ゲーム紹介:バールバラ

2020年フランス年間ゲーム大賞受賞のカードゲーム『オリフラム』のメーカーStudio Hが2022年に発売した最新カードゲーム、それが今回紹介する『バールバラ』です。

同じ数字カードのデッキを持ち、各ラウンドで1枚ずつカードを同時に公開します。効果解決は、出したカードの数字が少ない人から。
単純ではありますが、思いもよらない展開になる心理戦で、かっこいいイラストと安定した面白さが特徴のゲームです。

作者はOlivier Cipière。『バールバラ』が3作目になる新進気鋭デザイナーです。これまでは簡単な子供向けゲームを作っていてあまり知られておらず、私もこのゲームを機にはじめて認識したデザイナーです。しかし、『バールバラ』をはじめて遊んだ時に、新しさはないが丁寧なディべロップで遊びやすく、読みあいゲームの新定番になりうると感じ、Engamesから日本語版を発売することとなりました。


どんなゲーム?

『バールバラ』では、プレイヤーは一族のリーダーとなり、12人のメンバーを率いて領土の拡大を狙います。ただ、それは他の部族も同様です。より適したタイミングで、より適したメンバーを派遣し、他の部族よりも広大な領土を獲得しましょう。

すべてのプレイヤーが、部族のメンバーを表す 12 枚のカードからなる同一のカードセットを持ちます。毎ターン、すべてのプレイヤーは密かに人物カードを 1 枚選び、全員が選び終わったら一斉に公開します。公開した人物の優先順に従って、プレイヤーは土地カードを獲得します。
人物カードには特殊効果があり、優先順が早いカードには他の人を有利にする効果、優先順が遅いカードには自分を有利にする効果となっています。
また、土地カードには様々な条件の勝利点があり、獲得した土地の組み合わせが重要になります。

9 ラウンド後、最も多くの勝利点を獲得したプレイヤーがゲームに勝利し、大陸の全部族を印の下に団結させます!

どうでしょうか?
よくあるゲームだと思いませんか?

はっきり言います…

新しさはない!
だからこそ、安定した面白さがあります!


プレイ風景
プレイ風景

12種類のカード効果と優先順のジレンマ

『バールバラ』は、すべてのプレイヤーが同一の手札を持っています。そのため、どの人物を出すのかの読み合いが重要です。

12種類の人物カードには、土地カードを選択するための優先順と特殊効果があります。
優先順と特殊効果の組み合わせはよく練られていて、優先順が早いカードには相手のメリットとなる効果、優先順が遅いカードには自分のメリットとなる効果があり、「今、他の人を有利にしてでも早めに土地を取りにいくのか?」などのジレンマがいっぱいです。

例えば、この人物の場合は「他のプレイヤーを1人選ぶ。そのプレイヤーは2点を獲得する。」という効果で、優先順は2です。
優先順が早く、狙った土地カードを獲得しやすいため、相手のメリットとなる効果がついています。「自分へのデメリット」ではなく「相手へのメリット」なのが、最近のゲームらしい遊びやすい調整になっています。


幸運を招く吟遊詩人

この人物の場合は「このラウンドで両隣のプレイヤーよりも遅く手番を行っていたら5点を獲得する。」という効果で、優先順は10です。
つまり、効果を生かすため両隣のプレイヤーが11・12を使うまで温存するか、両隣のプレイヤーが土地の獲得のために優先順の早いカードを出すタイミングを見極めて合わせて出すか、などを考えることになります。


丁寧な工芸家

この人物の場合は「自国の領土にある土地カード1枚と、土地カード山札の底のカードを交換する。山札の底から出てきた土地カードの褒賞から勝利点を獲得する(土地アクションとは別に)。このラウンドで両隣のプレイヤーよりも遅く手番を行っていたら5点を獲得する。」という効果で、優先順は11です。
他の人物カードよりも効果が長く最初は分かりにくいですが、優先順11の通り、トリッキーかつ強力なカードです。単純に考えれば不要な土地カードを別のカードに交換できるチャンスと追加の勝利点を獲得できるカードに見えますが、ゲーマー好みの戦略も存在します。後ほど1つ紹介します。


