ゲーム紹介:ブリュッセル1893 -ベル・エポック-


どんなゲーム?
『ブリュッセル1893 -ベル・エポック-』は、入札とワーカープレイスメントを組み合わせた戦略ゲームです。
1893年、ブリュッセルはきらびやかな建築的変革運動であるアール・ヌーヴォーの発祥地でした。アール・ヌーヴォーは光や植物や花から着想を得た湾曲、鉄細工、モザイク、フレスコ画、ステンドグラスなどの要素に特徴づけられます。この芸術運動はすぐにヨーロッパ全土を刺激して、ベル・エポックとしても知られる“黄金時代”の最も偉大な建築家たちに影響を与えました。
『ブリュッセル1893 -ベル・エポック-』では、あなたはこの“ベル・エポック”の傑出した建築家の一人となります。あなたは壮大な家々を建築し、それらを飾る美術品を作り上げます。当時の最も著名な貴族たちは、あなたが影響力を拡大するのに手を貸してくれます。あなたの追い求める究極の夢は、プレイヤーボード上に刻まれた建築物の最高傑作を、己が手によって完成させることです。ゲーム終了時、勝利点の形で最も多くの名声を得た建築家が勝者となります。

『ブリュッセル1893 -ベル・エポック-』は2013年にPearl Gamesから出版されていた『Bruxelles 1893』のリメイクになります。ワーカーを配置する際に入札を行うことや得点要素が多岐にわたることなどがあり、考えどころも多いゲーマーズゲームとして好評で、当時は多くの賞を受賞しました。
2013 Meeples' Choice Nominee
2014 Tric Trac Nominee
2014 As d'Or - Jeu de l'Année Nominee
2014 As d'Or - Jeu de l'Année Grand Prix Winner

この名作ゲームが10年ぶりにリメイクされ、Engamesで日本語版を発売できることとなりました。


ゲームの流れ
プレイヤーは5ラウンドに渡ってゲームをプレイします。
各ラウンドは計画フェイズ、アクションフェイズ、解決フェイズの3フェイズからなります。

計画フェイズでは、最初に株式市場カードが公開され、それによってそのラウンドで使用できるアクションスペースの範囲を決めます。

アクションフェイズではスタートプレイヤーから時計回り順に、手元のワーカーを置いて1アクションを実行するか、ハードパスをすることができます。
アール・ヌーヴォーボードとブリュッセルボードの2枚があり、ワーカーはそのいずれかに置きます。

アール・ヌーヴォーボードでアクションする場合、アクションスペースに自分のワーカーを1個置き、その下に最低1金を置きます。このため、お金をまったく持っていない場合、アール・ヌーヴォーボードのアクションスペースに置くことはできません。アール・ヌーヴォーボードでは美術品を作ったり、美術品を売却したり、後援貴族を見つけたり、高品質素材を入手したり、建物を建設したりできます。



ブリュッセルボードでアクションする場合、お金はかかりませんが、他のプレイヤーと同じアクションをする場合、1個多くワーカーを置かなければなりません。ブリュッセルボードでは資金を調達したり、貴族から後援を受けたり、アクションをコピーしたり、低品質素材を入手したりします。


解決フェイズでは、プレイヤーはアール・ヌーヴォーボードに配置したワーカーに基づいて得点を、入札に基づいてボーナスを受け取ります。ブリュッセルボードに配置したワーカー数が最多のプレイヤーは自分のワーカー1個を裁判所に置かなければなりません。

5ラウンド後にゲームは終了し、プレイヤーは建築した建物、ワーカー数、貴族、手持ちのお金などに基づいて追加得点を獲得します。最も多くのポイントを獲得したプレイヤーが勝ちます。


一筋縄ではいかない要素1
以上が簡単なゲームの流れですが、各アクションはプレイヤー間のインタラクションを生むように計算されていて、どれも一筋縄では行かなく面白い作りになっています。

例えば手元の美術品を売却するアクションがあるのですが、下の写真のような相場表があり、売却時の金額や得点が変わります。

この状態で青の美術品を売った場合は6金と6点を得られますが、黄色の美術品を売ったとしても2金と2点しか得られません。この相場表は売却前に持っている美術品の数までは縦横に動かすことができるので、多くの美術品を持っているプレイヤーはある程度相場をコントロールできるようになります。
『ブリュッセル1893 -ベル・エポック-』でのメインのお金の獲得方法はブリュッセルボードの資金調達と貴族の支援、そして美術品の売却なので相場を見極めて効率的にアクションをする必要があります。

