ゲーム紹介:フィレンツェの匠

どんなゲーム?
今回の『フィレンツェの匠』は、中世イタリアを舞台に、こだわりの強い芸術家や学者たちに振り回されながらルネッサンス期の貴族の苦悩を体験し、多くの名声点を取ることが目的のゲームです。2000年に初版が発売された同名名作ゲームのリメイクになります。

作者は Wolfgang Kramer、Richard Ulrich、Jens Christopher Ulrich の3人で、Wolfgang Kramer と Richard Ulrich は名作『エルグランデ』を作ったコンビでもあり、『フィレンツェの匠』も完成度が高く十二分に面白いゲームです。

しかし、Areaの初版発売時(2000年)にはルールが難しすぎたのか、正直セールスとしてはいまいちと言わざるをえなかった残念な過去があります。ただ、その完成度や面白さは後に再評価され、2006年にYstari版、2010年にRio Grande版が出版されるなど何度もリメイクされてきました。

そしてついに、2022年のKorea Boardgames版が出版された際に、「いまのタイミングで日本語版を出さなかったら、未来永劫日本語版がでることはない!」と思い、日本語版出版を決意しました。

そんな決意の名作ゲームの紹介をいたします。

フィレンツェの匠箱画像

ルールは本当に難しいのか?
Areaの初版発売時(2000年)にはルールが難しすぎたのかそこまでセールスとしては振るわなかった残念な過去がある『フィレンツェの匠』ですが、2023年現在においては『フィレンツェの匠』よりもはるかに難しいゲームが多くあり、今の基準で言うと重量級程度のゲームになります。

◆難易度比較(2023/5/8現在)
『フィレンツェの匠』 Weight: 3.24 / 5
『テラフォーミング・マーズ』 Weight: 3.26 / 5
『アーク・ノヴァ』 Weight: 3.72 / 5
『オーディンの祝祭』 Weight: 3.86 / 5

※Board Game Geek(https://boardgamegeek.com/)という世界中のボードゲーム愛好者のためのサイトの中で、各ゲームごとのルールの複雑さなどを表す数値として使用されています。数値が低いほど複雑さは下がる傾向です。

パトロン貴族も楽じゃない
内容物の雰囲気も良く、フレーバー通りのパトロン貴族気分を味わえるゲームです。
建物を建設し、景観を育み、芸術家や学者たちを邸宅に招いて、彼らが偉大な作品を生み出す気になるように便宜を図ります。より印象的な作品を作ってもらうほど、あなたが得ることができるお金と名声点は増えるのです。それで得たお金を用いてさらなる建物や景観を建て、また便宜を図ります。すべてはあなたの名声のため。

プレイの様子

古い半面、新鮮な競り
メインのシステムや魅力についてお話しします。

やることは意外と簡単で、全体での競りの後に、各プレイヤーは任意の追加アクションを行います。これを7ラウンド繰り返すだけです。

この競りで景観などを獲得し個人ボードに配置したり、建築家や道化師などの協力者を獲得し能力を強化できたりします。
最近ではあまり見なくなった競りシステムですが、『フィレンツェの匠』の競りは優しい競りになっています。手番ではハードパスするか、金額を上げるかを行います。金額は100フロリン(ゲーム中の最小金額単位)ずつしか上げることができないため、相場が荒れることなく、渋い競りの駆け引きを楽しむことができます。買いましょう。

ただし注意しなければいけないことが2つあります。
1度競り勝ち何かを獲得すると、そのラウンドではもう競りに参加できなくなります。安いからと言って安易に競りに参加すると欲しくないものを獲得することになったりします。また、各ラウンドでは誰かが獲得した物を再度競りに出すことはできません。そのため、1度逃がすと損失が大きいこともあるため、慎重な判断が必要になります。

いろいろできるアクションフェイズが原因か?
全員が何かしらを1つずつ獲得すると競りは終了し、アクションフェイズに移ります。
ここではそれぞれ2アクションずつ行うことができ、個人ボードに建物を建設したり、芸術家や学者に作品を作ってもらうことができます。
ここでは様々なことができるのですが、それぞれで異なった処理を行い、計算したりする場面もあります。この部分が初版当初にルールが難しすぎると言われた所以かと思われますが、昨今のボードゲームに慣れた方でしたら問題なく遊べ、その深さを体験できるかと思います。買いましょう。