先導する開拓者

ただし、すべては思うようには行きません。

『バールバラ』では最初からすべての人物カードを使えるわけではなく、最初は5枚の人物カードの手札を持ってゲームを開始し、残りのカードは山札になっています。カードを出す度に山札から1枚補充するので、出したいカードが使いたいタイミングに必ずあるとは限らないのです。
そのため、全員が最善の選択をできるわけではなく、仕方なく出したカードが他のプレイヤーにとって思いもよらない展開になることもあります。


人物カード12枚

イラストもめちゃくちゃかっこいいです✨
またそれに合わせて、人物名にも世界観のカッコよさを保つためのこだわったポイントがあります。
原語版では人物カードの名称は「FALCONER(鷹匠)」などと単純なものでしたが、日本語版では「狙いを定めた鷹匠」というように、人物カードの効果やイラストに合うような修飾を加えています。
ぜひ、世界観に浸って遊んでいただければと思います。

意外と人の狙いが分かる!?
土地カードのバリエーションとゲーマー好みの戦略性


土地カード6種類

土地カードには6種類あり、種類ごとにすべて異なる条件で勝利点を獲得できます。

例えば、この大河は、「このカード自身も含む、あなたの領土にある大河1枚ごとに、このラウンドで出した人物カードの数値分(ただし7以上の数値は6とみなす)の勝利点を獲得する。」という点数条件のため、大河をすでに持っていると非常に強力な、ゲームの肝となる土地カードです。
そのため、大河の取り合いが起きるのですが、早い優先順のカード過ぎると獲得できる勝利点も低くなるため、どのカードを出すか非常に悩ましいことでしょう。

大河

この平地は、「このカードがあなたの領土の2枚目の山であれば10点を獲得します。このカードがあなたの領土の4枚目の山であれば20点を獲得します。」という点数条件のため、山が1枚か3枚持っている人にとっては絶対に取りたいカードになります。反対に1枚も持っていない人にとっては優先度の低いカードになります。

このように、プレイヤーごとに欲しい土地カードが変わってくるため、それぞれの思惑が絡み合うようになります。


またこの山と開拓者を使った、ゲーマーも満足する戦略もありますのでご紹介します。
まず、がんばって山2枚を集め、10点を獲得します💣💣
次の人物カードの選択で、先導する開拓者を選びます。
山1枚と山札の底のカードを交換します。
すると山が1枚になるので、また山を獲得すると10勝利点を得られるという状況になります✨

山と開拓者のシナジー

よくあるシステム、安定した面白さ
このように、『バールバラ』のシステムを1つ1つを見ていくと、どこかで見たようなシステムとなっています。
しかし、『オリフラム』のメーカーStudio Hの手によって、これらのよくあるシステムを遊びやすく丁寧にチューニングされたことで、どんなメンバーで遊んでも安定した楽しさを提供するゲームとなりました。

定番になるゲームとは、このようなゲームをいうのではないでしょうか。
読み合いカードゲームの新定番  となりうるこのゲームをぜひ楽しんでいただければと思います。

こんな人には合わないかも…

最初に書いたように、『バールバラ』にはまったくと言っていいほど、新しさはありません。。。常に新しさを求めるパイオニアゲーマーにとっては、すでに体験したことのあるゲームになってしまうので、刺激が足りないかと思います。
また、人物カードの引きや土地カードのめぐりなどの運要素もあるカジュアルなゲームですので、練習するほど勝てるようになる硬派なゲームを好む方にも、合わない可能性があります。

最後に
日本語版を作るにあたって、版元のメーカーと協議し改善した部分もあります。それが勝利点の色です。元々は写真の下側のように黒く地味な色合いでした。それを日本語版の際に、版元と協議し、色をつけ判別しやすいように改善しました。これは原版でも同じく改善されており、『バールバラ』をより一層遊びやすくご提供できるようになりました。



(BGG写真引用:https://boardgamegeek.com/image/7333737/vaalbara)

発売予定は3月17日です。

Engamesが読み合いカードゲームの新定番となるであろうと期待している『バールバラ』をぜひ遊んでいただければと思います。


ゲーム名:バールバラ
プレイ人数:2~5人
対象年齢:10歳~
プレイ時間:25分

参照したゲーム
『オリフラム』https://boardgamegeek.com/boardgame/287084/oriflamme

#ボードゲーム


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