また、相場表の上に2つの売却スペースがあり、以前に売却された美術品はここに置かれます。そしてここに置かれている美術品と同じ色の美術品は売却できないので、相場が上がった美術品を誰が先に売るかの競争も発生し、プレイヤーを悩ませてくれます。

一筋縄ではいかない要素2
『ブリュッセル1893 -ベル・エポック-』では効率よくアクションを行っているだけでは勝つことが難しいです。それが解決フェイズでの入札ボーナスに関わってきます。
アール・ヌーヴォーボードでアクションする場合、アクションの効率だけを考えれば、ワーカー1個とその下に1金を置くだけでいいのです。
ただし、解決フェイズではアール・ヌーヴォーボードの各縦列ごとに入札のマジョリティを確認し、単独最多ならボーナスカードを得られます。


このボーナスカードは即時の効果を得たり、ゲーム終了時の追加得点の倍率を上げるために使うことができるため、非常に重要な要素となっています。
縦列の最後にワーカーを置く人は入札額が最多になるように置けばボーナスカードを取ることができるので、入札ボーナスをめぐって静かな牽制が繰り広げられます。

このように1つのアクションを行うだけでも、「お金が安すぎると他の人が簡単に入札ボーナスを取られるから多めに置いて牽制したい」や「今はお金に余裕がないからここの入札ボーナスは譲ってでもこのアクションは先にやりたい」などジレンマが要所要所に発生するので濃厚なインタラクションを体験することができます。

ベル・エポック拡張
今回の新版になるにあたって、タイトルにある通り「ベル・エポック」という拡張が同梱されています。この拡張には特別な素材であるガラスや新たな貴族カード、白い美術品などが追加され、特別な建物の展示館が建設できるようになります。これらの追加要素によってパッシブ能力の獲得やゲーム終了時の追加点を増やすことができ、新たな戦略を選ぶことができます。
いろいろと要素が増えますので、1度基本ゲームを行ってから拡張入りで遊ぶことをお勧めします。


個別能力拡張
昨今の重量級ゲームでよく見られるようになったメカニクスの1つ、個別能力の拡張も追加されました。個人ボードを裏返すことで、それぞれ異なる特徴をもった非対称な個人ボードを使用してゲームを行うことができます。
得点効率に関わるトラックの数値や建築コスト、追加点の乗数が変わっているものなどがあり、さらにそれぞれは特定のアクションが強化されます。これによりプレイヤーごとに尖った戦略を取ることができ、個人ボードを変えて何度も遊びたくなることでしょう。
この拡張も1度基本ゲームを遊んでから遊ぶことをお勧めします。

こんな人には合わないかも…
今回は正直、あまり思いつきません。。
それこそ2時間以上かかるゲームが苦手な方や、アール・ヌーヴォーの世界観が苦手な方、ワーカープレイスメントが苦手な方には合わないなど、その程度です。
(このノートをお読みになっている方でしたら何も心配することはありません!是非1度遊んでみてください!)

最後に
単に10年前のゲームのリメイクと侮ることなかれ。
リメイク前の『Bruxelles 1893』に似たメカニクスのゲームはあまりなく、この濃厚なインタラクションを体験できるゲームは少ないです。そのため今遊んでも新しい体験ができ、その面白さは新作ゲームに決して劣ることはありません。むしろ1度市場に出て多くの人々に遊ばれ調整されたからこその完成度の高さがあります。

名作は時が経っても名作です。
そんな名作がリメイクされ、さらに今風のチューニングを加えられた『ブリュッセル1893 -ベル・エポック-』もまた名作です。
安心してお勧めすることができる満足度のゲームに仕上がっていますので、是非1度遊んでみてください!

一般発売は9月22日、税込み9,900円になります。


ゲーム名:ブリュッセル1893 -ベル・エポック-
プレイ人数:2~5人
対象年齢:14歳~
プレイ時間:45~120分

参照したゲーム

『Bruxelles 1893』
https://boardgamegeek.com/boardgame/144592/bruxelles-1893

#ボードゲーム

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