どういうことができるかいくつか紹介します。
まずはこのゲームの主目的でもある、芸術家や学者に作品を生み出してもらうアクション(ルール中では作品の完成)についてです。


ゲーム開始時からお抱えの芸術家や専門家を持っています。
芸術家や専門家の左側には、そのこだわりがいくつも描かれています。このこだわりを叶えるほど創造性が沸きいい作品を生み出してくれるのです。
例えば上の作曲家の場合は、庭に湖と歌劇場があり、言論の特権を持っていて、道化師や仲間がいるとさらに良い作品を生み出すことができる!と言っています🫠🫠
大変ですねー。
この要望を多くかなえることで、あなたは多くのお金と名声を得られるので我慢です。

次は建物の建設についてです。
各庭(個人ボード)には芸術家や学者の要望する建物を建設することもできます。ただし、建設には多くのお金を払ったり、きれいな景観を維持するため建物どうしは隣接してはいけないという制限を守る必要があります。
ゲームを進めると、きれいな庭が出来上がります。買いましょう。

また、建物の建設を補助してくれる建築家も競りで獲得でき、建設コストが半額や無料になったり、建物どうしを隣接しても良くなったりと非常に有能です。

素敵なお庭がほら。

ヴォルフガングと競えるソロルールあり!
ソロ派の皆様に朗報のソロルールもついています。しかも(おそらく作者の)ヴォルフガングと競うという胸アツ展開!!嫌いな人はいないでしょう。買いましょう。

2種類の拡張も追加!
「ミューズと王女拡張」という特別な人物が追加される拡張と、少し不思議なプレイ感の「共同建設拡張」が追加されています。
オススメは「共同建設拡張」です。全員の個人ボードをつなげて隣の人と共同で建物を建てる拡張で、共同建設した建物はお互いに芸術家や学者の要望を満たすのに使えるため、隣の人との協力関係や交渉がアツく、仲の良い人同士でやると盛り上がります。買いましょう。

共同建設拡張の様子

こんな人には合わないかも…
個人ボードが思いのほか狭く、徐々に建物や景観タイルの配置がパズルチックになり、ダウンタイムが増えます。また、アクションの順番なども重要で、その後の点数に大きく影響するため、考え込んでしまうとダウンタイムが増えます。
このようにダウンタイムのケアには弱い部分もあるため、ダウンタイムが気になる方やメンバー次第では適さないことがあります。

最後に
正直、『フィレンツェの匠』はメインシステムに競りを用いている現代のトレンドから見れば、古い、しかしながら名作といったゲームです。。ユニークカードで箱庭作成ヒャッホーーーイ!などの昨今の売れ筋とは違います。
しかしはじめにも書いた通り、「いまのタイミングで日本語版を出版しなかったら未来永劫日本語版がでることはない!」と思い、出版を決めました。簡単に言えば使命感のようなものです。
この思いに共感いただけましたら、ご購入を検討いただけますと幸いです。

今でこそ『オーディンの祝祭』など、いろいろなタイル配置ゲームがありますが、個人ボードにタイル配置していって、その状況によって勝利点が入ったりお金もらえたりという、明確な意味を持たせたシステムでここまで完成されたゲームはおそらく初めてでした。歴史的資料なので買いましょう。

このたび、ゲームマーケット23春にて販売と展示を行っておりますので、気になる方はぜひ会場でブースにお立ち寄りください。
一般発売は5月26日です。

ゲムマ特価5,500円、一般発売税込み6,050円になります。
これまでの版で足されたり外付けされてきた拡張が全て入って、この値段はマジでお得です。5,500円以下はゲムマではタダ同然なので買いましょう。

ゲーム名:フィレンツェの匠
プレイ人数:1~5人
対象年齢:12歳~
プレイ時間:90~150分

参照したゲーム
『エルグランデ』
https://boardgamegeek.com/boardgame/93/el-grande

『テラフォーミング・マーズ』
https://boardgamegeek.com/boardgame/167791/terraforming-mars

『アーク・ノヴァ』
https://boardgamegeek.com/boardgame/342942/ark-nova

『オーディンの祝祭』
https://boardgamegeek.com/boardgame/177736/feast-odin

#ボードゲーム

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