もはや奇跡と読んでも良い。

私自身が、かつて感じていた「数学なんて社会の役に立たない机上の科目ではないか」病にも著効するだろう。

私は、数学は生きた学問であり、職人が愛用する道具の如き存在だと、思う。

本書の一節、オイラーに関する記述にもある。
「ヨーロッパの権力者たちがやりたかったのは、難解な抽象概念を探求することではなく、数学を使って実地に役立つ問題を解決することだった。(中略)オイラーがその生涯に扱って問題は、航海術から財政学、音響学から灌漑にいたるまで、実に幅広いテーマに渡っている。」

ここからも分かるように数学は学際的で、実務的な学問なのだ。

フェルマーの最終定理とその証明をめぐる詳細は本書で。

日本の理科系離れが言われて久しいが、本書のような名著が、しかも翻訳されていない名著があるのではないかと想像する。そして、本書のような、名著がもっと書店に並んで欲しいと密かに切望する。


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